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夏休みのとある部活の日。ようやく昼休憩に入ったから、冷たい飲み物を買いに自販機に向かおうとすると、知らない女子生徒の後ろを歩くなまえを見かけた。なまえの交友関係はそこまで広いわけではないから、少し嫌な予感がして悪いと思いながらも着いていった。人通りない第二体育館裏に3人の女子生徒に囲まれるなまえがいたので、物陰に隠れて話を聞く事にした。

なまえの口ぶりからするに、きっと3人は先輩だった。話を聞くとなんとまぁ酷い話だ。侑に近付くために俺を利用してると言う先輩達。内容が内容のため、出るに出られなくなってしまった。けど、なまえが何て言うのかが気になってしまい、罪悪感にかられつつ聞き耳を立てていた。

なまえが強気で切り返していて正直驚いた。なまえ言う通り、侑はこうゆう事をする女の人は大嫌いだろう。

「侑くんはほんまに素敵な人やと思います。けど、私の好きな人は倫太郎くんだけなので。先輩達がどう思うかは任せますけど、そこだけは訂正して下さい。この気持ちを誤解されるのほんまに嫌やから」

ハッキリとそう告げたなまえ。なまえの気持ちは1番に俺が聞きたかったのに、まさかこんな形で耳にするとは思わなかった。残念にも思いつつ、ここまで明瞭に言葉にされると嬉しいが勝ってしまう。

その後先輩の1人が溜まっていた鬱憤、もはや言い掛かりをなまえにぶつけて、挙げ句の果てになまえに手を出した様子だった。流石にマズイと思い彼女達の前に姿を出した。

なまえはいつから聞いてたのかをやたらと気にしていた。そりゃ、あんなにハッキリ好きと宣言していた
相手が出てきたら焦るだろう。

先輩達は必死に弁明をしようとしてきたけど聞く気は一切ない。別に侑に告げるつもりも無いけど、話を聞く程優しくもない。早くなまえに話がしたかった。さっきのなまえの気持ちを聞いて、俺の中の感情が溢れ出した。なまえの手に触れると愛しさでいっぱいになった。

そのままなまえの手を引いて、保健室へと向かった。夏休み中は保健の先生はいないため、保健室は誰1人いなかった。

「なまえ、痛いところは?背中打ってなかった?」
「あ、うん。でも今は痛くないから大丈夫」
「とりあえず湿布だけでも貼る?」
「そうしよかな、ありがとう」

湿布がある棚から大判の湿布を取り出して剥離紙を剥がす。

「チ、チア部の子に貼ってもらうから…!大丈夫!」
「いいよ、俺が貼るから」
「背中まで服捲らなアカンから大丈夫…!」
「俺しかいないから」

顔を真っ赤にして恥ずかしがるなまえを差し置いて、なまえの服に手を掛ける。やっばい、これすげぇえろいじゃん。

「せ、せめてカーテンの中でもええ…?」
「ん、わかった」

恥ずかしがる割に、ベッドに誘導するなまえは計算なのか天然なのか。いや、恐らく後者だろう。
カーテンを閉めると大人しく背中の服を捲るなまえに俺はかなり興奮した。うわ、腰細すぎね?

「なぁ倫太郎くん。さっきの話どこから聞いとった?」

なまえがモゾモゾとしながら聞いてきた。おそらくずっと気になっていたんだろう。

「ごめんね、ほぼ最初から聞いてた」

そう言って背中に冷たい湿布を貼った。思ったより冷たかったのか、ヒィッと声を出すなまえに少し笑い、背中の服を元に戻す。

「あれ、どれが嘘でどれが本当なの?」

なまえはまさかそんな質問が来ると思ってなかったのか、なまえは体の向きを俺に向けて視線を合わせた。見つめた瞳は少しだけ潤んでいる。

「倫太郎くんは何が嘘で何が本当だと思ってる?」

なまえからの逆質問は俺と同じくらいずるい質問だった。

「先輩の話が嘘で、なまえの言葉が本当だと思ってるよ」

俺たちは視線を合わせたまま会話を続ける。俺の願望でもあるけど、なまえがそんなこざかしい事をする人とも思っていない。

「ん、正解」

恥ずかしがりながら微笑んでそう言った。結局なまえから言わせたようなものだった。俺から告白したいと思っていたけど、その場の雰囲気に飲まれてしまった。

「俺も、なまえの事が好き」

なまえは驚いてなかった。きっと気付いていたんだろうなと思う。

「誰かのことをこんなに考えたことなんて今までなかったよ」

目の前に座るなまえを優しく大切に抱きしめた。ずっとこうしたかった、なまえに触れたかったという俺の欲望が満たされて、きっと今の俺の顔は酷いもんだろう。

「なまえの事大切にする。だから俺の彼女になってくれない?」

なまえは控えめに俺の体に腕を回した。顔を擦り寄せるかのように胸の中でモゾモゾと動く仕草が堪らなく愛しい。

「倫太郎くんの彼女にして欲しい」

その言葉を聞いて、俺が我慢していた事が崩壊した。ゆっくりと体を離して、俺たちはお互い引き寄せられるかのようにそっと口付けを交わした。








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