保全の本部オフィスから出て左。
エレベーターで2階まで下りる。
4階までをぶち抜いて作られた……吹き抜けっていうらしい、広い空間。ガラス張りの向こうは中庭が見える。
政府機関がギュウギュウに詰まったこの建物の社員食堂兼カフェエリアだ。
ここに入ってからだいたい2ヶ月経って、ルーティンにも慣れてきた。
「お疲れ様です。食券もらいますね〜」
「お願いします」
刀剣男士の食事は、所属部署のIDを券売機に読み込ませることで買える。
仕組みは知らないけど便利だ。
「オムライス、気に入りました?」
「うん。卵がふわふわで美味しい」
「嬉しいです!がんばって作るので、ちょっとだけお待ちくださいね」
「?」
「どうかされました?」
「なんでもない」
小さな手から渡された、こんのすけの顔型のアラームタグ。
あまりこの顔にいい思い出は無いけど、保全部隊のこんのすけは良い奴だったから、あのクダキツネ以外は正しくマスコットなのか。
観葉植物の近くに、空いた4人席を見つけてタグを置く。肋骨服を脱いで背もたれに掛けていると、少し遠くできょろきょろ見渡す水心子が見えた。
視線を送ると、間もなくこっちと目が合う。
向かってくるのを確認して、先に席に座った。
「高槻、来ていたのか」
「うん。水心子は何事も無かったか?清麿は?」
「変わりない。清麿とはこちらで落ち合う予定なんだが、まだみたいだな」
窓側の席を促すと、水心子はもう一度見渡してから礼を言ってコートの襟元を緩めた。
この水心子はおれが試用期間に入るまでの間、手合わせをしてくれていた刀。清麿もそうだ。
2人は今年度から監査課から警備課へ移動になったらしく、その流れで訓練に協力してくれた。
気の置けない友人みたいな関係を許してくれている。
「あ、
呼びかけられて肩が跳ねた。
「お水どうぞ、水心子様も。お食事はこんのすけが鳴くまでもう少々お待ちください」
「あ、ありがとう」
「すまない、気を使わせてしまったな」
「いえいえ!ごゆっくり!」
ドキドキと脈打つ胸を押さえる。
「まだ慣れないか?」
「全然、何故か嫌な気すらする。水心子達も特命調査が始まる前まではこの呼び名だったんだろう?よく平気だったな」
「うーん……」
「それは君が特殊顕現だからかも、ね」
「清麿!」
「お待たせ。水心子はもう注文した?」
「いや、まだだ」
ミアラタ。
試用期間や特殊任務で名前を公表していない刀剣を呼びかける際、主に政府内で使われる仮名。
審神者への発表が終われば、所属部署以外からも本来の名前で呼ばれるはず。
おれは初日に周知されたのに、おかしくないか。
「監査課特殊任務部隊の髭切さんも、そうだったみたいだよ」
「おれとは違う方法だって聞いた」
「そう。彼の場合は他の通常顕現の髭切さんと区別するために、長い間〈御新〉だったって。高槻はもしかしたら、通常顕現になるまで〈御新〉かもしれないね」
「それはいやだな」
説明を清麿に任せた水心子が注文を済ませて戻ってくるまでに、元監査としての意見を聞く。
確か、
「あの髭切さんは悪い
「
「それは言い過ぎ……とは言えないかもしれないな」
という特大苦言をこぼしてたな。
たぶん何かあったんだと思う。
「あはは、きっと大丈夫。すぐだよ。警備課として見回ってると、高槻を本丸に呼びたいっていう声はよく聞くから」
「せめて呼び方をどうにかしてほしいんだけど……」
「なんの話だ?」
「高槻はいつ本丸所属になるんだろうって話」
「ああ、それか」
言いながら、水心子が盆からオムライスを置いてくれる。
え、持ってきてくれたのか。
「タグは帰り際で良いと言っていた」
「わかった。ありがとう水心子。新々刀の祖に配膳してもらうなんて畏れ多い」
「い、いや、タイミングが良かっただけだ、気にしないでくれ」
おやつ程度の休憩だった2人は、すぐ提供されるサンドイッチやミートパイを注文したらしい。
それも美味しそうだ。
「そうそう、高槻と一緒に休憩してる刀剣なんてそんなにいないから、役得ってやつだよね」
「そうだな」
「役得?」
「いただきます。まあ、気にしないで」
「その点は気にしないで、その、良いんだが……あまり人の目が多い場所で、上着は脱がない方が良いと思う……」
目をそらしながら言われた言葉。
上着?
「食事中に上着着てるのは窮屈じゃないか?深澤さん、……ええと、職員の人に脱いでいいって言われたから脱いでる」
「そのフカザワさんはさ、高槻の服の下がそんなに
「そうか?おれの資料持ってた気がするんだけどな」
「初期の基本情報だったら知らない可能性が……」
「審神者向けの図録じゃないからね」
図録……1階ロビーの売店で売ってたやつか。
意識すると確かに感じる強い視線。
振り向いたすぐ後ろに人影があるのに驚いて、咄嗟に見上げた。と、コンッとテーブルにコップが置かれて、隣の席に座った流れで肩を組む。
「和泉守」
「よお、隣良いか?」
「おれは構わない。休憩?」
和泉守から向けられた視線に2振が「良いよ」と答えるのを聞きながら、オムライスを口に運んだ。
「前番が終わったとこだぜ。もう上がりだ!」
「お疲れ」
「そのスーツは警備課?」
「おう、お前等は?」
「僕らも警備課だよ。ただ、外勤に異動したばかりでスーツもまだ支給されてない」
「そんな着崩し方、許可が出るんだな」
「内勤は緩い方じゃねぇか?」
警備課は制服として黒スーツが支給されている。
ポニーテール姿の和泉守はそこに、赤いシャツと黒いネクタイ、いつもの羽織を足しているんだが、どうやら着崩してる方らしい。
「和泉守、肩離してくれ。食べにくい」
「お、悪い悪い、じゃあこれ預かっといてくれ」
「いや、汚しそうで怖、おい」
「注文してくる間、な」
おれの肩にダンダラ羽織を掛けてから、ひらひらと手を振ってカウンターへ向かってしまう。
なんてヘビーなものを預けてくんだ。
「やはり和泉守も露出しすぎだと思ったのか」
「……兼定もそんなに変わらないだろ」
「兼定のはインナーじゃなかった?」
「彼らは着物を着込んでいるしな」
「えっ!?」
「……え?」
突然の驚いた声に再度振り向けば、包丁藤四郎がこんのすけタグを握りしめて立っていた。
「包丁藤四郎?どうしたんだ」
「い、和泉守が羽織貸してるのなんて、初めて見たぞ。仲いいの?」
「たぶん?でも、あの和泉守は、警備課歴が長いからな。新人に目を掛けてくれてるんだと思う」
「そっかあ。でも、よし!希望があるぞ!ありがとう!」
「え、な、何がだ?」
興奮したような輝いた顔で、小さくぴょんと跳びはねた包丁は何故か嬉しそう。
彼の基本情報を元に推測するなら、そんな反応すると言うことは人妻関係だろうか?
こちらに近付いて笑顔で声を潜めるので、おれも身を屈める。
「主が補佐を担当してる審神者さんが、自分の本丸の和泉守に懸想してるらしくて……。主はアドバイスのために色んな和泉守の行動と思考傾向を見てるんだ。参考になったぞ」
「そうか?」
「うん!刀剣との恋愛や結婚にはたくさん規定があるけど、担当審神者さんには幸せになって欲しいと思うから、主と頑張るんだ」
「素敵な人妻のために?」
「そう!最高な人妻のために!!」
高らかに言い放った包丁。
驚いて振り向いた食堂内の人達は、「なんだやっぱり包丁か」くらいの顔だった。
元気に席を探しに行く包丁と入れ替わりで、A定食を手に戻って来た和泉守は苦笑い。
「政府内の俺達の中じゃ有名な包丁だから、ってのもあるけどよ……。該当本丸の俺が、主の気持ちに気付いてないと思うかあ?」
「……気付いてるだろうな」
「だろ?十中八九、補佐官と包丁が動いてるのも勘付いてるが止めもしてねぇらしい。あの調子なら変な事にはならねえだろうが、外堀埋めるならもっと上手くやれってんだ」
わざとらしく溜息をついた和泉守。
時間の問題ってやつか。
外堀埋めが多少雑でも、和泉守兼定だ。なんだかんだしっかりするだろう。
躑躅のところの歌仙と孫六に土産話が出来るから、是非とも結果は知りたいな。いや、結果はもう分かっているから、経緯を。
「和泉守、羽織」
「おう。……なあ、食ってる時に窮屈なのは分かるけどよぉ、背中ガラ空きなのどうにかなんねえ?せめて肩に掛けとけって」
「お前も戦装束はこんなの着てなかったか?」
「俺のインナーと
「そうは言っても、」
「兄さん?!」
「兄?!」
さっきの包丁の時の比ではない視線とざわつき。
水心子は噎せていて、清麿は目を丸くしている。
「なに……?水心子は大丈夫か?」
「だ、だいじょう、ぶ」
水を渡して隣の和泉守を見ると、こちらも生姜焼きを噛みながらキョトンとしていた。
「兄さんのこと、外で呼んだの初めてだったか?」
「たぶん?でも、こんなに驚くことか?」
「お、驚くだろう?!その、美濃伝最初期の兼氏から11代兼定の流れを考えたら納得はできるんだが!」
「遠〜い親戚のお兄さん、て気分かな?」
「分かってんじゃねーか!ま、俺は之定も先輩もそうとは呼んでねえからな、意外なんだろ」
「おれは悪い気はしないし、好きに呼べばいいと思う」
「おー!そうするぜ!」
にしし、とでも言いそうな良い笑顔の和泉守。
これが末っ子力とでも言うのかな。
刀はヒトを誑すし、気をつけなきゃ頭でも撫でてしまいそうだった。
食事後、3振と別れてオフィスに戻る。
とは言っても実は和泉守と同じく、おれも午前中で退勤だ。良い機会だから、深澤さんに共有タブレットと椅子を借りてSNSを漁る。
隣には、カプチーノをのんびり飲んでいる三日月。
「……高槻様がインターネットしてるの、違和感ありますね」
「そうか?」
一般ユーザーに擬態した保全部隊のアカウントは、「万屋ナビこん@出張中!」という名前。
主に万屋や政府内、演練会場ロビーの情報を発信していると、逆に情報が集まってくるらしい。
フォロワーから「この新商品知ってます?!私の方が見つけたの先かも!」や「戌通りでいざこざあったぽいよ、ナビこんさんも気をつけて」というダイレクトメッセージは大切な情報源。
「高槻は探し物か?」
「うん……。三日月、深澤さん、手に血が付いているのは、人間だと、なんて言うんだ?」
「へ?!事件?!ですか?!」
「なんと……いつ見た?」
「昼。食堂の人の、手の甲に。タグをもらう時に少しだけ触れたんだ、カサカサして脂が無い手だった」
「ああ!なるほど!ワ〜、びっくりしたぁ……」
高速タイピングを止めた深澤さんが教えてくれたのは、アカギレと言う症状。
三日月は一瞬キリッとした顔してたのに、もう何故かほにゃほにゃした顔でおれにチョコを渡してくる。
「食堂のスタッフさんって、業務中は青い手袋をしますけど、上がる直前だったんでしょうね。たまたま見てしまった、と」
「時短勤務の職員が多いと聞く。家事で荒れたのだろうな」
「三日月様はソレなんで知ってるんです?」
「人事部の部長が、何かの折に言っていたなぁ」
「なるほど、御局かあ!」
会話を聞きながら、アカギレを検索すると一緒にハンドクリームのオススメが出てきた。よし。
「深澤さんありがとう、お疲れ様です。三日月、この後気をつけて」
「うむ、高槻も攫われたりせぬようにな」
「攫われたり……おれが?」
「心配が物騒だなあ……。あ、三日月様、申請通りましたんで、経理によろしく言っていただいてもいいですか?」
「あいわかった」
「妬けるなあ、小間物屋で会うとは。贈り物かい?」
「大般若長光」
言葉端であの時の大般若長光だと分かる。
万屋未通りの雑貨屋。
「あんたこそ。まさか一振か?」
「主人と乱と来ているさ。それで、高槻は一体何を探しに?」
「ハンドクリームを。使いやすいやつが良い」
ディスプレイ棚の間を歩く。
まるでおれが軽装の大般若長光を伴っているように見えては困るな、と思っていると、審神者と目が合った。
「あれっ?そのカチューシャ、ということは高槻さん?!え、にゃーさん声掛けたの?!」
「別嬪さんが一振だったものでね」
「待って主さん、大般若さん、知ってる刀?」
審神者との間に立ちはだかって警戒している乱藤四郎。これが刀としては当たり前の反応のはずだ。
「初めまして、春海本丸の乱藤四郎。おれは高槻。保全部隊所属だ」
「保全部隊?じゃあ、政府刀剣なんだね」
「そうだよ乱くん、こないだにゃーさんが攫われかけた時に助けてくれた部隊の刀!」
「そ、そうなの?!わあ、ボク失礼だった?!」
「気にしなくて大丈夫、あれから何も無い?」
「無いです。本当にありがとうございました!」
良かった良かった。
乱藤四郎も構えを解いたし、良い機会だし、気兼ねなく聞きたいことを聞いてしまおう。インターネットのオススメだけだと心許ないから、本当は店員に聞こうとしていたことだけど。
「審神者さん、聞きたい事がある」
「はい」
「ハンドクリームを探してるんだ。人間の女性には何が良いかな」
ざわり、と店内の空気が浮足立ったのが分かる。
その反面、隣の大般若長光からは嫌な視線が飛んできて居心地が悪い。
手を取られて、甲を眺めるために指を間に差し込まれた。
「へーぇ、刀剣は手荒れ等とは無縁だが、まさか御婦人にプレゼントとはなあ……」
「握るな。離せ」
「嫌だね」
目の前の審神者さんが赤い顔でアワアワしてるのが見えないのか、この刀は。
「あのあの、えと、ど、どのような方にですかっ?!」
「政府に社員食堂があるんだが、その職員の手がアカギレ?をしていて。職務が原因じゃないらしいけど、労りたい。人間は食事が大切だから作り手に感謝しないと」
「人のため、ですか?高槻さんのお給料なのに」
「おれの給料なんて使い道が無い。人間の、血が出て痛いのが治るなら、良い使い道じゃないか?」
途端、ごす、と肩に何か当たって来たので見れば、大般若長光の頭だった。耳元がピンク色。
「本当にこの子は思わせぶりだなぁ」
「あんたが勘違いしたんだろ」
手はまだ緩く握られていて、緩いのに何故か少し振っても解けない。
「じゃあ、保湿力が高くてあまり香りがしない方がいいよね?主さん」
「う、うん!匂いがあると、好みとかで左右されちゃうもんね」
にこにこした乱藤四郎が、もう片方の手を取ってゆっくり引いてくれる。ハンドクリームコーナーについて、改めて手を解こうとしたらようやく解けた。
「ボクが知ってるのはこれ!」
「それ、人気ですよ!パケかわいい上に匂いは抑えめのオレンジで、プレゼントしやすいかも」
「なるほど」
袖を少し捲ってオススメ品を試しに塗り込みながら見れば、視線を逸らされる。
「……意外」
「何がだい?」
「他部署の大般若にも会うけど、そんなに態度に出る性格だとは知らなかった」
「おや、心外だなぁ……。"
口元を少し隠しながら微笑んだ大般若長光は、少し外すよ、と言って店内を移動していく。
「にゃ、にゃーさんほんとに本気なんだあ……!知ってたけど、長船パワーを浴びるとびっくりしちゃうね、乱くん」
「もう、主さん、うちの大般若さんって、欲しいものに対してはあんな感じだよ?ストレートっていうより、自分は貴方が欲しいと思ってます、って主張する感じ。他の本丸の大般若さんは知らない、け、ど……わぁ」
「ひぇ……高槻さんかわい……」
顔が熱い。
多分おれの赤い顔を見た2人の、息を飲んだ音が聞こえた。
べつに、ほだされたとかそういう事じゃない。
ただ、あまり人間付き合いとか、好意も悪意含めて経験が無いから、驚いたんだと思う。
そう、驚いただけ。
だって、相手は国宝だから。
「高槻さん、ハンドクリーム、選ぼ?」
「あ、あぁ、」
乱藤四郎と審神者さんにアドバイスをもらって、ミントのようなスッキリした香りの、チューブに入ったものを選んだ。
あまり仰々しいと恐縮してしまうから、雑貨屋の平らな紙袋にシールだけで良いだろうとも言われて、そのように梱包してもらう。
「にゃーさん、帰ろう!」
「ああ」
目が合って咄嗟に逸らしてしまった。
ちょっと、だって、少し気不味い。
「高槻、次いつ会えるか分からないんだ、顔は逸らさないでくれないか」
「……物好きだな」
「あんたの価値が分からない奴が多いのは頂けないが、そのおかげで敵が少ないなら、いくらでも。それ以上に俺が愛でるさ」
驚きを越して、恐ろしくなってきた。
この大般若長光は、ほんの少し助けただけ、会話も少し。ついさっき再会した程度。
どうしてこんなに好意に傾いているんだろうか。
「にゃーさん、応援してるからね」
「そうかい?ありがとう」
どう反応したら良いか分からない。
大般若長光が寂しそうなのは、気配から分かるが、だからって何か言うのは違う気がして。
「ほら、持って行きな」
「なんだ?」
「ヘアミルクさ。綺麗なものがもっと綺麗になるのは嬉しいからな。それが俺からのプレゼントなら尚更」
「……ありがとう。その、……本丸まで気をつけて」
「ああ」
審神者さんと乱藤四郎が手を振って歩き出したから、振り返してから踵を返す。
渡された白い紙袋はプレゼント用にピンクのリボンまで掛けられていて大袈裟だ。恐縮してしまう、ってこういうことか。
職員寮までの合法ショートカット、保全部隊の詰所に行くと小狐丸が資料をまとめてた。
「おや高槻の、休みか」
「うん、買い物しに出掛けた帰りだ。ちょっと聞いて良いか?」
「何じゃ?」
椅子を引きずって向かいに座ると、掛けていた眼鏡を外して対応してくれる。
「ヘアミルクをもらったんだが、どう使ったら良いのか知らない」
「ふむ。裏面などに使い方が書いてあるものよ。おぬしは髪が多くないからな、付けすぎないように気をつければよい」
なるほど?
紙袋から箱を取り出す。
思わず固まった。
「……桃色のリボンなのはそういう事か?なんじゃ、本刃に聞けば喜んで手ずから教えるじゃろうに」
「その、いや、中身はヘアミルクとしか聞いてない、から、」
言い訳すら出来無い。
大般若長光が描かれた、赤とピンクの箱。
「あやつ、上手いものよ」
妙に感心した声を聞きながら、引っ込んだはずの顔の熱さがぶり返してきた。
ぽん、と小狐丸の手が頭を撫でてくるのに更に居た堪れなくなって、奥から出てきた三日月に声をかけられるまで、自分の感情と戦うので精一杯だった。
continue.