05



「俺の考えた作戦はこうだ」

奈良くんが、山中さん秋道くん、そしてわたしを見渡しながら口を開いた。

「目的は簡単だ。あいつの動きを止めりゃあいい」
「それが出来ないからこう苦しんでるんじゃないのよ?」

奈良くんの開口一番に、山中さんがツッコミを入れ奈良くんは大きくため息を吐き出した。

「それができんだよ。一瞬でもいい、あいつの隙が見えればな」

わたしは奈良くんの自信に首を傾げた。
あのアスマ先生の動きを絶対に止められる?
どういうことなんだろう?
それはわたしだけではなくて、秋道くん山中さんもそうで、しばらく首をかしげていたが山中さんが一番に声を上げた。

「あ!シカマル!アンタ使えるわね!」

山中さんの言葉に秋道くんも「そっか!」と反応して、奈良くんは呆れたような顔をしている。
一方、わたしはまだ分からないままで首を傾げ続けていた。
そんなわたしに気づいた山中さんが「アンタはシカマルのあれ、見たことある?」と声をかけてくれた。

「あれ?」
「そ!シカマルん家の秘術、影真似」
「…あ!」

見たことがある。
影を使って相手の動きを縛る不思議な術だ。
アカデミーのとき、何かの授業で奈良くんが使っているのを少し見たんだったか…あれは奈良くんのお家の秘術だったのか。
思い出したと同時に、さっきの奈良くんの自信にも合点がいった。
つまりは、奈良くんの術でアスマ先生を捕まえる、ということなんだろう。

「さっき一対一で術に嵌めようとしたんだが、一人じゃあいつの隙に全然入り込めねえ」
「じゃあぼくらはシカマルが影真似をできるように、アスマ先生の気を引けばいいんだね!」
「まあそうなんだが、一斉にかかって一斉に蹴散らされちゃ意味がねえ。こういうのはリズムでいくもんだ」
「リズム?」

わたしが聞き返すと、奈良くんは今回の作戦の本筋を話し始めた。

まず、一番始めのように秋道くんがアスマ先生に特攻をしかける。
そして死角から山中さんが心転身の術をかける(聞いたらこの術も山中さん家の秘術なのだとか)
もしそれで先生がその術にハマってくれれば万々歳なのだが、こちらの手の内はバレているため恐らくかかってはくれない。
そこで、秋道くんが再びUターンでアスマ先生を特攻。
加えてわたしと山中さんの二人で死角から飛び道具での攻撃。
隙を見て奈良くんが影真似の術をかける、とそういうことだった。

「相手は上忍だ、これで隙が生まれるかは分からねえ。本当はいのの術で動きが止めれたらベストだが」
「心転身はわたしもさっきかけようとして失敗したわ、そもそもわたしのこれは相手が止まっててくれないと難しいのよね」

動きを止める、か。
二人の会話を聞きながらわたしはひとつ心当たりがあった。
言いたいことは言う。
心の中でアスマ先生の言葉を反芻させてからわたしは恐る恐る手を挙げた。
一斉にこちらに視線を送られて、早々に手を下ろしたくなる。
い、言いたいことは言う!
もう一度自分に言い聞かせて口を開いた。

「あ、あのね、わたし本当に少しだけなら、先生の、動き止めれる、かも」

みんなが驚いた顔をしていて、山中さんがわたしに詰め寄ってきた。

「ヒィ!」
「本当なの?!」
「た、多分…!そ、それに、本当に本当にほんの少しだけ、なの…!」
「何秒稼げる」
「ええ…えっと、五秒く、らいなら」

言ってから自信が無くなり「いやもっと短いかも」なんてモゴモゴと付け足していたら、奈良くんが小さく笑った。

「五秒もありゃ充分。じゃあさっきの作戦でいくぞ、おまえは自分で動いていい」
「…!う、うん…!」

任された仕事に大きく頷いた。

「…でもさ」

突然萎れた声が聞こえてきてそちらに目を向けると秋道くんがうつむいている。

「もし、これで鈴取れても誰か一人がアカデミーに戻るんだよね」

そういえばそうだった。
そんな話すっかり忘れていたがそうだ、この作戦で鈴を取れたとしても誰か一人が落ちるんだ。
なんだかさっきまでの意欲が沈む。
しかし、それを取っ払うかのように山中さんが大きな声を出した。

「バカね!そんなことさせないわ!先生説得して四人で合格させてもらうのよ!」
「…説得できなかったら?」
「そ、そのときはその時よ!みんなでアカデミーに戻るわよ!」

山中さんの思いがけない言葉に、秋道くんも奈良くんも驚いている。
わたしもまさか山中さんがそんなこと言うとは思わなくて驚いた。
そんな、みんな落ちなくても。
そう言う前に山中さんは笑った。

「もうこの四人じゃなきゃわたしは嫌だもの」

その言葉に胸があったかくなる。
四人。
ちゃんとわたしも入ってる。
ちゃんと自分も必要とされているのがたまらなく嬉しかった。
山中さんの言葉に他の二人も笑っていた。
そして山中さんは大きく拳を突き上げた。

「第十班!作戦決行よ!」


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