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可愛かった…!
先程、私の手からお守りを受け取ってくれた少女を思い出し、足が止まる。
夕城美朱ちゃん。朱雀の巫女様。天真爛漫な性格で、周りを元気にする笑顔を振りまく素敵な女の子。少しその笑顔が曇っていたのは、何か悲しいことがあったからかしら。井宿がいたってことは、1度元の国へ戻って、またこちらへ来てしまったということ。…それなら、彼は今、倶東国へ行ってしまったのかな。
「お守り、役に立つと良いなあ」
*
「なまえ、将来、おれとけっこんしてくれ!」
「…鬼宿にはきっと、もっと素敵な人が現れるよ」
「お前以上に好きになるやつなんてあらわれない!おれはお前がいい。これから現れる、かおもしらないだれかより、おまえがいい」
「…100年経ってもその気持ちが変わらないなら、結婚してもいいよ」
「のぞむところだ!」
ばか、100年後なんて、貴方は生きてても、私は生きてないよ。
幼馴染の男の子の笑顔を見つめながらそう思い、自分の中に芽生えた気持ちを無理やり押さえつける。痛む胸は、きっと気のせい。
「いつか、運命の人が現れるから」
「…それは、なまえにも?」
「私?私はどうだろうね」
「おれだろ!」
「あ!鬼宿見て、あの葉っぱ、傷に効くやつだ!だ!」
「え、どこどこ?」
どうにか鬼宿の気をそらし、バレないようにそっと息を吐く。
今、私を好きという気持ちは、幼い頃の幻惑に過ぎない。絶対に、貴方には他に素敵な人が現れるから。だから、幼い初恋は、早く忘れ去ってしまって。彼女と会う前に、出来るだけ早く。
夢中になって薬草を探す鬼宿の背を見つめながら、どうこの村を出るか、ひたすらに考えるのだった。
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