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それからぽつぽつと、他愛ない世間話をしながら2缶程開けた。
お友達のセロさん……もとい瀬呂さんとは元々飲みに行く予定だったらしく、何故か会話の流れで俺の話になり、何故か店に来る事になったらしい。その何故か、の所に関しては、酔っているからか他に理由があるからなのか何だか分からないけど、詳細は教えてくれなかった。

「……裂きイカすき?」
「ん?うん、うまいじゃん」

ぼーっと裂きイカをしがんで、ビールを煽る所とか、普段見る事が無いほんのり赤い顔とか、正直、すごく魅力的に映ってしょうがない。
可愛くてカッコイイとかほんとずるい。そんな事を思って少し眉を下げながら3本目のビールを手に取った時、そういえばさぁ、と切り出したのは、さっきまでじっと見つめていた相手だった。

「零音くん全然見た目悪くないのに彼女居ねぇの不思議だよなぁ……?いつから居ねーの?ってか居た事ある?」
「えー……、そりゃあ、恋人くらいあるよ」
「あは、だよね!?」

何となく彼女とは言えなくて恋人、と言い換えたのは後ろめたさだったんだろうか。
恋人なんて此処数年まともに作ってない。最初は好きな人と、ちゃんと好き同士で恋愛して、普通に幸せなお付き合いして……、なんて思っていたけど、ふとした時に諦めた。
別に何があった訳じゃない。けど、俺はたぶん、凄く不器用なんだろうなぁと思う。困ったことに。

「もう随分恋人なんて居ないけどねー。……好きだと思える人に好いてもらえるなんて、それこそ宝くじレベルでしょ」

そんなスれた気持ちが嫌な言葉になって出てしまって、すぐにちょっと後悔した。ノーマルの上鳴さんはきっと、俺なんかよりもずっとその確率は高い筈だから。
だけど上鳴さんは俺の言葉を聞いて噴き出す様に笑って、食べようとしてた裂きイカを落とした。

「たぁからくじって!はは!確かにそうかもしんないなぁ?」
「えぇ……?おれ、ちょっと嫌味っぽかったかなって思って反省し……、そんな笑う……?」

堪えようとしてふくくっ……って変な声出してる上鳴さん、失敗してるよ。かわいいけど。
まだ笑いながら裂きイカを拾って、ごめんごめんって謝ると、でもさ、と言葉を続けた。

「俺だってそういうの、確かに奇跡だよなぁって思うわ。好きだーって思った相手が、自分と同じ気持ちになってるワケでしょ?はは、確かに宝くじでも当たった様な気分になりそーよね」

暫く彼女なんて居ねぇし!?かなしー!って叫んでまた笑う。俺もつられて笑ったけれど、ほんと、こんな悲しい事ってない。
手を伸ばせば届く距離にあるのに、当たる筈もない宝くじをずっと握り締めている。まったく片思いってのは、しんどい。

「上鳴さんは、ヒーローだし、すぐ彼女見つかるんじゃない?……カッコイイし」
「取ってつけたみたいなカッコイイやめてー??つか、まだ駆け出しの俺なんか誰も見向きもしないっつーの。それ言うなら零音くんのがモテるしょ」

どっちがモテる、モテないって不毛なやり取りをした後、二人で笑い合う。
上鳴さんを見てる人、此処に居ますよーなんて。
そう、言える筈もない台詞を心の中で呟きながら、叶わない現実の痛みと、好きな人と一緒に過ごせる嬉しさを噛み締める。

ぎゅっと、相反する気持ちを抱えながら体裁を繕った情けない自分。
おぼろげに覚えているのはこの辺りまでで、いつの間にか窓の外には朝日が昇っていた。






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ピリリリリ。
部屋に鳴り響く着信音に目を覚まして、最初に見えたのはいつもと何ら変わらない天井だった。
常に寝起きは最悪だし、唸りながら寝返りを打つと音は途絶えた。と思えば、また直ぐに鳴り響き始めて、まじ……俺の安眠……。

「かえせ」

通話ボタンを押してすぐに漏れた欲望に、電話の向こうに居る相手は少しうろたえた様だった。ただ、二言三言話してから、俺はこの電話に出たのをめちゃくちゃ後悔した上でソッコー切った。
めんどくさい……大体朝は苦手だって言っただろうにと溜息を吐いて、寝直そうと布団を引っ張る。
けれど、また着信音が響き始めて、でもさっきの番号だったから出ずに切って、着信拒否の設定をして、力無く枕に顔を戻す。ほんと朝からなんなのやめてほしい……。

「どしたぁ零音くん……電話?大丈夫?」
「ん……大丈夫、変なおじさん」
「はぁ?何それ大丈夫じゃなくね?」
「着拒したし……てきとーな番号にかけただけじゃない……」

何故か隣で寝てたらしい上鳴さんが心配してくれた。俺の返事に唸りながら渋々納得してくれた様だったけど、でも、ごめんね、ほんとはおじさんじゃない。
ていうか、何で俺はしっかり布団に入って寝てるんだろう。昨夜の記憶が曖昧で、自分で潜り込んだ覚えが無い。上鳴さんだろうか?だから一緒に寝てるのかな……。

「かみなりさん……今日やすみ……?」
「そー、だから昼まで寝てようぜ」
「ん……」

問えば、そんな甘い誘惑。くしゃくしゃと俺の頭を混ぜて、俺の犬耳もゆるゆると触って、寝起きだからなのか、いつもより幾分柔らかい顔で笑った。優しい触り方が心地いい。
まぁいいか、なんだって。とりあえず今はこの誘惑に乗って寝てしまおう。


さっきの電話、本当は以前切った筈のセフレだった。けど、こんなにしつこいとは思ってなかったなぁなんて、頭の片隅で考えながら、俺は襲い来る眠気に勝てずにそのまま目を閉じた。





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