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力を入れてる部活は、当然夏休みも部活がたくさんある。バレー部はもちろん、吹奏楽部、チア部、バスケ部やテニス部等も平日は毎日のように部活のために学校へ来ている。
そんなある日、1日練習の昼休憩中に吹奏楽部の女の先輩から呼び出しをくらった。高校に入ってからは初めてやったけど、中学の時は何回か女子からの呼び出しもあった。大体「彼氏に色目使わんといて」や「〇〇くんと話さんといて」等ほんまにどうでもいい理不尽なことばかりやったから、もちろん良い思い出なんて一つもない。
目立つことした記憶はないんやけど、きっとバレー部関連の事なんやろうなと察した。今まではほんまに心底どうでもええ男の事で巻き込まれとったけど、バレー部関連となると話は変わってくる。倫太郎くんと関わるなとか言われても無理やし。
「みょうじさん、ちょっと今ええ?」と声をかけられ、小さくため息を吐いて立ち上がると、3人の先輩に人気の無い体育館裏へ連れて行かれた。
「あの、何でしょうか」
「みょうじさんって角名くん好きって噂聞いてんけど、それってほんまなん?」
「…何が言いたいんですか?」
「質問で返すん?まぁええけど。チラッと小耳に挟んだんやけど、ほんまは侑くんが好きなんちゃうん?」
「…え?」
「せやから、侑くんに近付くために角名くんが好きってカモフラしてんちゃうかってこと」
「侑くんって、自分目当てで近づいてくる女嫌いやんか。せやから角名くん目的って言って侑くんに近付いてったんやろ?」
この人たちはほんまに何言ってるんか訳分からんかった。頭沸きすぎやろ、舐め腐っとんか?と心の中で悪態をついた。
「侑くんは気付いてへんやろうけど、そうゆうの迷惑やからやめてくれへん?」
「そんなんに巻き込まれる角名くんも可哀想やしな」
「どうせタイミングみて侑くんに色仕掛けでもするんやろ?顔が良い女はほんま怖いなー」
どこからの情報か知らへんけど、根も葉もない嘘の話を私に話してきて、久しぶりにカチキレそうやった。真実一つもないやんけ。アホくさいにも程がある。
「アホくさ。何を根拠に言うてんねん」
「…は?何この子。あたしら先輩なんやけど」
「先輩達は侑くんの事が好きなんでしょうけど、侑くんはあなた達みたいな人らの事むっちゃ嫌いやと思いますよ。こんな姑息で陰湿な事して、恥ずかしくないんですか?」
「はぁ?なんなん自分。あんたが余計な事してへんかったら、うちらもこんな事してへんからな」
「どこの情報なのか知らへんけど、先輩達が言った事ほんまに全部嘘っぱちですよ。こんな事して、倫太郎くんにも侑くんにも失礼やと思いますけど」
こんなにハキハキと反撃されると思って無かったのか、先輩達は目を泳がせていた。さっきまで強気だった3人が少し窄んでみえる。
「侑くんはほんまに素敵な人やと思います。けど、私の好きな人は倫太郎くんだけなので。先輩達がどう思うかは任せますけど、そこだけは訂正して下さい。この気持ちを誤解されるのほんまに嫌やから」
ハッキリと倫太郎くんが好きと伝えると、先輩達はすごく驚いていた。けど、1人の先輩だけは目付きを変える事なく鋭い視線を向けてきている。
「もう戻ってもいいですか?」
「っ、なんなん!前から思っとったけどバレー部に気に入られてて調子に乗ってるのが気に入らへんねん!侑くんとも親しくて馴れ馴れしいしなんなん!?ほんまに鬱陶しいねん!あんたなんかこの学校にいらんかったんや!」
そう言って肩を強く押された。突然の事でバランスを崩してしまい、後ろの壁に強く背中を打ちつけた。
「痛っ」
「ちょっと…!クミやりすぎやって!」
「少しくらい痛い目に遭わないと分からんのやったらしゃーないやん!」
目の前には怒りに満ちて泣きそうになってる先輩が私を鋭く睨んでいて、あぁそんなに恨まれてたんやなって何故か冷静に考えていた。
「そこまでにした方が良いんじゃないですか?」
「えっ」
「す、角名くん!」
「なまえごめんね、もう少し早く出てこればよかった」
「いや、全然、えっと、いつから…?」
「んー、いつかな?」
「角名くんちゃうねん!これは、」
突然の倫太郎くんの登場に先輩達は必死になって弁明しようとしてる。倫太郎くんは私とだけ目を合わせていたけど、先輩が話しかけた途端に冷たい視線を先輩達に向けた。
「何が違うんですか?別に先輩達と話す事は無いので、なまえ連れていきますね。なまえ、行こ」
倫太郎くんの感情が無いその表情に、私を含めて全員の背中が凍りついた。私の手を優しく握り歩き出し、私と視線を合わせるとまるで別人かのような優しい表情をしていた。
私は、倫太郎くんがいつから聞いてたのかだけが気がかりだった。
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