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苗字 side
時は5年遡る。
その日はしばらくぶりの雲ひとつない快晴で、外に出たくてうずうずしていた私は母の静止を振り払って下町に来ていた。
苗字「今日の稽古は騎士長なんだもん。あの人痛いし厳しいし嫌いだし...晴れてるのが悪いよね、うん!」
リンドールの国は隣国ほど栄えておらずとも、人情溢れた大好きな国だった。
お忍びで来ていると知った布屋の叔母さまは下町らしい服をくれるし、城の味の薄い御馳走に飽き飽きしていたら輝く骨付き肉をまけてくれたり。
一度、もっと幼いときに輸出の貨物台に忍び込んだ時には止められたけれど、私のやりたいことに付き合ってくれる人がほとんどで。
「王女だって人だもんね。人間は経験だよ。経験と、それから勇気だ」
貨物台のおじいちゃんはそう言って頭を撫でてくれたっけ。
第一王女であるおねえちゃんは、私とは真逆のキッチリ人間だった。
毎日の稽古や修学を怠らず、とにかく真面目。それでいて心優しく、柔らかい人だった。
私なんかが敵うところなんてどこにもない、誰からも信頼され、愛される...そんなおねえちゃん。
私はおねえちゃんが大好きで、大切だったんだ。
私が下町から帰ってくると、その日は珍しくおねえちゃんが裏口で出迎えてくれた。
いつもは口うるさくてウザい側近が仁王立ちで待っているのに、珍しくその姿もない。
「名前?お願いがあるのだけれど」
苗字「お願い?おねえちゃんが?」
「私の忘れ物をとってきてもらえない?サンタモスカまで」
名前「忘れ物...?まあ、いいけど」
「今から、お願いね。大切なものだから、必ず」
サンタモスカって、今行ってきたばかりなんだけど。
おねえちゃんが忘れ物をする事すら珍しいのに、私に取りにいけだなんて。
そんなに大切なら自分で行けばいいのではという疑問を飲み込んで、私は再び城を後にした。
おねえちゃんが忘れた"大切なもの"というのは、城からは少し離れた下町の端、配達屋にあるらしかった。
珍しいところに行くんだなぁなんて考えながら配達屋のお兄さんに声をかける。
「ああ!お姉さんからの預かり物ね!」
苗字「代理で取りに参りました」
「ずいぶん綺麗なお姉さんだったから覚えているよ。ホラ、」
受け取ったのは、白い封筒。重みがあるから中に何か入っているようだった。
手紙...?これが大切なもの?
疑問に思った、その時。大きな音がした。
「城が...!!おい、リンドール城が!!」
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