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巫女様たちにお守りを押し付けて数日。



お守り、足りなかったのでは…!?



そんなことを思いつつ、しかしまたアポなんて取れるわけもなく、どうしようもないと諦めながら日々を過ごす。
美朱ちゃん、たくさん危ない目にあうんだから、美朱ちゃんと七星士分の数じゃ足りないよね。
あのお守りじゃせいぜい結界は出せて5回が限度。しかも弾く程度の簡単なもの。カウンターなんて出来れば最高だったんだけど、それには私の技量が足りなかった。
まあ、鬼宿が美朱ちゃんの腕を砕かなければ、翼宿をボロボロにしなければ良い、かな。
蠱毒に侵されている時の記憶がないって言ったって、好きな女の子と仲間を傷つけたって知ったら、絶対気にするし。
そしたらやっぱりお守りの数が足りない!ううん、こうなったら捕まる覚悟で皇帝様にお目通り願うしかない…?



「あ、いらっしゃいませ!」
「…やぁっと見つけたわよ」
「…え?」



カラリと軽い音を立てて開いた扉に、営業スマイルを貼り付けてお客様を出迎える。しかしそこにいたのは、あの日、巫女様と一緒にいた柳宿だった。
きょろ、と辺りを見回してみても、彼はしっかりと私を見つめていて、人違いだと思うには無理がある。
お出迎えの言葉を言った以上無理だとは思うが、気付かなかったフリをして後ろに下がってしまおうか。
その一瞬の迷いをよそに、柳宿は空いている席へとついた。



「ちょっと、この店は客にお冷も出さないわけ?」
「あ、え?っと、ただいま!」
「はやくしてちょうだい」



慌ててお冷とお絞りを柳宿のところへ運び、ご注文が決まりましたらお声がけください、といつものように告げてその場を立ち去ろうとすれば、しっかりと腕を掴まれてしまった。



「…あのぉ、お客様?」
「ちょっとアンタに聞きたいことあるの。今時間いい?」
「いえ、今はちょっと、仕事中でして、」
「…店主ー!ちょっとこの子借りるわよー!」
「お客様!?」
「へぇ、どうぞどうぞ」
「おじさん!?」
「今ちょうど客足も落ち着いたし、そのまま休憩入りな」



要らぬ気遣いを見せてくれたおかげで、柳宿から逃れることはできそうにない。
仕方なく、柳宿の前に腰をおろし、手にしていたお盆を膝の上に置く。どうしたら良いか分からなくて視線を彷徨わせるけど、柳宿は話しだす様子がない。…ええ、これなら普通に休憩して良いかな。今日、ピーク長くてお腹ペコペコなんだよね。



「店長、賄いこっちくださーい」
「はいよ」
「…アンタ、結構図太いわね」
「お腹すきましたし。お客さんいつまでも話そうとしないし。…お腹すきましたし」



信じられないものを見るような目で見られたけど、人間空腹には勝てない。
柳宿もすぐに注文して、頬づえをついてこちらを真っ直ぐに見つめてきた。…うわ、顔が良い。
この前のお守りのことで何か文句あるのかな。出来が悪かったとか?あんな欠陥品渡すんじゃないわよってクレームつけにきたのかな。
ぐるぐる考えるけど、やはり柳宿は話し出す雰囲気がない。じゃあ別に気にしなくても良いか。



「…アンタ、図太すぎない?」
「お客さん、なかなか話し出してくれませんし」



呪符を取り出して呪文と紋様を書いていれば、柳宿から呆れたような声が漏れる。そう思うなら早くしてください。休憩だって有限なんですよ。ここで働く決め手になった賄いが出てきたら、今以上に話なんて聞かなくなりますからね。



「単刀直入に聞くわ。アンタ、体のどこかに文字ある?」



…そう来たか。
あのお守りは確かに一般人が作れるものではないと自負してはいる。けど、七星士を疑われるほどだなんて。
あまり沈黙しても肯定しているようなものだ。ここは怪訝さを顔に出してしまおう。



「入れ墨か何かですか?…それにしても、いきなり身体の事を聞かれるなんて、案外大胆なんですね」
「ちょ、何言って…って、私が女じゃないって知ってるの…?」



墓穴掘った。入れ墨か何かですか?だけで終わっとけば良かった。いや、ここから入れる保険はまだあるはず!



「え、お客さん、もしかして男性なんですか…!?比べるのもおこがましいぐらい綺麗なお顔をしていて…!?」
「あら、結構イイやつじゃない」
「いえいえ、本当の事を言ったまでで
「なんて、そんな言葉じゃ流されないわよ」



別に、女だっていきなり身体のこと聞くのは大胆じゃないですか。柳宿、敏感になりすぎてない?





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