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※モブ子視点です。
私には好きな人がいる。同じクラスの角名くんは、実は2年間同じクラスで、ずっと片想いしている相手だった。そしてこの恋は、これからもずっと片想いのままと分かっている。
稲荷崎高校イチの美女と言われるなまえちゃんと角名くんは校内でも有名なバカップルだ。なまえちゃんは見た目だけではなくて、中身も温かくて素敵な女の子だった。
それでも角名くんを見ると、どうしてもなまえちゃんが羨ましくて妬ましく思ってしまう。角名くんを見てても、明らかになまえちゃんにしか興味がないようだし、角名くんは告白の呼び出しすらもスルーする時もあると聞いた。
わたしも、折角の高校生活をずっと片想いで終わらせたくないと思い、修学旅行で気持ちを伝えて、この恋に終止符を打つことにした。
そう思ってはみたものの、いざ修学旅行となると角名くんはなまえちゃんから離れるタイミングがほとんど無かった。角名くんへの気持ちを知ってる友達にも協力をしてもらい、ホテルの消灯前の自由時間に共有フロアにいると想定して待ち伏せすることにした。すると予測的中して、治くんと角名くんが2人で来た。このタイミングしかないと思い、勇気を出して2人の前に飛び込むと、2人はかなり驚いたリアクションをした。
「あ、あの、角名くん、ちょっといいかな?」
「角名に用あるんなら、俺先自販機行ってるわ」
そう言って治くんは1人で足を進めた。ん、と短く答えた後に角名くんと視線が交わると、私の胸の鼓動を加速させていた。
「えっと、テラスで少し話してもいいかな?」
「俺、今から約束あるからここで聞くよ。何?」
「ここだと…」
さすがにこの廊下で告白は…と思っていても、彼も場所を移動する気が無さそうだったし、人気も少ないので仕方なくここで話す事にした。
「返事は分かってるから、とりあえず私の気持ちを聞いてほしくて…」
「…え?あー、そういう感じ?」
角名くんは察したようで、少し苦笑いしていた。結果は分かりきってるし、一方的だし横暴だけどとりあえず私の気持ちをぶつけて終わらせたかった。
「1年の時からずっと気になってて、興味本位でバレー部の見学に行った時に好きだなって思いました。無気力そうに見えてたけど、試合中の真剣な顔だったり侑くん達と楽しそうに笑ってる顔とか、いろんな角名くんの表情を見るたびに好きが溢れて。なまえちゃんの事が大好きなのも分かってるし、2人の関係を割こうだなんて思ってないけど、でも気持ちを押し殺してるとなかなか次に進めなくて。一方的に感情ぶつけるような事になってごめんなさい。けどこれで角名くんへの気持ちは最後にする」
こんな至近距離で話すのはきっと最後になるのかな、と思うと少しだけ苦しくなった。あぁ、やっぱり角名くんはかっこいいな。
「ずっと好きでした。ありがとう」
「…返事、したほうがいい?」
「ふふっ、一応貰おうかな」
「分かった。俺、好きでたまらない子がいるから。ごめん」
「うん。2人の関係、凄く素敵だと思ってるよ。返事くれてありがとう。それじゃあ」
応えなんてわかってたはずなのに、いざしっかり振られるとどうして涙が出てくるんだろう。なまえちゃんに勝てるわけないって分かってたし、角名くんがOKしてくれるわけないって分かってのに。
今は友達の元に帰りたくなくて、テラスで少しボーッとしていた。すると、恋人繋ぎでテラスを歩く角名くんとなまえちゃんを見かけた。
「今、1番見たくないんだけどな」
なまえちゃんの隣にいる時の角名くんは、いつもより幸せが溢れていて、特別カッコいい顔をしている。あんなに愛しそうな瞳は、なまえちゃんにしか向けない。分かってる。分かってたけど、いざその現実を突き付けられるとやっぱり妬ましく思ってしまう。
「私も愛される恋がしたいな」
誰にも届かない呟きは、真っ暗な空に静かに寂しく消えていった。
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