2
▼▲▼
「別の漫画のプロローグ始まってんだろーが」
いちご牛乳で乾杯をし飲み干した美純とちびちび飲み進める銀時は、昔話に花を咲かせていた。
机を挟んで向かい合った椅子だが、片方には誰も座っていない。ファミレスに来た学生カップルよろしく、襖を背にした椅子に二人並んで腰掛けていた。
ちなみに従業員である志村新八と神楽はそれぞれライブと定春の散歩へ赴いており不在である。そうでなければ二人の異常なパーソナルスペースの狭さに二三ツッコミが入っていたことだろう。
「本当だよ。海に出てやんちゃして、足洗って江戸に来た」
「やんちゃねェ」
「銀時くんの話が聞きたいな。今までどんな仕事したのかなーとか、二人との出会いとか」
「そうなァ。基本猫探してるわ。新八は姉貴助けに行って神楽はパンチパーマボコして会った」
「猫…姉貴…パンチパーマ…」
白い喉を見せて仰け反る美純。話しながらずっと白髪を撫でていた手はいつの間にか止まっていた。
隠し事に気付きはした銀時だが、無理に聞き出すのは早々に止めた。この女が何かを隠すのが下手であることを知っていた。昔から、知らず知らずの内に自ら吐露してしまう性質がある。そのせいで師にデコピンを喰らったことも数知れず。
銀時は元から半分程閉じられていた瞼をぴたりと閉じきった。八つ時を過ぎた時分、何年も焦がれた温もりに頭を預けて眠るつもりだった。
旧友と出会ったせいか、昔を懐かしんでしまう。桜の下で二人、時間の止まったような穏やかな世界の中で眠った日を思い出した。
「銀時くん」
「……何?」
「仕事の依頼をしてもいいかな」
「おー」
「ここ住まわせて。お金払う」
「マジでか。うち食費やべーけど」
「私結構お金持ちなんだよ」
わしゃわしゃと両手で髪をかき混ぜる女の顔が、幼少期の女と重なって見えた。童顔なのは相変わらずだと、柔らかな頬に触れようとする。伸ばしたその手に自分の手を重ねた美純が導くように引き寄せて、顔を寄せた。猫。
女ってのは下から顔見られるの嫌がるもんなんじゃねーのと思いつつ、どこから見ても美しい美純を、しばらく見つめていた。
▲▼▲
- 2 -