握野英雄に介抱してもらう

※notP夢主
※薄らぼんやりとお隣のシンデレラが出てくる

突然ではあるが、私の好きな人はアイドルだ。みんなに笑顔を届ける素敵な職業。
彼が転職した時にそう言うと、いつもの悪人面からは想像出来ないくらい甘く優しくはにかんだのがもう懐かしく感じる。
思えばその時からもう恋に落ちていたのかもしれない。最初はただの同級生だった筈なのに、いつの間にか恋人にまで発展していた。
そんなことを彼と同じ経歴を持つ先輩に話すと、笑ってビールを煽られた。同じように私もグラスを傾けると、視界も傾いた気がした。

「あっコラ!お酒強くない癖に煽らないの!」
「せんぱいだってあんまりじゃないれすか〜」
「あーもう、べろべろじゃない…」

意識がふわふわしていて不思議な感覚だ。先輩が誰かと話しているのに、相手がわからない。
そのまま視界は暗転し、私は眠りにつく。一瞬、甘いパンケーキの香りがした気がした。



目覚めると、私の大好きな見覚えのある悪人面がいた。

「……あたまいたい」
「おはよう、名前。調子は…良くはなさそうだな。水持ってくる」
「…ん〜……ん?」

まだ眠気が抜けきっていない、頭をフル回転しよう。
確か昨日は先輩と飲んでいて、英雄は飲みの席には仕事で居なかったはず。何故私は英雄と部屋にいるんだ?
眠気と二日酔い特有のズキズキとした頭の痛みが相まって、あまり深く考えられない。

「ほら」
「ん…ありがとう」

水と薬を渡されたので、素直にそれを飲み込む。
サイドテーブルにグラスを置き、彼を覗き見ると少し心配そうな顔をしていた。

「大丈夫か?今日は1日オフだから、一緒にゆっくりしよう」
「…ありがとう、英雄のそーゆーとこすきだよ」

素直な気持ちを伝えると、彼は驚いたように目を見開いた。
いや、実際驚いたのだろう。私がこんなことを言うなんて、まだ酒が抜けきってないのかもしれない。

「…まだ酔ってるのか?」
「…こんなこと言うのはヘン?」
「いや、嬉しいよ」

そういって彼はまた、私の好きなパンケーキのような甘い笑顔を見せてくれる。私はそれに応えるように彼の大きな腕の中で抱き締め返した。