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「やだわー零音くん、普段澄ました顔してるくせに、こういう時こんな可愛いのー?」
「やめてください沙里さん、ほんとに、まじで勘弁してください……」
「あんまりからかってやるなよ」
「ふっふっふー、とか言ってアンタも顔ニヤけてるじゃないの、同類よ、同類」
もはや俺の気持ちは二人に筒抜けらしいので、居たたまれなくなってババッと控室にダッシュした。が、やっぱりと言うか案の定と言うか捕まった現在、部屋の隅のソファに追い詰められている。
赤くなった顔はどうしようもなくて、両手で覆って俯いているものの、耳まで真っ赤だって言われて溜息しか出ない。
おれ、結構……表情とか隠すの上手かった筈なんだけど、なぁ……。っていうか、今まで上鳴さんの前でもこんな風になった事無いのに、何で。
「ぐぅ、修次さんが助けてくれない……」
「悪いな、お前が本気っぽいの珍しいから俺も興味あんだわ」
諦めろ、なんて言って快活に笑う。
いつもその笑顔に楽しませて貰ってるのに、今日ばっかりは全然楽しくない……。
好きだなーとは思ってたけど、まさかここまでだとは思ってなかった。自分が思っている以上に、もしかしたらこれは重症なのかもしれない。
「……おれだって、こんな、二人の前で隠せないほどだとは思ってなかったですよ」
「むしろアタシ達だから、じゃない?アンタ、アタシ達の前だと結構ゆるんでるわよ?」
「あー、だろうな。俺らお前に世話焼きたがるからなぁ……、無意識に気抜いてんだろ、他の奴らの前ではんな事ねぇし」
そうですか?と手を放して二人を見れば、うんうんと頷く。
そう……なんだろうか。いや、そうだとしても、恥ずかしい事にはなんら変わりない。特に世話になってる二人だから尚更だ。
「二人だからこそ知られたくなかったですけど……」
「どうせいつか知られる事だろーが。つか、それよりお前、ずっと今のままで居れると思ってんのか?」
「う……いや……」
修次さんに核心を突かれて言葉が詰まった。
それは、本当にそうだ。今の生活がずっと続く訳じゃないんだよね……と、ずれた眼鏡を直しながら思う。それに関してはずっと目を背けてたから。
「ちょっと修次いじめんな!……でも零音くん、最近セフ切ったでしょ。それだけ本気なら、後悔だけはしない様にすんのよ」
「…………なんで知ってるんですか沙里さん、こわ」
「心配してんのよこれでも!」
「ふ、はは、ありがとうございます」
ぶにーっと俺の頬を両手で挟んで怒ってくれる沙里さんに、へらっと笑ってお礼を言う。
修次さんはわしわしと俺の頭を撫でてから、何かあったら言えよ、と言って部屋を出ていってしまった。
なんかもう、俺、ほんとに恵まれてるなぁって、胸の奥がじんわり温かくなった。
「おいお前ら何してんだ!着替えもしねぇで、早く準備しろ!」
そんな事をしてたらマネージャーにバレて怒られてしまって、慌てて謝って二人で笑い合う。
俺の恋愛観を知ってる二人に背中を押されたら、なんだか、何でも出来るような気がした。
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「おい」
「ぅお、っと……何ですか?」
フロアの灰皿を回収して裏に戻ったら、マネージャーにシャツの首を引っ張られて足止めされた。なんかこう、もっと安全な引き留め方を出来ないのだろうかこの人は……。
「お前もう今日上がっていいぞ」
その言葉にきょとんとしたら、あほ面してんじゃねぇよって暴言を吐かれた。賢くはないけど、別にあほじゃないと思うんだけども、なんて思いながら時計を見たら、日付が変わるまでまだまだ時間がありそうだった。
「今日少ないですもんねー、じゃあ俺先に上がらせてもらいます、お疲れ様です」
「おー」
ここでごねる理由も無いし、お言葉に甘えて先に上がる事にしよう。更衣室に向かう途中で会った同僚や先輩にはお疲れ様ですって挨拶をして、欠伸を噛み殺しながら私服に着替える。
もしかしたら、上鳴さんが寝る前に会えるかもしれないな。あでも、書類終わってなかったらまだ帰ってないかも……。
そんな事を考えていたら、ロッカーに無造作に置いてたスマホが震え始めた。長いから着信だ、と画面を見てみれば上鳴さんの文字が。
「もしもし?」
「……あ!もしもし?零音くんの携帯で合ってる?」
俺が仕事だって知ってる筈なのにどうしたんだろう、って不思議に思いながら出ると、向こうから聞こえたのは上鳴さんの声ではなかった。
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