4
「あ!そうだそれ!俺、零音くんもっと明るいと思ってたんだけど、今日めっちゃテンション低くね?何で?寝起きだから?」
わっと質問し始めた上鳴さんに面食らってシロップを取り落とした。まだ開けてなくて良かったなぁ。
というか、俺が明るいって?まさか。と思った所で、そう言えば初対面が職場だった事を思い出す。
「あれ、営業用ですよ。すいませんコレが素でして」
「うぇーマジ!?詐欺だわ!」
けたけた、ウケる!って笑いながら言う上鳴さん。うーん、笑ってると釣り目が和らいで可愛いなぁこの人。
コーヒーにシロップを二つ分入れてクルクルかき混ぜる。こないだ井崎さんと一緒に居たって事は、上鳴さんもヒーローなんだろうか?
「上鳴さんも、ヒーローやってるんですか?」
「え?なんで?」
「店、井崎さんと来てたでしょ。あの人確かヒーローだったなぁと思って」
気になったから聞いてみた。もし都合が悪かったら答えないか、はぐらかすかするだろうし。
「あぁ!そうそう、あれうちの上司。んで俺はサイドキックって訳だ。独立はしてねぇけど、一応俺もプロヒーローだぜ」
ニッと笑いながら右手でピースサイン。カッコイイんだかそうじゃないんだか。でも、妙に好感が持てて笑ってしまった。
「ふは、かっこいいなヒーロー」
「だろ!?……ハハ、やっと笑ったじゃん零音くん」
その言葉にきょとんとしてしまった。言われてみれば笑ってなかった、かな?
別に笑わないキャラとかじゃないけど、改めて言われると気恥ずかしさがある。もごもごとバーガーに噛り付きながら、言葉にならない声を出す俺。
「そだ、これも何かの縁だし連絡先交換しようぜ。LINEとかしてる?」
「あ、はい。やってます」
言いながらスマホを取り出して、ホーム画面を開くとLINEの通知が10件くらい来てた。なんだろ、とりあえず今は無視しとこう。
「よし、おっけー!また飯行こうぜ!そんで俺には敬語無しで良いからな!」
交換し終えて眩しく笑う上鳴さんに了解、って言ったら固い!ってダメ出しされた。上鳴さんが緩いだけだと思うんだけど、それは言わないでおこ。
それから彼は仕事があるとかで帰ってしまった。平日のド真ん中だったし、むしろ昼まで俺の家に居て大丈夫だったんだろうか?ヒーローは自由出勤とか?
ちなみに俺は今日はお休み。完全に目は覚めてるし、部屋の掃除でもしよう。
そう思って散らかった服達を片付けていると、スマホが震えてる音が聞こえてきたからキョロキョロと部屋の中を探してまわる。またどこに置いたか忘れた。
「あー、あった」
テーブルの上に置かれてるスマホを手に取り、着信相手を見て溜息が漏れた。
「……もしもし?」
嫌に明るい、聞き慣れた声がスピーカーから聞こえる。
「あー…、えぇ、一昨日もしたじゃん。……まぁいいけど、ホテル代そっち持ちだからね?…うん、うん分かったから、じゃあまた」
ピッ、と通話を切ってもうひとつ溜息。嫌いじゃないんだけど、しつこいんだよなぁ。
俺の性的嗜好はマイノリティだって自覚がある。まともな恋愛なんてきっと出来やしないから、欲求を満たすだけの行為しかしない。
それが良いか悪いかなんて、……分かりきってる事だけど。
ピロン、とまた通知音。
しつこいアイツかと思ったらそれは上鳴さんからで。
いまニュースでやってる敵逮捕のヤツ!俺が捕まえたんだぜ!
可愛い顔文字付きで送られてきた内容に自然と笑みが零れた。んー、若干スレた心が癒される気がする。
にっかり笑うあの人が傍に居る様な錯覚を覚えて、浮き足立つ気持ちを静めるのに苦労した。
前へ|次へ |