デビトは頼らない

ここは地中海に浮かぶ小さな島、レガーロ島。
街も人も暖かい、とてもいい島だ。
私はこのレガーロを仕切る自警団、アルカナ・ファミリアの……言わば雑用係だ。
パーパとは結構長い付き合いだし、ルカ達3人ともバカやってきたのでそれなりの地位ではあるが、ぶっちゃけ体のいい何でも屋である。
特にデビトとパーチェの馬鹿2人は事あるごとに私に仕事を押し付けてくるので出禁にしている。
しかし、デビトの前では口約束の出禁などあってないようなものだった。

「よォ、ナマエ」
「……能力使わないでよ、出禁にした意味ないじゃん」
「こうでもしねェと入れてくれねェじゃねェか」
「当たり前でしょ、出禁なんだから」
「つれねーナァ」

音もなく私に与えられた部屋に無断で入ってこられるのは一人しかいない。
私はくつくつと笑う侵入者をじとりと睨み、深い溜息をついた。

「今日は何の用?くだらない用事だったらお嬢に言いつけるわよ」
「バンビーナに言いつけるネェ…ちったァ頭が回るようになったなナマエ」
「バカにしてんの?いいから用件言って帰りなさいよ」
「まァ特に用事はねェケド…折角出向いてやったんだ、シエスタでもすっかァ」
「はぁ!?あっちょっ私のソファー!」

そう言ってデビトは来客用のソファーに寝転がり、シエスタを始めた。こうなっては私ではどうにも出来ない。
2度目の深い溜息をつき、奴の薄い腹に毛布を投げる。抗議の声が聞こえた気がするが気にしない。
デビトがようやく眠りについたようだったので、私も隣のソファーに寝転がる。レガーロ1の伊達男の名の通り、寝顔ですら綺麗な顔をしていた。
私はお嬢のリ・アマンティのように心を覗ける訳では無いし、察する事も出来ないけれど、デビトがレルミタに長年苦しめられている事くらいは分かる。
彼は何も言わないから、誰も頼ろうとしない。上っ面だけ貼り付けて、隠者のように心も隠してしまう。
それが無性に腹立たしくて、頼ってもらえない事がとても悔しい。
デビトは誰にも頼らないから、せめて安心して眠れる場所を作ってあげたいのだ。前にうっかり酒の席でパーチェとルカにそう零したら、いい案だと思うと優しく頭を撫でられた。
起きる頃にはきっと、さっき投げた毛布がいつの間にか私にかかっていて、パーチェが喧しくドアを開けて、ルカが慌ててパーチェに注意をするだろう。
簡単に想像出来て、笑みが溢れる。私はデビトの瞼にキスを落として、眠りについた。

「ヴォナノッテ、アモーレミオ」






瞼にキス 愛情/かわいい人 amore mio(アモーレ ミオ) 私の愛しい人