「お疲れさまです、火影様」

書類提出をしに火影室に行くと、ナルトが立派に机で書類整理をしていた。
アカデミー時代の彼を知ってるわたしからすると未だに信じられないし、見慣れない光景だ。
入ってきたのがわたしだと気付くとナルトは書類から目を離してわたしに笑いかけてくれた。

「おーユウナ!」
「これ、今週の書類ね」
「…はあ、また溜まっていくのかってばよ…」

ため息をついて机にうなだれる友に思わず笑いが込み上げた。

「ねえ…シカマルは?」

いつもナルトの側には、シカマルが居るけど今この部屋にはナルトしか居ない。
いつも書類はシカマルがやっていたように思ったけど。
わたしの問いかけにナルトは机から顔を上げて「カカシ先生んとこ」と言った。

「カカシ上忍?」
「そ。まだおれらだけじゃわかんねーこともあってカカシ先生と、あと綱手のばあちゃんにも色々教えてもらってんだ」

「おれは留守番で、溜まった書類片そうかと」なんて、まんざらでもない感じで笑った彼にわたしは成長したなとしみじみ感じてしまう。
まあ何にせよ、シカマルが居なくてすこし助かったな、なんて。
というのも、なんかあれからわたしはおかしいのだ。
シカマルの名前を聞くだけでビクついてしまうし、シカマルの姿を見れば避けるようにその場を去る。
それが当初の居たたまれないだけなのか、じぶんでも分からなくなっている。
きっかけがきっかけだし、そんな甘いものではない、とは思っているし、甘いもののはずがない、のだけれど。
正直、今はできれば逢いたくない。

「シカマルになんか用か?」
「えっ、いや何もないよ」
「…ふーん」
「な、なに…」

いきなりナルトがニヤニヤと笑い始めて、わたしはすこし狼狽えてしまう。
ナルトもじぶんのことは鈍感なくせに、変なとこは鋭いからな。
気付かれる要素はないはずなのに、感づかれそうでびくびくしてしまう。

「おまえ、シカマルとなんかあったってばよ?」

案の定というか何というか。
わたしは一呼吸置いてから、「別に?なんも?」と言ってはみたもののナルトが聞くはずもなく。

「シカマルも最近すこしおかしいからなんかあったとは思ってたんだけど、まっさか、相手がユウナとはなあ!」

にしし、と幼い頃の笑い方のまま笑ったナルトにわたしの思考は停止した。
シカマルもすこしおかしい?

「ど、どゆこと、」
「あーなーんか、よくぼーっとしてなんか考え込んでるみたいでよー、ちょうど一週間前なんて入ってくるなり机に突っ伏したりして!」

ちょうど一週間前。
それはおそらくっていうか絶対、あの事件の日、シカマルと出勤したときのことで。
なんで、シカマルあんた普通だったじゃん。

そのとき、背後の扉が開いて振り返れば驚いた顔をしたシカマルが居て。
そこからのわたしは早かった。

「えっとわたしまだ仕事あるし戻るわ!お疲れ!ナルト、シカマル!」
「お、おう」
「分かってますね?火影様?」

部屋から出る際にナルトに「さっきのこと言ったらぶっころす」と視線に乗せながら言えば、ナルトはガクガクと頭を上下に振った。


『シカマルも最近すこしおかしいから』
『なんか考え込んでるみたいでよー、』
『一週間前なんて入ってくるなり机に突っ伏したりして!』

ナルトの言葉がぐるぐると頭を駆け巡る。
それと同時に心臓もどくどくと早鐘を打っていた。



おかしい、しんぞう

「何だ、アイツ…」
「…遅い春、だってばよ…」
「…なんだよ、おまえその悟った顔」

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