06 side アスマ
終了まで残り半分ってとこか。
太陽の位置を見つつ、周りに気をくばる。
ここまでで、あいつら全員と交戦した。
全員がソロで挑んできたが、最後に戦ったシカマルの引きの良さを見ると、おそらくあいつは『一人では無理だ』と、気づいただろう。
この試験の本質には気づいているかは定かじゃないが、他の奴らに協力を促してくるはずだ。
里でも随一のチーム連携を見せる、いのしかちょう一家のせがれ達の連携はいかほどか。
それに。
そこにイレギュラーな、アカザも、加わってくることだろう。
開始直後に見せた、アカザの傀儡人形。
自分で作ったものではないと言っていたが、アレほど立派な傀儡を操るには相当なチャクラコントロールも、元のチャクラ量だって必要だ。
ふと、ある人物を記憶から呼び起こすような立派な傀儡だった。
「なかなか、面白いチームになるんじゃないか」
我が教え子達の可能性に、思わず笑みがこぼれる。
その時、少し離れたところでチャクラが膨らむ気配がした。
チョウジか。
「お手並み拝見と、いこうかね」
腰にぶら下げた鈴がチリン、と1つ鳴ると、茂みから砂埃を巻き上げ、チョウジの肉弾戦車がこちらに向かってきていた。
チョウジのこの技は、初回を避けさえすればあとはどうにでもなる。
体を捻り、避けきったところで背後の茂みが揺れた。
「もらうわよ!心転心の術!」
茂みから体を出したいのが、独特の印の構え。
あの術は、捕まると厄介だが、これもまだいのの力量ではかかるまでに時間がかかってしまうのを知っている。
まあ、その前に。
クナイを一本、いのに投げつけ印を崩しに行く。
キィイイイン
「?!」
ガクリと、足の力が抜け、地面に膝をついてしまった。
なんだ、今の音は。
聞こえたのも、揺らいだのも、一瞬でとっさに体勢を立て直そうとすると、一歩踏み込んだ足が、地に引き摺り込まれた。
「つ、捕まえた…!」
「!、おま」
「第二傀儡『閻魔』」
俺の足首をつかむ太い赤い指、その先で赤い瞳がギラリと光って。
しかし、その地中から聞こえた少し怯えた声は確実にアカザのものだった。
第二傀儡?
さっき見せていた傀儡は第一だった、こいつまだ扱える傀儡があったのか!
しかし、傀儡は傀儡。
足首は掴まれているだけで、特に異変はない。
足を引き抜こうとした瞬間、ピクリと体が嫌な硬直に揺れる。
「…やってくれたね、おまえら」
「ご苦労さん、せんせ」
動かない体に目線だけ移せば、地面に伸びる影の先、気だるげに俺と同じポーズをしているシカマルがニヤリと、してやったりの笑みを浮かべていた。
はぁ、とため息をこぼしてやればボコリボコリ、と、地中から巨大な赤い般若が現れた。
ほぉ、またこれも立派だな。
アカザの二個目の傀儡人形と思われるその鬼は、背中に背負っていた大きな樽を地面に置くと、ボヒュン、と音を立て消えた。
「あで、」と、樽があった場所には、尻餅をついたアカザがいて、その手には巻物が握られている。
「日之出とっとと鈴取れ!俺じゃ動けやしねえ」
「え、あ、うん!」
アカザがシカマルに声をかけられ、我にかえったように俺の腰につけてあった鈴に手をかけた。
その表情は、聞かなくてもわかるほど色々なものに打ち震えていて。
この作戦も、きっとこいつらで話し合ったものなのだろう。
それが成功したのだ、まんまと俺はやられてしまった。
嬉しくないわけがない。
チリン。
鈴を手にしたアカザは、あからさまに破顔した。
その瞬間、シカマルも限界だった様子の影真似の術をプツリと途切れさせ、どっと地面に尻をついた。
さらに、それぞれ散っていたチョウジといのも騒ぎながら集まってきた。
それを見て、俺も笑みを浮かべた。
今回の試験はそもそもこいつらの力量を見るもので、アカデミーに戻るやらはどこかの上忍とは違って、本気を出してもらうためのハッタリに過ぎない。
もしソロプレイに走るものが現れたとしても、アカデミーにまでは戻さず軽くお灸をすえる程度でいいものとしていたが…、ここまでのものが見れるとはな。
試験終了と試験の意味を説明しようと口を開こうとしたとき、
「せ、せんせい!」
大きな声がそれを阻んだ。
俺を呼んだのは、アカザで初めて聞く大声にいささか俺も目を丸くする。
アカザは、3つの鈴を握りしめて意を決したように俺を見ていた。
「あの!鈴は3つです!でも!よ、四人で、合格がいいです!み、み、みんなで、下忍にならせてください!」
「お願いします!」そう、俺に叫ぶなり頭を深く下げてきた。
突然のことに、返せないでいると頭をさげるアカザの横に、いの達も並んで同じように「お願いします!」というと、頭を下げてきた。
しばらく、呆然とそれを眺めていたが、そのうちのどの奥からくつくつと笑いがこみ上げてきた。
昨日、仲良くするのが不安だ、と言っていたアカザが先陣を切るとは。
横一列に並んで、頭をさげる教え子を見てついに声をあげて笑った。
なんだ、おまえら仲良くやってるじゃないか!
「全員合格だ!誰もアカデミーに戻らんでいい!四人とも今から正式に第十班だ、おめでとう」
俺を見上げたその顔は、四人とも同じ笑顔だった。
prev /
next