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楽しかった修学旅行はあっという間に終わっていった。4人で仲良くお揃いのマグカップを買ったり、倫太郎とはお揃いでスマホケースを買ったりと、思い出の品もしっかりと作り、大満足の修学旅行となった。
修学旅行が終わると倫太郎達は春高に向けて部活が忙しくなっていった。
チア部の先輩達は夏の大会後に引退をしていき、その後私はチア部の部長となり、慣れないまとめ役に悪戦苦闘しつつもなんとかやっている。
そんな中、私は今とても悩んでる事がある。
お互いになかなか時間が作れないため、登下校は一緒に過ごせない代わりに 昼休みは2人で過ごすようにしていた。
「倫太郎って、大学どこ行くかとか考えてたりするん?」
「んー、俺はまだあんまり。バレー強い大学行けたらいいなとは思ってるけど」
「そっか」
「なまえ何か進路で悩んでる?」
私の表情で察したのか、倫太郎は心配した目で私の事を見ていた。
「上京の事?」
「…そうやねん。先生にも相談したんやけど、やっぱり東京の大学が1番興味あって。進路決定はまだ先やし、もっといろんな大学も見てみるけど」
「なまえはたくさん考えてすごいね。俺も見習わないと」
「初めて未来の事を真剣に考えてみたら焦っちゃって。倫太郎達に将来の事話したし、自分の気持ち的にもやっぱり生半可な事したくないねん」
私は割と頑固なところがあり、一度決めた事は貫かないと気が済まないタイプだ。倫太郎に軽く伝えると、私の大好きな優しい笑みでそっと頭を撫でてくれた。
「なまえのやりたいように進んでってね。たとえ遠距離になっても俺は別れるつもりないし、その程度で気持ち冷めるつもりもないよ。俺の事を気にしてたりするならそれは大丈夫。安心して」
倫太郎が言ってくれた一言は、きっと私を想って言ってくれている。それは分かってるはずなのに、心のモヤモヤが晴れなかった。
「倫太郎は遠距離で寂しくならへんの?」
私が1番悩んでいた事だった。未来の事を考えるときっと上京した方が自分のためになる。だけど、大学生という大人でもないこの時間に、遠距離恋愛は正直とても自信がなかった。
「こんなに毎日会ってるのが当たり前やったのに、急に1ヶ月2ヶ月と会えへんなんて、私想像できへん。めちゃくちゃ寂しいし不安になるやろうし、その度に喧嘩とかしたらどうしようとか。大学で可愛い女の子とかいたらそっちに」
「それ以上言ったら怒るよ」
つい数秒前の倫太郎の笑顔はいつの間にか消え、射るような視線で私を見ていた。
「俺、不安はないよ。だって俺がなまえを離さなきゃいいんでしょ?だから正直どうって事ない。言ったでしょ?離すつもりないって。ただ、東京の知らない男がなまえの周りをうろついたり関わったりするのは腹立つし嫌ではあるよ。遠距離だったら俺は周りの男にアピールできないし助けられないし」
「それやったら」
「だけど、俺の存在でなまえの道が狭まるのも嫌なんだよね。なまえのせっかくの大切な夢を、俺が邪魔したくない。だから俺のために好きな進路を選んでよ」
倫太郎の表情に優しい笑みが戻って、赤子を諭すように温かく頭を撫でてくれた。
「私、ほんまに倫太郎に依存しすぎやな」
「何言ってんの。俺の方がなまえにズブズブだよ」
「そうなん?」
「えー、だってスマホの待ち受けなまえの時点で相当好きでしょ」
「それほんまに恥ずいねんけど」
来年の今頃にはきっと進路も決まって、それに向かってお互いが進んでいくだろう。お互いに遠い未来まで見据えていると再認識できたのもあって、モヤモヤしていた気持ちも、いつの間にかすっかり晴れていた。
「カメラロールもなまえばっかりだよ。見る?」
「やめとく」
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