▼三千年戦争の真実
時を同じくして、リンドール王国とダムルブルク帝国の国境付近に位置するリンドール領、学都エルドリア。
丸い月が輝く大講堂には、2つの影があった。
阿部「...」
リンドール王国 下町サンタモスカ出身の学者、阿部亮平。
高く積まれた本に囲まれ、愛用の丸メガネをくいっと上げて集中し直す。頭を悩ませる文献だらけだが、あと少しで全貌が見えるところまで来たのだ。
苗字「...阿部さん、どう?」
そしてもう1人。
彼女こそがリンドール王国第二王女、苗字名前。行方をくらましていた姫張本人である。
国が崩壊、降伏してから姿を消していたが、祖国を離れ、報復の手立てを探し機会を伺っているのだ。
苗字「そのあたりで一度休憩にしてください。何日も眠っていないのでは...」
阿部「故郷をやられて、俺だって許せない。それに、旧友の頼みでもあるし」
苗字「...協力、感謝します」
リンドールの姫と下町で有名な学者は、国が降伏してからダムルブルクの裏切りの真相について調べていた。ひと月以上この都に滞在しているからか、少しずつ真実に近づいている。しかし、真実がわかったからと言って起こった事実は変えることはできない。
それでも、と、毎日書物をめくり、重ねていく。
阿部「分かってきたよ。ダムルは軍事国家として確固たる地位を築いてきた。よく考えたらそれはおかしいんだよ」
苗字「おかしい?」
阿部「隣国は軍事なんて拘っていない。攻められる筈がないんだ。なのに国王は水面下で着々と兵と武器を集め、こうして侵略した。どうして武力に拘った?何百年も前から粛々と機会を伺ってきたに違いない」
あの慈悲深い国王が、そんな。
名前はどうしても納得ができなかった。
確かに、名前の幼い頃は三国で手を取り合いやってきたのだ。
なのに、どうして。
阿部「...それから、興味深い資料を見つけた」
苗字「え?」
阿部「これがもし真実なのだとしたら、ダムルには...俺たちの知っている表だった"正史"と、全く知らない"裏史"があるのかもしれない」
そう言って手にした書物の表紙を見て、名前は小さく声を上げた。
"祝福を受けし民の血統と聖儀"と書かれた薄汚れた書物。
初めて聞く言葉だらけであるが、あらかた想像がついた。
ダムルブルクがどうしてレイスとリンドールどちらも侵攻したのか。そのヒントは、国を率いる皇族に隠されていたのだ。
名前「まさか、...それでは、」
阿部「分かったみたいだね。ダムルは、レイス王女と...貴方の血を、絶やそうとしている」
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