▼リンドール城潜入
目黒side
佐久間「...って事で、今から狙うのはリンドールの隠し財宝"ピアスの涙"!!」
向井「"アピスの涙"やで、さっくん」
――リンドール王国 下町サンタモスカ
城が見えるこの店は、俺たちのアジトでもあった。
"ハイウインド"。昔空賊になりたかった俺らの団長、佐久間くんが立ち上げたリンドール出の盗賊団。構成員は意外と50人近くいて、今はそれぞれ獲物を狙って散っている。
そんな中、いつもスリルと財宝を求めて自らが動くタイプの佐久間くんがいきなり"城に潜入しよう!"なんてまた突拍子のない提案をしてきて。
いつもだったらもっと歴の長いイケオジとか、黒縁メガネのやたら声のいい相棒を連れて行くのに、たまたま今動けるのが俺らだけだったからついて行くことになった。
佐久間「あーそうそう。アピスだ、"アピスの涙"」
向井「しっかりしてやぁ団長」
佐久間「んは、めんごー」
向井「軽いわぁ。だいたい、なんで俺らやねん。細々と盗賊やってた俺らが団長とリンドール城に潜入なんてヤマがデカすぎるねん。なぁめめ?」
相棒の康二は肩を落として俺を見る。
目黒「まあね。でも俺は楽しみではある」
リンドール城は、俺らみたいな国の最下層の人間には程遠い場所で。
それでも無意識に城を見上げてしまうのは、今は亡きこの城の王女のせいだ。
向井「そういやめめは、リンドールの第一王女とよく会ってたよなぁ?」
佐久間「へえ。そーなの?蓮」
忘れもしない。
俺がまだ盗賊になる前、ただのパン屋の息子だった時。
"こちらに、シャウネロールというパンはありますか?"
手伝いをしていた俺の耳に、透き通るような綺麗な声が響いて。
"妹が好きなのです。ありましたら頂けませんか?"
初めはその人があの城の姫だなんて全く分からなかったけれど、何度も店に足を運んでくれるうちにたわいもない話ができるまでになって。
だから、亡くなったと聞いて、心にぽっかり穴が空いたようだった。
目黒「うん。友達だったんだ」
佐久間「マジぃ?すげー友達持ってんね」
目黒「でも、今はいない」
向井「せやなぁ...」
この国を治める王がダムルブルク帝国に降伏したと聞いて、ああリンドールはもうおしまいだと肩を落としたのを覚えている。
帰る気になれなくて、あてもなく歩いていたら見つけた小さな酒場がここで、佐久間くんに声をかけられたことも。
あれからもう5年は経つ。
目黒「...行こう、城に」
佐久間「っしゃぁ!"ピアノの涙"ぁ!待ってろ!!」
向井「"アピスの涙"!!!全くちゃうわぁぁ!!!」
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