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なまえとよりを戻して数日経つ。俺は幸せを感じつつも、夢心地気分が抜けずに気持ちが今だにフワッとしている。
学校ではクラスの連中に速攻でバレた事もあり、学年、いや学校中に復縁が知れ渡った。俺としてはめちゃくちゃラッキーだし助かる。そのお陰もあってなまえも俺も言い寄られる事が減った。今だになまえには「ほんまに角名とより戻したん?」と絡んでくる男はチラホラいるらしいけど、なまえは即答で「うん、私の粘り勝ちやった」と言い放っていたと結城さんから教えてもらった。本当可愛い。
俺らはお互いにペアリングをまだ捨てていなかったから、以前買ったペアリングをまた右手薬指に着けるようになった。2年になってから生徒も先生も緩くなったため、多少のアクセサリーは見逃して貰えるようになり、学校でも部活以外は着けている。
侑の耳にもすぐに入ったようで、「せめて俺となまえちゃん2人でデートしてから復縁してや!なんなん!俺アピール絶好調で良いとこやってんぞ!」とキレられたけど、俺全然知らないし無視した。
そして、俺にあれだけ積極的だった新実さんも、復縁してからは挨拶程度の関係になった。厄介な相手だと思ってたから思ったよりも呆気なくてビックリしつつも、なまえに嫌な思いをさせなくて良かったと安堵した。
そんな日を過ごしつつ、復縁してからあっという間に2週間が経った。別れた期間の穴を埋めるように、俺らは昼休みはもちろん休み時間は常に一緒にいた。部活も終わりが同じくらいだと一緒に帰ったりと、以前のように仲良しカップルに戻っている。
授業を終えていつものように治と部室に向かい準備をしていると、新しいサポーターを教室に忘れてきたのに気が付いた。
「教室にサポーター忘れたわ」
「まだ間に合うんちゃう?北さんには一応言うとくけど、怒られるかは知らんで」
「地味に薄情だな」
面倒くさいと思いつつ早歩きで教室に向かった。みんな部活に行ったり帰宅をして恐らく誰もいないだろうと思いながら教室に近づくと、中から恐らく激しいキスをする音が微かに聞こえてきた。俺のクラスでそんな事されてたら中に入れないじゃん、と苛立ちつつも俺の予想は的中していたようで、1組の教室から淫らな音が響いていた。
前の扉から少しだけ覗き込むとそこには新実さんと知らない男が激しく口付けを交わらせていた。恐らく他のクラスの男なんだろうけど、新実さんあんなに俺にアピールしてたのにもう彼氏いるんだ、と少し軽蔑した気持ちで2人がキスを止めるのを待った。少ししても終わらなければ仕方なく戻ろうと思っていると、激しかったキスは終わったようだった。しかし、2人は距離が近いまま何かを話し始めた。
「これでええやろ?こんなキスしたんやから、うちの言った事やってくれるやんな?」
「角名とみょうじ別れさせろってやつやろ?前の篠宮の作戦は大変やったんやからもう無理やで」
「もう篠宮くんは使えへんからええよ」
「百瀬にまで協力させたやん。あれの説得も大変やったんやからな」
「あそこまで手込めんでもええよ。適当に別れさせてや」
「前もキスだけやったやん。これで別れさせ屋2回目やからヤらせてくれな出来へんなー」
俺は鈍い方でもないから、2人の今の会話でなんとなく察した。別れた根元でもある篠宮となまえの三宮事件はどうやら新実さんが黒幕だったようだ。そして百瀬さんにも手伝わせて俺に写真を渡してきた。大方そんなところだろう。
「…はぁ。分かった。じゃあアンタの舐めるわ。それでええやろ?」
「ほんまに?ほんならここで舐めてや」
ズボンを下ろそうとする男に、もう俺は耐えられなくなり、わざと音を立てて教室に入る。2人ともかなり驚いた表情で俺を見ていた。
「お楽しみのところごめんね。サポーター取りに来ただけだから」
俺が冷めた声でそう言うと、新実さんは焦ったように俺に言葉を掛けてきた。
「あ、あの角名くん、今の話聞いとった?」
「え?俺となまえの事別れさせろって話?それとも篠宮となまえの写真を俺に送ったのが新実さんの仕業ってやつ?」
俺が無表情で新実さんに言うと、彼女は黙り込み目を潤わせた。隣にいる男も居心地が悪そうに突っ立っている。
「何でもいいけどさ、今後なまえに嫌な思いさせたら許さないからね。あともう別れるつもりないし。じゃ」
「ちょ、ちょっと待ってや!うち去年から角名くんの事好きやったんよ!」
教室を出て行こうとする俺に新実さんが服を掴み、少し投げやりな告白をしてきた。俺は無の感情で彼女の顔を見る。
「悪いことしたって分かってる。けどほんまに手に入れたかった。角名くんの視界に入りたかっただけやねん。なぁ、うちじゃあかん?」
上目遣いで可愛いをアピールしているようだけど、俺からすると全然可愛くもないし効きもしない。早く戻りたくて仕方なかった。
「なまえ以外には興味ないから。じゃ」
そう言って俺は教室を後にした。
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