07
鳥居を潜り抜け、帳を解除する。元に戻った境内は、祓う前のような異様さは感じられない。携帯を開き時間を確認した。1時間もかからなかった。これで、この後のイベントも安泰だろう。
「これ、ありがとう」
一足先に外に出ていた五条の横に並ぶ。「これ」と言って指差したのは、かなり大きい黒の上着。わたしの尻まですっぽり覆ってしまっている。
帳から外に出る際、わたしの身体は無事元に戻ったが、外見、スーツの損傷が激しかったのだ。長袖だったスーツは半袖になっているし、一番は、なんと言っても穴が空いた腹だろう。立派な腹出しスタイルだ。
いつもだったら気にしないが、流石に人通りの多かったあそこを歩くのかあと思っていたら、言う前に五条が上着を貸してくれた。腹の出たわたしの格好を見て嫌そうな顔をしていたのでまたいらんものを見せてしまったなと思う。
五条は「別に」と言って、わたしの格好を見ると噴き出した。
「着られすぎだろ!」
「…うるさいな。おまえがデカすぎなんだよ」
いつまでもゲラゲラ笑ってる五条を放って、車を置いた場所へ通りを進む。
通りは来た時よりも人がずっと多くなっていて、仮装した人で溢れかえっている。自分の今の格好も大概変だけど、おかげで助かった。西洋発祥のイベントだというのに、貞子や子泣き爺もいるし、お化けやモンスターに関係ない仮装もたくさんいて、本当にただのお祭りなのだなと思う。
神社から通りの出口はそんなに長くないためそんなに人に揉まれなかったが、奥の方はもっとすごいのだろうなと思いながら、ホッとして通りを出たところで腕を掴まれた。
「びっくりした、五条か。どうした?」
腕を掴んでいたのは五条で、無言でグイとその腕を引っ張られてむ、とする。
「なんだよ」
「パフェ食わねえの」
「パフェ?」
五条が指差したのは通りの入り口にあるカフェで、カボチャのランタンやゴーストのオーナメントで飾り付けされた外装とともに『期間限定!ハロウィンパンプキンパフェ!』ののぼりが置いてある。
『終わったら入り口にあった期間限定のパンプキンパフェが食べたいな』
確かに、任務前にそんなことを言ったかもしれない。冗談じゃなかったけど、できたらいいな、くらいのもので、正直今の今まで忘れていた。
まさか、この男の方が覚えているなんて。少し、呆気にとられた。
「食わねえのかよ」
もう一度、確認するように言うものだから笑いがこみ上げる。
あの五条悟がパフェを一緒に食べてくれる日が来るなんて。笑いを噴き出すと怒られそうだから、くつくつと喉で笑っていたのに、頭を叩かれた。
見上げると、五条はニヤリと笑っていて嫌な予感がした。
「奢ってよ、先輩」
とても強請っている声じゃないそれに笑って、「調子のいいやつ」と大きな背中を叩き返した。
期間限定のパンプキンパフェはとても美味しかった。
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