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がやがやとうるさい店内に、更に音を増やす様に流行りの音楽が流れている。
入るなりやたら元気な店員にいらっしゃいませー!と出迎えられて、あーやばい色々聞くの忘れてたなとオロオロしていたら、中から名前を呼ぶ声が聞こえた。

「零音くーん、わりーね、来てもらっちゃって。あ、お兄さんごめんこっちの連れなんで!」
「いや、大丈夫です……けど、あの、瀬呂さん、上鳴さんは?」

奥から俺を呼んでくれたのは、瀬呂さんだった。
店員のお兄さんは、瀬呂さんの言葉を聞いて納得したのか、お連れ様でーす!と笑顔で言ってから接客に戻っていった。元気100倍って感じだな……。

「大丈夫大丈夫、あいつがうるっせーだけだよ」
「はぁ……」

話を聞きながら、酔ってるのか、歩き方がふわふわしていらっしゃる彼の後ろをついていく。

ついさっき、上鳴さんのスマホから電話をくれたのは今目の前を歩く瀬呂さんだった。
高校時代のメンバーで飲んでいるという事と、ちょっととりあえず来てくれなどという要領の得ない話をされて、仕方ないから何とか場所を聞き出してこの居酒屋に来たという感じ。なの……だけども。

「上鳴ー!おいこら来てくれたぞ!」
「んぁ、あっれ、なんで零音くん居んのー?」

辿り着いた個室の扉をガラリと開けた瀬呂さんに続いて中を覗けば、友達らしき何人かと、テーブルに突っ伏しながらこっちを見る上鳴さんが居た。
顔赤くして、ふにゃふにゃだ……。これはなんか、最初に会った頃を彷彿とさせるなぁ……って苦笑する。

「てめぇがアホ面の犬か」
「ぇ、」
「おいこらバクゴー、そんな言い方すんなって!わりーな!コイツこんなだけど悪気はねぇから!そんで迎えサンキュー」
「あー、いえ、仕事終わったとこだったんで、丁度良かったです」

へらっと笑って言えば、ほら普通に良い子じゃねぇか!って赤い髪のお兄さんがもう一人のお兄さんに言ってくれた。上鳴さん……俺の事一体なんて言ったんだろうか。犬って。
というか、なるほど俺はお迎えだったのかと此処で納得しつつ、ちらりと上鳴さんを見ると目が合って、どきりとした。

「…ね、上鳴さん、あんまり飲み過ぎないでよー、また道端で寝る気?」

突っ伏してる彼の横にしゃがんで目線を合わせてゆるく笑うと、ふっと上鳴さんの表情が和らいで手が伸びてきた。

「零音くん、耳しまっちゃってんの。無くてもかぁいいけど、俺ある方が好きよ」

さわさわと、俺の頭を撫でる手。
その、撫で方とか、俺を見る目がひどく甘く見えた所為もあって、思わずびっくりして耳が飛び出た。
一気に顔が熱くなるし、今日の修次さんと沙里さんの話が思い出されるしで、余計にだめだ。色々隠せなくてオロオロする俺をどう見ているのか、上鳴さんは微笑んだ。

「顔あか、可愛いんだけど」
「えぁ、ちょ、なん……」

犬耳をくりくりと撫でて、そのままするりと頬に降りてくる上鳴さんの手に、どうすれば良いか分からなくて動けなくなる。
どうしよう、なにこの上鳴さん。いつもと違う……!

「あほか困らすな」
「あで!?」
「ぅわっ」

最初に話し掛けてくれたバクゴー?さん?が、思いっきり上鳴さんの頭を叩いて助けてくれた。
助けてくれた……のだろうか……?上鳴さん、頭めっちゃ痛そうだ……。

「てめぇも呆けてねーでサッサと連れて帰れやボケ」
「あ、はい、すんません……」
「零音くん怖がってんじゃねーか、やめろやめろ」

そこに更に瀬呂さんが助け船を出してくれて、っていうか物理的に助けてくれて視界からバクゴーさんが消えた。
はいはいーって言いながら、そのまま上鳴さんと一緒に個室から出されて、ついでに上鳴さんのカバンも持たされて、ウィンクをひとつ貰う。

「バクゴーに絡まれる前に逃げな」
「ありがとうございます瀬呂さん、あの、」
「いーいー!礼なら今度上鳴から貰うから気にしない!じゃあ気ーつけてな!」

誰が絡むか!って後ろから聞こえてくるけど、あれはスルーで良いんだろうか。
シャーっと良い笑顔で扉を閉められたので、じゃあまぁもうしょうがないかと、家に帰ろうと上鳴さんを見ればふにゃふにゃ笑ってて肩の力が抜けた。
──もう、なんなんだろうな、この人はほんとに……。

「……帰るよ、上鳴さん」
「んー、もう?しょうがねぇなぁー、じゃあ帰るかー」

そう言って俺の手を掴むとそのまま店を出るもんだから、また顔を熱くする羽目になった。
ちょっともう、ほんとに何考えてるんだろう……!





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