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軋むスプリングの音と濡れた音がホテルの薄暗い部屋に響く。あと、自分の情けない声も足されて耳を塞ぎたくなるけど、それも今の行為のスパイスになる気がして何とも言えない。
「んっ、ふぁ、あ」
「あー、零音ちゃんやっぱ良いわ」
しつこい男は嫌われるんだぞ、なんて、快感を与える目の前の男を薄目で見る。顔はまぁ、嫌いじゃないんだけど。
「あ、や、もうむりっ……は、んあぁ!」
「はっ、イキそう?いいよ……俺もッ」
グッと一番奥を突いて、そこからスピードを早められて視界がチカチカする。自分の欲を満たす為だけの動きに翻弄されて頭がぼーっとしてくる。でも、潤む視界の中で男の顔が迫るのだけは見えて、慌てて男の顎を掴んだ。
「あっ、もう!キスだけはしないって、んん、言って……でしょッ」
「強情だなぁ……」
そう言って笑った男が果てるよりも先に俺がイってしまって、ほんと、体力バカは疲れるからやっぱ嫌いだ。
もぞり、いつの間にか寝ていたのか、目を開けたら誰も居なかった。あいつ…先帰りやがったな……。
今何時だろうと思って枕元にあったスマホを見れば、さっきまで此処に居た男からLINEが来ていた。
「仕事あるならヤんなきゃ良いのに……」
先に帰った事への謝罪と、またしようねっていうお誘い。次はもうしたくない、かなぁ。
時刻は朝の7時過ぎで、まだ時間はあるけど、知らない部屋で一人寝続けてるのも癪だから家のベッドで寝直したい。
そう思って、ゆっくりと起き上がって帰り支度を始める。昨夜、ちゃんと後始末はしていってくれたらしい、そこだけは評価してあげよ。
セフレなんて虚しいだけだよなーって、いつだかのセフレが言ってた事がある。まぁそれはその通りなんだけど、だからといって純粋な恋愛が出来るとは思ってないから、しょうがないと思う。
長い前髪はヘアピンでくるくるっと上に留めて、ワックス持って来てないから他はそのままで。
一人で外に出たら、道行くサラリーマンと目が合ってしまったけどすぐに逸らされた。おはよう真っ当な社会人さん。
ピロン、と鳴ったスマホを見てみれば、返事もしてないのにあの男からで。
「ぁー……もうぜったいシない」
カワイイにゃんにゃんわんこちゃん、ってハートの絵文字付きでメッセ送ってきやがったので、即ブロックした。犬とかネコとかそういうあれは俺には禁句、って、言ってなかったかなぁ……。
ヤな気分を抱えたまま家に向かって歩くけど、足取りは重くてダラダラしてしまう。んむー、癒しが欲しい。
ドガァン!
背後から物凄い音がして、瞬間突風が吹いた。慌てて振り返ると、さっき歩いてきた道が瓦礫の山になっていて、唖然として目を見開く。
「な、に…これ……」
突風でずれた眼鏡を押し上げながら呟けば、少し離れたビルを壊しながらこっちに向かってくる大型の敵が見えて、あれか、と納得。するのと同時に、やばい、逃げなきゃと思うものの、足が竦んで全く言う事を聞かない。
ガンガン色んなものにぶつかりながら瓦礫の山を増やす敵。ニュースではよく見てたし、実在するものだって認識はあったけど、いざこうして相対するとこんなにも怖いものなのか。
「ヴォォォ!」
気付けば目前まで迫っていた敵が雄叫びを上げて、強靭な腕を振り上げる。
あー、俺の人生ここまでだったのかなぁ、良い事無かったな、なんて思って自嘲した時、バチバチッと電光が走った。
大きな稲妻に打たれた敵は、感電して意識を失ったのか、ゆっくりと縮みながら後ろに倒れていった。
「は……え…?」
へたりと足から力が抜けてその場に座り込んだ俺に、差し出された手。
「大丈夫か?零音くん」
声に釣られる様に見上げた先で、ニッと笑っているヒーロー。
「かみ、なりさん……」
ずるい……。
癒しが欲しいとは思ったけど、こんな劇的な展開じゃなくて良いのになんて、不覚にも泣きそうになりながらその手を握った。
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