「じゃ、もうてめえは二度と呑むんじゃねえぞ」

火影邸の前でシカマルにそう言われて、シカマルは自分の職場である火影室へと向かっていった。
その後ろ姿を見て、ここにたどり着くまで溜め込んでいたため息を、やっと吐き出した。
なんでアイツあんな通常運営なんだ。

シカマルの家で、お風呂を借りて、見つけてしまったいわゆるキスマーク。
ここ最近のわたしにはなかったもので、どう考えてもシカマルに付けられたとしか思えなかった。
パニックになりつつも、お風呂に入り、シカマルが作ってくれた朝ごはんを食べ、一緒に家を出て、出勤。
お風呂を出た最初こそ、シカマルと普通に話せなくて困ったが、次第に普通に接するようになった。
だって、シカマルはいつも通りなのだ。
特に気にしたような素振りもしないし、隠しているってわけでもなさそうだった。
むしろ、昨日のわたしの悪酔いぶりを蒸し返すほどだ。

火影邸の前でしばしぼーっとしたわたしはじぶんの業務を思い出して、職場へと向かった。
なにがあったにしろ、シカマルがああして普通に接してきているのだし、わたしも忘れたほうがいいのだろうか。
このキスマークは。
まあまだまだわたしもうら若き乙女で、キスマークを思い出せば顔がすこし熱くなった。
だって相手が相手だ。
シカマルはアカデミーの同期生で一緒に馬鹿ばかりやってきた友達だ。
すごい出世株で、今こそ火影であるナルト(これにもびっくり)の補佐官にまでなっている。
わたしもわたしで肩書きは特別上忍だから、お互い忙しい身でよく考えれば、最近はあまり会えていなかった。
で、久しぶりに逢ったらこれである。
ちょっとレベルが高いのではなかろうか。

「おはよう、随分遅い出勤だな」
「おはよう、イビキ叔父さん」
「だからその呼び方はやめろっての」

職場に行けばイビキ叔父さんこと、森乃イビキが居た。
わたしとイビキ叔父さんは言ってる通り、叔父と姪の関係だ。
わたしの特別上忍の肩書きも実はイビキ叔父さんから貰った。
というのも、わたしの仕事はこの尋問・拷問部の書類整理がほとんどで、いわゆるイビキ叔父さんの補佐官。
イビキ叔父さんが「親戚が補佐官だと使い勝手がいいから」と中忍になったわたしを半ば無理やり、特別上忍にし、補佐官としてここに配属したのだ。
そもそもわたしはイビキ叔父さんみたいに拷問するのは嫌いだし、やりたくない。
だから最初は憤ったものの、特別上忍の支給の良さに落ち着いてしまっているのが現状だ。

「つかおまえ顔どうした、パンパンだぞ」
「…昨日、飲んだの」
「ほー…おまえも振られたかぁ?」

この叔父は仕事柄か察しが良すぎて困る。
黙ってやりかけの書類を取り出せば、イビキ叔父さんはおかしそうにゲラゲラ笑い始めた。
思わず、舌打ちをしてしまった。


お昼休み、職場のすぐ近くのベンチでおにぎりを食べていた。
美味しいな、これ。
もぐもぐと食べているこのおにぎり、作ったのはシカマルだ。
「飯残ったから昼食え」とか言って持たせてくれた。
わたしより女子力高くて引くレベル。
でもおいしいから何とも言えない。

「あ、あのっ、シカマル様!」

ふいに聞こえた名前にドキリと胸が鳴る。
声の方に目を向ければ、シカマルが女の子に呼び止められていた。
多分、新人の中忍さんかなあ。
顔を赤らめてシカマルに書類か何かを渡している。
初々しい反応におにぎりを食べながらぼーっとその二人を眺めた。

シカマルも、ナルトも、キバも、みんな。
わたしの同期は最近何かとモテる。
シカマルはあんなんだけど火影補佐官で若い頃から注目されていたし、実家はあの奈良家、さらに今はその当主、いわゆるエリート街道を闊歩しているヤツだ。
キバも、シノも、チョウジも。
ナルトに至っては、里の大黒柱の火影だ。
ああ、そういえばサスケも。
アイツも里抜けとかいろいろとあったけど、戻ってきてからはやはりアカデミーの頃から天才、天才と言われていただけあった。
あっという間に、実力で信頼を取り戻して暗部の部隊長になった。
アイツは元からモテていたけど、勢いは増すばかりだし。
小さい頃から奴らを知ってるわたしからしたら、アホな面ばかりが出てきてしまって何とも言えないが、黙っていればかっこいいのかなとは思う。

まだ顔を赤らめさせながら、女の子がシカマルと話していて、シカマルも柄にもなく笑っていた。
あ、なんか。
わたしは急いで残りのおにぎりを食べて、その場を離れた。


こんらんするおとめ


楽しそうに女の子と会話するシカマルがすこし、やだな。
なんて思ってなんか、ない。

prev / next

top / suimin