映画研究部、爆誕
「ぼんやりした内容だけどどんな活動するの?ただ見るだけってわけじゃないよね?」
「毎月鑑賞した映画をポスターにまとめ掲示します」
「ふーん。映画をパソコン教室で見るの?」
「はい。先生が使うパソコンはプロジェクターと連動してるので、それを使えばいけるかと」
「まあそうだけど。部の発足には三人以上の生徒と顧問が一人必要だから。それができるならいいよ」
「わかりました」
いざ『映画研究部』創設に向けて三人は動き出した。家入は入学当初に配布されたそれなりに分厚いパンフレットを持参し、教員名簿のページを確認。五条がゴミ箱から回収した部活のパンフレットと照らし合わせ、顧問を務めている者に線を引いていく。
顧問に誰を選ぶか、どこを部室とするか、重畳する話し合いの末、彼らはプランを練り上げた。
そうして教師陣への報告や
「そこで高橋先生に顧問をお願いしたいんですが」
「お、おー……」
一方で、「え、マジ?」と放心しながら夏油を見上げるのは、新任として籍を置く高橋先生だ。授業で使用するプリントを作成していた彼は、あに図らん夏油の提案に物憂げな表情を見せた。
部活の顧問なんて所詮はサビ残、特別手当が出るわけでもない。しかもこの四月から教師デビューした高橋は、受け持った授業とクラスのことで手一杯な状況。とても部活の面倒まで見る余裕は彼になく、ただただ時間を奪われるだけの厄介ごとであった。
そんな考えを見透かしたように夏油は怒涛のセールストークを展開させる。
「週に二日、それも映画を見るだけです。私達が視聴している間、仕事に取り掛るも良し、気分転換がてら一緒に見るも良し」
「はあ……」
「そういえば、新任の教師は二年目から部活の顧問を頼まれやすいそうですよ。異動した前任の穴埋めとして高橋先生も来年以降指名されるかもしれません。映研のような緩い活動ならまだしも、運動部の顧問にでもなってしまっては、これからさぞ大変になるでしょうね」
「うっ」
「新任の教師も最初は顧問に指名されることはありませんが、新たに作られる部活の顧問を自ら勤めるのは可能なんだとか」
「わかったわかった! 顧問を引き受けるよ」
「いやあ、そう言って頂けると助かります」
夏油の指摘は、全くもってその通りだ。運動部の顧問になんてなってみろ、時間の拘束はさらに激しくなるぞ。休日出勤は当たり前、大会に伴う交通費や食費なんかも全て自腹を切るハメになる。
今のところ顧問の兼任はないので先にこの映研にさえ属しておけば、懸念材料を一つ減らせるというもの。
一年目なのに部の顧問も引き受ける、その前向きな姿勢を見せながら自然と顧問問題からフェードアウトできるのだ。
「映画の調達はどうするんだ?」
「それはレンタルショップで借りて、順番に持って来る形をとります」
「……校内で無くすんじゃないぞ」
「はい」
わざわざ有料で借りるのか、なんて思うもよくよく考えれば部活動に掛かる家庭の出費にしては安い方である。週二日と頻度も程よい、しかも映画鑑賞中に仕事の手を進めることも可能ときた。夏油の提案は案外悪くない。
こうして高橋先生を顧問に据え置き、映画研究部は黎明を告げた。