シュガーポットに躓く
「私、幽霊なのかな?」
(ベンサム)「ジョーダンじゃなーいわよう!!##NAME1##ちゃんはあちしと同じで、ちゃーんと足があるじゃなーい!」
「だって皆、私の事、オバケとか地縛霊とか言うもん。」
彼と私は、いわゆる、苛められっ子だった。常に皆から仲間外れにされてしまって居た。そんな除け者同士からか、よく2人で一緒に過ごして居た。
しかし、同じ仲間外れ同士でも、暗くて泣き虫の弱虫だった私と違って、彼は強かった。
靴を隠されたり、暴言を吐かれたりと、苛められた時は何時(イツ)だって、泣いてばかりだった私と違って、彼は毎回、遣り返しに行ってた。
(ベンサム)「ほらっ、あちしが##NAME1##ちゃんの分も遣り返してきてやったんだから、もう泣くんじゃないわよう」
「う、うん。ありがとう。…スッキリした」
毎日毎日バレエを踊って練習して居た彼は、其の独特の綺麗な動きで、複数の人数を相手に、略(ホボ)圧勝して行った。
そして、其れをいつも間近で見て居た私が、お礼を言うと、いつも彼は《にんっ》と明るく笑うのだ。其れを見て、私は彼に尋ねる。
「ねぇ」
(ベンサム)「ん?なぁーにぃ?」
「どうしてベンサム君は、皆に仲間外れにされて居るの?」
私と違って、明るいし、強いし、友達思いで、素敵な人なのに。そう言うと、彼は嬉しそうに、温かみを増した笑顔で答えた。
(ベンサム)「あちし、##NAME1##ちゃんのそーゆーとこ、好きよん」
「え?」
(ベンサム)「見たままを其の侭、受け入れて認めちゃう、とーこーろっ」
「うんぇえぇ??」
(ベンサム)「それから、素直で、嘘付かなくて、優しいところ」
「そ、そんなこと…」
(ベンサム)「あちしからすれば、##NAME1##ちゃんの方が仲間外れにされてることの方が不思議だわーん。」
「だって私、暗いし、すぐ泣くし、人見知りだし…子供なのにコーヒー好きだし…奇怪しいもん。変だもん」
コーヒーが大好きで、コーヒーの事ならなんでも知ってる。
勉強も運動も常に負け組の私だけど、コーヒーの事なら、クラスのあんな奴等にも、先生にも、親にだって負けない…。
そう自信はあるのだけれど…やっぱり、こんな子供がコーヒーを好むなんて、奇怪しい事以外の何でもないと、大人ぶってんじゃねーと、周りの奴等に非難されるのだ。
(ベンサム)「あ〜ら、素敵じゃなーい!もう大人の味が好きだなんて、一歩先に進んでる証拠じゃなぁい?大人じゃなーいぃ??」
「変じゃ、ない?」
(ベンサム)「変じゃないわよう。だったら、オカマのあちしはドゥー?オカマよ、オ・カ・マ。」
男なのに女口調で、バレエなんて奇怪しい。変だ。キモイ。オカマ。そう皆が彼を罵る。仲間外れの要素がいっぱいな私と違って、彼はたったそれだけの事で仲間外れにされて居る。
「凄い」
(ベンサム)「オカマが?」
「うん。だって、男と女の両方を持ってるなんて、ベンサム君、凄い」
だって、私は、女の方しか、片方しか持ってないから。
「女の人みたいに、綺麗で強(シタタ)かで、男の人みたいに強くて逞(タクマ)しくて…その全部を持ってる。ベンサム君、凄い人」
(ベンサム)「…んーーふっふっふっふー……んがーーーっはっはっはっは!!」
「ぇ?ぇ?え?」
突然笑い出す彼に、私は、何か変な事を言っただろうかと、戸惑う。
(ベンサム)「あちし、##NAME1##ちゃんと友達になれて良かったわん」
「友、達?」
(ベンサム)「そーうよぅ!あちしと##NAME1##ちゃんはダチよ、心の友よーーーんっっ」
「わ、私も」
(ベンサム)「ん?」
「私も、ベンサム君と、友達になれて良かった」
にこやかに満面の笑みで笑う彼と、恥ずかしそうに小さく微笑んだ私。
一緒に居て、笑い合った、あの頃の日々の光景。
―― ★ ――
(スモーカー)「おい、おい」
誰かが遠くから呼ぶ声が聞こえた気がして、目を覚ました。
「ん…」
(スモーカー)「仕事中に昼寝たぁ、いいご身分だな」
「……店主ですから」
どうやら何時(イツ)の間にかテーブルに突っ伏して寝てしまって居たらしい。
そうして懐かしい昔の夢を見て居た処を、最近、常連客となって居る此の男に起こされた様だ。
(スモーカー)「通りで店が閑古鳥な訳だ。」
「言い方が古いですよ。今時はアイドルタイムって言うんです。やっぱ世代の違いですかね〜。あぁ、言い方が年寄り風だなって感じがします」
(スモーカー)「どっちにしたって言ってる意味は同じだろ。次いでに俺とお前の年はそんなに離れてねぇ。其れと、営業者の口が悪いのも客が居ない原因の1つだな」
ズラズラと好き勝手に言ってくれる此の人は、どー見ても博徒や愚連隊や暴力団と言ったモノの類いの兄貴や親分ポジションの人だろ!としか思えない、怖く厳つい顔付きをして居る。
それなのに、此の悪役の様な裏社会の幹部の様な人相をした男は、なんと悪者どころか、其の真逆に位置する正義の味方の海軍に属して居ると言うのだから驚きだ。(しかもそれなりに偉い人!)
初めて会って、其れを聞いた時は、本やゲームの展開で、魔王が救世主に成る位の荒技を、現実で見せつけられた様な気分になった。
そんな容貌をした人が、海軍だと言う事にも驚いたが、名前を名乗られた時は更にビックリさせられた。
だって其の名前は、出会うほんの数日前に新聞で、【彼】の名前と共に何度も出て来て居た名前だったからだ。(そう言えば、此の男の写真も載って居た様な気がする…今更ながら。)
そうして、私の名前を確認した後、此の人の口から友達である懐かしい【彼】の名前を聞いた。そして状況説明として、次に出されたのが、ほんの数日前に目にした新聞。
其の新聞を受け取って見てみると、確かに目の前の男の写真も載って居た。【彼】ばかり意識して見て居たから、他の人物の写真になんて、気に留めて置かなかった。
どうやら【彼】は、一旦、捕まったものの、隙を見て脱獄したらしい。
其れで、【彼】を匿ったり、手を貸しそうな、親しかった人物を当たって居る最中なのだと、此の男は至極、苛ついた様子でそう言った。
それで【彼】と一番仲が良かったと云う私に、白羽の矢を立てて、此所に来たと言うのだ。
《一番仲良し》と言われて、思わず私は頬が緩んでしまった。此の男は、其の私の表情を見て、ますます探るような視線を突き刺さして来た。
しかし、残念ながら【彼】は来て居ないし、そもそも、【彼】とは【彼】が海に出た日以降、会ってないし、連絡を取り合った事も一度足りとて無い。
そう返答を聞くと、此の男…スモーカーさんは、『珍しく勘が外れたな』と、呟くと同時に、席から立ち上がって『また来る』と、言った。
其の返答に、私は軽く面食らった。何も飲まず食わずで帰ってくのに、また来ると言うのか、と…。だから、ドアの所まで行った彼…スモーカーさんに、声をかけた。
「ちょっと待って下さい。」
(スモーカー)「あぁ?」
不機嫌な声と共に、肩越しに振り向いたスモーカーさん。
どうやら折角、捕まえた獲物を失態で逃がしてしまい、手間が増えた事に相当気が立って居る様だった。
(しかし後に本人が語るに、本命の海賊を捕まえたいのに、余計な事で足止めを食らって居たからだとの事だった。そして【彼】の脱走の失態は自分の隊ではないとの事。)
そんな怖さが倍増して居る彼に臆する事なく、私は真っ正面から彼を見据えて、しっかりとした声で言った。
「コーヒー、一杯飲んで行きませんか?初回ってことで、タダにしておきますよ」
海軍の仕事で此所に来たとは言え、入り口からお店に入って来たんだから、何か飲んでけ。という気持ちから声をかけた。
入り口から入ってきたのだから、どんな人であれ事情があれ、客として扱うのが私のポリシーの1つだ。
そう言葉をかけられた彼の顔は、其れまで居据わって居た目を、少し見開いて固まり、面食らった、少し間抜けな表情となった。
普段、怖々として居る容貌が、緩和というか、中和され、全く怖さを感じなくなった、あの呆気に取られた表情は、今となっても普段とのギャップが印象的で未だに忘れられない。
(なんで彼は驚いたのかと云うと、後の彼曰く、見た目と違って、気の強い発言をされたから、軽く面食らったとの事。…お互いに外見とのギャップに驚いたと言う事か…。)
彼と私が出会い、彼が此所に最初に訪れたのは、そんな事でだった。
其れから彼は、捜索して居た【彼】が再び捕まって、私への疑いが晴れた後も、時偶(トキタマ)此処へ通い続けて居る。
(彼曰く、コーヒーが気に入ったから。と、(客が少なく)静かだから…との事。)
そんな最初の頃の回想に、思い耽(フケ)る##NAME1##を正す様に、ンガゴゴッ!と大きな音を立てて椅子を引いて座るスモーカー。
(スモーカー)「いつものだ」
彼が注文した、≪いつもの≫とはエスプレッソの事だ。
「どうぞ」
しかし、彼女が出したのは…
(スモーカー)「ウィンナー・コーヒーだろ、こりゃ。」
エスプレッソにホイップクリームを載せた、ウィンナー・コーヒー。
しかも、ご丁寧に、上にたっぷりと乗っかっているクリームは、王冠の様にデコレーションされている。
器用な奴だと、心で感心しながらも、≪またか…≫と呆れた表情をするスモーカー。
「ただのウィンナ・コーヒーじゃないんですよ。スペシャルです」
そんなスモーカーを気にせずに、にこやかに笑ってそう言う##NAME1##に、スモーカーは溜息を零す。
それもその筈、##NAME1##はウッカリ間違って、ウィンナ・コーヒーを出したのではなく、意図的に注文した品とは別の物を出したのだ。
(スモーカー)「(確かに、このクリームの量はスペシャルだが…)…クリームなしのを出せ。ったく、閑古鳥の要素2つ目だな」
「ごちゃごちゃ文句言ってますと、フラッペに代えちゃいますよ」
フラッペとは、アイスコーヒーの一種で、練乳が入る為、かなり甘いコーヒーだ。
(スモーカー)「…………。」
彼女の場合、本当に其の言葉通りを実行しそうなので、おとなしく口を噤(ツグ)む。
(スモーカー)「注文聞く意味ねーだろ」
「聞かなきゃ、どんなのが良いか分からないじゃないですか。一応此れでも、御客様の意に沿うよう努めてるんですから」
(スモーカー)「だったら毎回、ちゃんと注文したモンを出しやがれ」
彼女に注文して、意に沿う物が出て来た回数は、頼んだ合計数の半数にも満たない。
「私が相応しいと判断したのなら、ちゃんと出します」
(スモーカー)「…で、俺にはエスプレッソではなく、コレが相応しいと?」
そうウィンナ・コーヒーを指さしながら聞くと、彼女は其の通りだと、肯定する様に、にっこりと笑った。
「此の前いらっしゃった時と比べて、お顔の肌が少し荒れて居て、頬が弛(タル)んでる様に見えます。」
笑顔を崩さず、自分の頬に人差し指を当てながら##NAME1##は言った。
「疲れ顔、してますよ。スモーカーさん?」
(スモーカー)「……よく見てやがる」
その指摘が図星だったのか、頭をガシガシと掻きながら、疲労を認めるスモーカー。
「ふふっ…これでも、譲歩した方なんですよ?疲れた時にコーヒーは、あまり良く無いんですから。」
(スモーカー)「だが、飲みもんはコーヒーしか置いてねーんだろ、此処は」
「珈琲喫茶ですから。…だから、せめて御客様の意に沿うよう、そして尚且つ、私の気遣いも組み込めるよう、ウィンナ・コーヒーを選択しました。」
自営業の小さな喫茶店。普通の喫茶店ではなく、コーヒーをメインに…いや、此の店では、コーヒーのみを扱った喫茶店だ。
飲み物はコーヒーしか置いておらず、紅茶やドリンクは一切ない。食べ物やデザートは一応あるが、どれもコーヒーに合うよう作られた物ばかり。
(スモーカー)「疲れた時には甘いモンって事か。」
「お気に召さないのでしたら、どうぞ、代金は要りませんので此の侭…」
(##NAME1##・スモーカー)「「扉からお帰り下さい」」
(スモーカー)「だろ?」
毎度の遣り取りだから覚えちまったんだよ、と言わんばかりにスモーカーは言葉をハモらせて来た。
(スモーカー)「全く…いい信条持って商売してやがるな」
「良いコーヒーをより良く味わって頂く為です」
(スモーカー)「いいコーヒー、か。」
「はい、良いコーヒーとは、…」
カランカラン、ドアに付けて有った、お客来店を告げるベルが鳴った。
(ノキニア)「悪魔のように黒く」
(ドトール)「地獄のように熱く」
(ギウィン)「天使のように純粋で」
(トレイン)「愛のように甘くなければ」
(ノキニア・ドトール・ギウィン・トレイン)「「「「なりません。」」」」
(ツターレ)「だろ?##NAME1##ちゃん」
入って来たのは、此処のお店の常連客となって居る、スモーカーに負けず劣らずの体格の良い、肉体労働の職に就いて居るおっちゃん達だった。
「いらっしゃいませー。もー、私の台詞を皆して取らないで下さいよー。」
さっきはスモーカーにハモられ、今度はおっちゃん達に丸々と台詞を取られてしまった。
(ギウィン)「はははっ、メニューに書かれてるし、毎回言われたらどんなバカでも覚えちまうよ」
おじさん達は陽気に笑いながら、スモーカーの隣の席から、ガラガラに空いて居るカウンター席へと、連なる様に座って行く。
「いい言葉が決してなくならないのは、心打たれる所と、言い飽きない所に有りますからね!」
テーブルの所々に置かれて居るメニューの表紙や裏表紙には、##NAME1##の好きなコーヒーにまつわる名言や、コーヒーの豆知識などが書かれて居る。
先程、おじさん達に言われた名言も、その1つで、タレーラン・ペリゴールという政治家の名言である。
(ドトール)「よう!海軍のにーちゃんも来てたかッ」
(スモーカー)「あぁ、あんた達もよく、こんな店の常連やってられるな」
「私に失礼ですよ、カナヅチさん」
(ギウィン)「ははっ、お互い様だろーよ、スモーカーさん」
(トレイン)「まぁ、初めは確かに、注文した物じゃねーのが来た時は驚いたがな」
(ノキニア)「そーだな〜。だが、理由を聞いちまったら、怒るに怒れねー。逆に感心しちまった」
(ドトール)「そうやって体を労わってくれるし、生活が厳しい時は何かと理由付けてタダ飯食わせてくれるしな!優しい##NAME1##様にゃぁ感謝してるぜ」
「ギャンブルも程々にして下さいよ?ドトールさん。…私も、皆さんの寛大さと気前の良さには助かってます。皆さんの御蔭でこうして店を続けていられますから」
店は、人通りの少ない辺鄙な所にあり、其れに加えて、注文した通りの品が出るとは限らないという問題の多い店。
此の人達の様に、寛大で此方の好意を汲み取り、譲歩してくれる人達がいなければ、とっくに此の店は閉店に成って居る。
(ツターレ)「まぁ、其処は、≪持ちつ持たれつ≫だな」
「えぇ、そぅですね」
そんな会話に、あははははっ!と、おっちゃん達と一緒に笑い合う。
(ノキニア)「いやー、でも、ほんっとーにイイ女だよ。##NAME1##ちゃんは」
「ふふ、そうですか?有難う御座居ます」
(ベンサム)『##NAME1##ちゃんだって女の子なんだから、綺麗で強かになれるわよぅ』
『そうかな〜?…でも私、コーヒ以外、取り柄無いし、顔だって普通だし…』
(ベンサム)『バッカねーい!綺麗で強かにならなきゃいけないのは、コーコ!よぅっ」
コンコン、軽くドアをノックするように、私の左胸を叩いた彼。(←※幼少の頃だからセクハラにはなりません。)
(ベンサム)『外見がドゥーんなに、厳つくたって、醜かったって、ココが綺麗で強い奴には、ぜぇーーーーったいにッ、敵わないのよぅ!!』
『ベンサム君みたいに?』
(ベンサム)『そう!あちしみたいにっ!…って、それ、ドゥー言う意味っよぅ!?』
『顔が面白可笑しくってもって事』
(ベンサム)『グッサー!!ハッキリ言い過ぎよぅ!素直って、痛いのねぇい!!』
『ふふふふふ、ベンサム君…』
(ベンサム)『な〜によぅ…グスン。』
『私、ベンサム君みたいに素敵になる』
(ベンサム)『……。』
『ベンサム君が、文句なし!って思えるような、綺麗で強かな女の子になってみせるよ!』
胸に拳を当てて、彼に言った。
(ベンサム)『んがーっはっはっはっは!たーのしみねぃ!!』
大好きな心友に、誓いを立てた。
(ノキニア)「どうだい?俺の息子の嫁さんになってくんねーか?」
「残念ですねー。私、コーヒー愛飲家の人じゃなきゃ付き合わないって決めてるんです。確か…ノキニアさんの息子さんって、コーヒー駄目とか言ってませんでした?」
(ノキニア)「いやいや、問題ねーって。息子も此処のコーヒーなら好きになってくれるさ!なんたって此処のコーヒーはどれも美味いからね!」
(ドトール)「あんたの息子さんはどーか知らんが、確かに##NAME1##ちゃんの入れてくれるコーヒーは、どれも最高だ!!」
(トレイン)「俺ぁ、アイリッシュ・コーヒーには口煩い方なんだが、此処のは文句なしで、満点あげちゃうぜっ」
「ふふ、皆さん有難う御座居ます。それでトレインさん、今日はどうです?」
(ギウィン)「こいつは今朝なぁ、生クリームたっぷりのケーキを、1ホールも食べてたぜっ、##NAME1##ちゃん!」
(ツターレ)「ついでに、仕事が終わったら、女友達と飲みに行くっつってたっけ…」
(トレイン)「ばっ!言うなよお前等!!」
「あー、じゃぁ今日は残念ながらアイリッシュ・コーヒーは出せませんね」
(トレイン)「心優しい##NAME1##ちゃぁ〜ん、そこをなんとか、ね??」
「どんなに褒め立てたって、頼まれたって、駄ー目ー、ですよ!」
アイリッシュ・コーヒーは、ウイスキーをベースとするカクテルであり、コーヒー、砂糖、生クリームの入った甘めのホットドリンクである。
そんな物を、ケーキホールを丸々食べ、しかも今夜、飲みに行く人に出すなんて、客の健康を重視して居る##NAME1##には到底出来ない、妥協したくないところである。
(スモーカー)「おい」
「あ、すっかり空気なってましたね、スモーカーさん。何ですか?」
(スモーカー)「会計だ」
「あれ、何時の間に飲んでしまったんですか?」
(スモーカー)「テメーが楽しそうに談笑して居る時以外に、何時(イツ)がある」
「もっと味わって飲んで下さいよ」
(スモーカー)「充分味わって飲んだ。クソ甘ったるかった。」
もともとブラック派で、甘い物を好まないスモーカーにとって、当然の如くに、あのクリームのスペシャルは甘過ぎたらしい。
「………。」
##NAME1##は、カウンター越しに身を乗り出し、腕を伸ばして、スモーカーの眉間に、ツン…と、指を当てる。
(スモーカー)「………おい。」
「………。」
グリグリグリ、と、スモーカーの呼び掛けを無視して、無言で指を押し付けて行く。
(スモーカー)「何がしてぇんだ、オメェは」
手の甲で横に払う様に、眉間を押して来る##NAME1##の手を退ける。
「ふふふふふふふふっ、甘く感じて頂けたのなら、幸いですね」
彼女は至極、嬉しそうに笑ってそう言った。
(ツターレ)「ハハッ、海兵の偉ぇにーちゃんは、人の体を動かすエネルギー源のブドウ糖(グリコーゲン)を1番多く使用する脳と、次に使用するのが多い筋肉を人一倍、酷使してる上に、気まで張ってるからな」
「そーなんですよ。だからエネルギー補給と、リラックス効果が得られる甘い物のホイップを、沢山サービスしたんです」
(ツターレ)「うんうん、仕事で頭が疲れた時でも、運動で体が疲れた時でも、甘いものを食べて糖分を吸収することで、ブドウ糖が補給されて回復するからな」
「其れに甘い物を摂取すると、甘味刺激が脳に伝わって、快楽物質であるβ-エンドルフィンが出るから、リラックス効果もありますし。」
(ツターレ)「β-エンドルフィンなら、辛い物を食べても、辛さを和らげる為に、出るらしいよ」
「そうなんですか?それは初めて知りました。」
(ツターレ)「酸味や苦味もそれぞれ効用があって、体が要求しているものに合った食品を、人は≪おいしい≫って感じる様になってるんだ」
「そうなんですかぁ。でもやっぱり其処で驚くべき事は≪疲れた時には甘い物≫と、甘い物を食べるとエネルギー補給とリラックス効果が得られる事を体が知って居るという所でよね。」
(ツターレ)「そーなんだよねー。人間の体は本当に凄いよねー。賢いし、何より神秘的だ!」
(ノキニア)「だぁーーーっ!まぁた、始まったよ。ツターレと##NAME1##ちゃんによる小難しい会話が!」
(ドトール)「ぅおおおッ、頭が、こんがらがってくるぅーーーッツ」
もっぱら肉体労働派のおっちゃん達が頭を抱えて大袈裟に唸りだす。
(ツターレ)「まぁ、要は、人間の体って凄いんだぜって事さ。」
(ノキニア・ドトール・ギウィン・トレイン)「「「「成程、納得。」」」」
(スモーカー)「フーー…毎回それで締め括ってんじゃねーか。」
おっちゃん達のやり取りに、呆れた様子で、脳ミソまで筋肉バカばっかりだと、相変わらずの手厳しい言葉と共に、溜息を深く長く零すスモーカー。
「楽しいですねーーー。」
そのスモーカーとは対照的に、花を辺りに振り撒きそうな程、呑気に陽気に、のほほんっと笑う##NAME1##。
(スモーカー)「お前は呑気に喋ってねーで、とっとと会計しろ。この鈍間(ノロマ)」
「はいはいはい、カナヅチな上に白髪のせいで、おじーちゃんに間違われそうな御客サーマ?」
(スモーカー)「てめぇ…」
(ギウィン)「だっはっは、減らず口の多さじゃぁ、##NAME1##ちゃんには敵わねーなぁ。スモーカーさん」
(スモーカー)「其処に、トロさも加えとけ、ギウィンさん」
「せめてマイペースって言ってくれません?」
(スモーカー)「結局、言ってる事に変わりはねぇ」
「言葉による表現の柔らかさや、棘の含み具合が違うんですぅ〜〜!」
席を立ち、レジの所に歩いて行くスモーカー。##NAME1##も、カウンターの中を移動して、レジへと歩いて行く。
手慣れた様子でレジを操作し、値段を告げる。その告げられた値段に、此処も毎度の事ながらスモーカーは溜息を付いた。
(スモーカー)「またか…」
其の呟きも、毎度の流れの内の1つの事なので、##NAME1##は何時も通りの返答をする。
「えぇ、当然の事ですから。」
(スモーカー)「だから赤字になるんだ、この大バカヤローが」
告げられた値段は、エスプレッソの値段でも、ウィンナー・コーヒーの値段でもなかった。
だが、其の告げられた値段を2倍に、掛け算をして計算をすると、エスプレッソの値段になった。
彼女は、いつもそうだ。
客の注文した品を、別のに代えた時は、客が注文した品物か、代えて出した品物のどちらか、主に安い方の品の代金を半額か、または其れ以上にオトして支払う額を提示して来る。
どんなに経営が苦しくたって、彼女は自分の我儘な信条は変えないし、違う物を出したから代金は貰わない・半額以上に値下げする、といった行為も止めない。
確かに中々目立たない所に店はあるが、客はそこそこに入って来る。それに、どのコーヒーも料理も、一切手を抜かない、妥協を許さない彼女の完璧主義の御蔭で、どれも一級品だ。
其の我儘な信条がなければ、赤字になんてならず、苦労せずに済むだろうに…。しかし、彼女にそう言っても、彼女はそうしない。
(スモーカー)「黙って客が注文したモン出してりゃ、んな苦労はしなくて済むだろ」
前に…3、4度目の訪問をした時にも言った通りの言葉を、もぅ1度だけ言ってみる。確か前に聞いたのは、赤字経営の状態の時で、生活が苦しくて、一日一食という生活を彼女がして居た時だ。
「仕事は、苦労しないで済む様にするばかりのものじゃ、ありませんよ。そうでしょう?世間の風当たりを受け易くて、苦労が多い役職に就いてる海兵さん?」
そして今回も、前回と同様に、こう返してくる始末。其れに加え、彼女は何があっても、自分が提示した金額以外は絶対に受け取らない。だからどうしようもない。
前に、半額分だけで良いと言われても、飲んだ分の全額を渡したら、きっかり半分返して来た。しかも受け取らないと何処までも執拗(シツコ)く付いて来る。
それこそ、御釣りを受け取るまで。しかも俺が受け取らねーと、たしぎや海兵等を経由して返させて来やがるから、こっちが折れる以外に方法は無い。
「ほらほら、そんな事より、ちゃんと提示された金額通りに払って下さいね。」
≪ちゃんと提示された金額通りに≫を、強調させて言って来る##NAME1##に、提示された金額分だけを払う。
(スモーカー)「たく、此の頑固娘。」
「ふっふ〜ん、自分の長所の1つとして、自尊して居ます」
相変わらずの減らず口で、自分勝手な屁理屈を言いたてて笑む彼女を見て、スモーカーは、其の頬へと手を伸ばし、添える。
(スモーカー)「それでテメーが倒れちゃ、元も子もないがな」
≪無理し過ぎて、ぶっ倒れるんじゃねーぞ。≫と、そう言ってるも同然に解釈出来る、素直じゃない彼らしい気遣いの言葉。
「…スモーカーさんこそ、無理して体調崩したり、無茶して怪我したりしないで下さいね。」
頬に添えられたスモーカーの手に、己の手を添え、言われた事を本人にもソックリ其の侭、同じ気遣いを返す##NAME1##。
「元気なスモーカーさんが来てくれなきゃ、困るんですから。」
負傷した姿や体調不良で来店されたって、心底嬉しくなんてなれないし、楽しく会話なんて出来ないんですから…と、言葉を続ける##NAME1##。
(スモーカー)「……フンッ、俺だって態々(ワザワザ)こんな辺鄙な場所まで来てやってんのに、美味いコーヒーが飲めなかったらバカみてぇじゃねーか」
これ以上の無駄足は、他にはねぇ。と憎まれ口をたたく様に言うスモーカー。素直に語る##NAME1##とは対照的だ。しかし、御互いの気持ちは伝わって居るので問題はない。
「それじゃぁ、御互いの息災を願って…またお越し頂けるのを心よりお待ちしてます。スモーカーさん」
(スモーカー)「あぁ、また来る。」
そう言って背を向け、扉へと向かうスモーカー。そのまま外へ出て行こうとするが、ヒソヒソと聞こえて来た会話によって、足を思わず、止めざるを得なかった。
(ツターレ)「な?だから言ってるだろ、あの2人、両想いだって!」
(ギウィン)「ノキニアが息子の嫁にって誘ったと言うか、口説いた時、表情こそ変化はなかったが、スモーカーさんを取り巻く空気、雰囲気っての?すっごく重苦しくなってさ。怖かったね、アレは」
(ノキニア)「あちゃーー。いやー、そりゃ悪い事をした。しかし残念。##NAME1##ちゃんが俺の娘になってくれたら嬉しかったんだがな」
(ドトール)「それになんっつったって、##NAME1##ちゃんも満更じゃぁ、なさそうだしな。俺が見る中で、1番イイ笑顔してるぞ。」
(トレイン)「焦(ジ)れったいな…甘酸っぱい青春も程々にして、もうくっ付いちまえって感じだ」
(オッチャン'S)「「「「あぁ、確かに焦れったいな。」」」」
隣同士で肩を寄せ合って皆でコソコソと小声で話して居るおっちゃん達。
だが、バナナワニの鳴き声を聞き分けられる程、優れた耳を持つスモーカーには、実際、距離はあっても、すぐ隣で会話されて居る位にハッキリと耳に会話が入って来る。
そして、カウンター近くのレジに居る##NAME1##にも、其の会話は届いて居り、##NAME1##は苦笑を浮かべた。
「(スモーカーさんとは唯(タダ)の仲の良い友達関係なんですケドねぇ…)」
(ドトール)「海兵のにーちゃんも、##NAME1##ちゃんも、結婚するには何の問題もねーだろーに。」
(ギウィン)「いきなり結婚まで話しが飛ぶのかお前は。でも確かにそうだな。全く、スモーカーさんは何をチンタラやってるのやら…」
勝手に繰り広げられる、オヤジトークに思わず固まって、複雑そうな表情をするスモーカー。
しかし、此れ以上、好き勝手の言い放題・暴走の野放し状態にさせては置けない。
こう言う関連の話しは、女にしても男の会話にしても、盛り上がる所までヒートアップして行くものだ。
別にこういう盛り上がりが悪いとは言わないが、【TPO(時・場所・場面)】を考えて欲しい。
本人達の居る時の場所で、しかも聞こえる距離の状況の場面では、してくれるな。と、言うのがスモーカーの今の心情だ。
(ノキニア)「いやいや、案外さ、乙女心で、##NAME1##ちゃんから言い出してくれんの待ってんじゃねーのか?ほら、最近の若者にある草食系男子と…肉食系女子??って傾向のヤツだ」
(スモーカー)「お前等!バカな事言ってねーで、とっとと飯食って仕事に戻りやがれ!!!!」
スモーカーが肩越しに振り返り、大声でおっちゃん達に向かって、早口で怒鳴りつける。その音量に思わず耳を塞ぐおっちゃん達。
だが、##NAME1##は、おっちゃん達の台詞に呆気に取られて固まって居た。スモーカーの怒鳴り声で耳がキーン、と痛む中、##NAME1##はスモーカーを見つめて居た。
「(そっか…スモーカーさんも独身だった。)」
(スモーカー)「ったく」
そう溜息を吐いて、今度こそ扉から出て行こうとするスモーカーに、##NAME1##は、何にも考えずに反射的に言葉を叫んで居た。
「スモーカーさんっ、貰い手が居なかったら、私が御嫁さんに貰ってあげますよーっ!」
其れを聞いたスモーカーは、出入り口のドアの段差に躓いて、本当にコケそうになった。
オジさん達も、耳に押し当てて居た手を外す途中だったので、バッチリと##NAME1##の声は耳に届いて居り、それ故に、呆気に取られて固まって居た。
スモーカーはコケそうになりながらも、なんとか踏ん張って崩れそうになった態勢を支えて、肩越しに##NAME1##の方を振り返る。
其の振り向いて見えたスモーカーの表情は、此処に最初に来て、コーヒーを飲んでけ、と言った時にした表情とは比べ物にならない程、間抜けで可笑しな顔をして居た。
だから、##NAME1##は思わず、顔全体を≪くしゃり≫と、使って笑ってしまった。其の笑顔を見て、我に返ったのか、スモーカーは再び怒鳴った。
(スモーカー)「バッ!バカかテメーは!!!」
其の我鳴(ガナ)り声に、今度はおっちゃん達が我に返り、体を【く】の字に曲げて、腹を抱えながらゲラゲラと盛大に爆笑をし始める。
(トレイン)「其処は嫁じゃなくて婿だろー!?##NAME1##ちゃんッ」
「あ、そうでした。でも、スモーカーさんの場合、嫁の方が妥当かと思いまして…フフッ」
(ドトール)「ギャーーーハッハッハッハ!!##NAME1##ちゃんらしいぜ!」
(ノキニア)「やっぱイイ女だよ!」
(ツターレ)「アハハハハハハハッ!これじゃぁ、スモーカーさんの面目(メンボク)立たないねっ。男としての!」
(ギウィン)「うひゃはひゃっ!全くだなぁ〜〜〜ッ」
(スモーカー)「〜〜〜〜〜〜ッッツ!!!!」
言い返せず、其の場から一刻も早く離れてやろうと荒々しく、足を店の外へと、一歩前に踏み出した。
(ツターレ)「あれらら、怒らせちゃったかな?」
(ドトール)「にひひ、俺等ぁ、嫌われて、フラレちまったか?##NAME1##ちゃんは。」
「まぁ、フラれたとかは置いといて。怒らせちゃったんで、お詫びしてきますね」
からかい過ぎて、すっかり御冠状態になってしまって出て行ったスモーカーに、慣れた様子で全く動じず、未だ目に笑いの涙を溜めて笑い続けるおっちゃん達。
そんなおっちゃん達と同様に、反省ゼロの笑顔を浮かべて、手慣れた様子で店の棚に並べて有る内の1つの商品を手に取る。
綺麗にラッピングされた、コーヒークッキー4、5枚が詰められた小袋だ。それを持って、スモーカーの後を追い、店を出る##NAME1##。
体格のがたいだけでなく、身長も男らしい程に高く、足も長い。加えてキビキビとした性格と動作の彼に追い付くのは、少々、大変だ。
そう意気込んで、店のドアをくぐり抜けたのだが、店から少し離れた木の幹に、追い掛けようとした本人が、青筋立てた怖い顔で此方を睨む様に見て居た。
此方が追い駆けて行くのが分かってて待って居てくれたのだろうか?確かに、今までに怒らせて、お菓子等を持って詫びに行くのは毎度のパターンと化して居る…のだが、
毎回のパターン通りなら、彼は港へ泊めてある海軍船に向かって乱暴な足音を立てて歩いてる筈なのだ。そして其れを自分は懸命に走って追い駆ける。
其れなのに今回は其れと全く違う、初めてのパターンの展開に、軽く面食らう。
其れでも、彼の気が変わって、必死に追い駆ける毎度のパターンにならぬ内にと思い、駆け足で彼の居る木の下まで走る。
「わわわ、初のパターンですね。待っててくれたんですか?有難う御座居ます」
(スモーカー)「言い返し忘れた事があったからな」
「さっきの私達の失礼千万な発言達に対してですか?」
其れしか言い返す内容と云うか、対象はないよね…と、思う##NAME1##。
そう思って居ると、スモーカーの手が伸びて来て、ガッ!と左腕を勢い良く掴まれた。
「わっ!?」
突然の其れに驚いて、肩をビクゥッ!と振るわせる。
乱暴な其れに、先程の揶揄いが余程、彼の気に障ってしまって、怒らせてしまったのだろうかと思い、拳骨か平手打ちの一発を頭に食らうのを覚悟しようかと考える##NAME1##。
本心上は逃げたいが、逃げられない様に腕を掴まれてしまって居り、其れが出来ないので仕方が無い…ので、次に来るであろう衝撃に備えて、目を固く瞑(ツム)る。
(スモーカー)「あの筋肉バカ共と、(主に)お前が悪ぃんだぞ」
しかし、次に来たのは頭への衝撃ではなくて、背中からふわり、と、柔らかくモコモコした物に包まれた感触と、正面が暖かく固いモノに押し付けられた様な感触だった。
驚いて目を開けて見れば、##NAME1##は、がたいの良い、大きなスモーカーに抱き締められて居た。
「え、……………と、ぉ??」
何故、抱き締められたのか、状況がイマイチというか、全然分からない、掴めない##NAME1##は、首を傾げながら、頭の中で、えっと、えっと、と状況を理解しようとする。
(スモーカー)「ったく、人が気を遣って我慢してりゃぁ、好き勝手言いやがって…。」
「(揶揄(カラカ)った事だろうか?)えっと、すいません」
(スモーカー)「理由が分かってねーのに謝んな、鈍感ヤローが」
「はい?更に訳が分からなくなったんですけど…。」
(スモーカー)「もぅいい。元々テメーになんざ理解を求めてねーし、期待もしてねー」
「はぁ?何ですか、其の言い草は!幾ら温厚な私でも、プチッとキレて、怒・り・ま・す・よ・!?」
少し辛辣な言葉と、至極、呆れ果てた様で溜息を零すスモーカーに、流石にカチンと頭に来たのか、下手(シタテ)に出て謝るのをやめ、反論をし始める##NAME1##。
≪怒りますよ≫と、一字一句を強調させて発する声に合わせて、バン、バン、バン!とスモーカーの厚く固い胸板を目一杯に叩く。
しかし、そんな##NAME1##の目一杯の攻撃も、鍛え抜かれたスモーカーの体は物ともしない。だから、そうして怒る##NAME1##を気にせず、スモーカーは何事も無い様に続ける。
(スモーカー)「だが、そんなお前にも分かる様に、簡潔に述べてやる」
「何様ですか貴方は。あぁ、正義の役職に就くお偉いさんでしたね。悪は許さんとか言いつつ、人員配置が下手で世界各国のあらゆる所で悪の横暴を許してしまって居て、常に天手古舞い状態の…」
(スモーカー)「お前に迎え入れられるなんざ、冗談じゃねぇ。俺がお前を嫁に迎え入れてやる。」
息継ぎは大丈夫か、凄い肺活量だな、と思わずには居られない程に見事なマシンガントークを開始する##NAME1##の言葉を、打ち切る様に少し大きめの声で遮るスモーカー
「………え?それって…」
先程のプロポーズの返事とも、自分からのプロポーズの仕切り直しとも取れるスモーカーの言葉に気付いて、苛立ちはとても遥か遠くに消え去り、暴れるのをやめる##NAME1##。
「あ、の、スモーカー…さん」
突然の愛の告白…プロポーズに、思考が停止し、数秒程、頭が真っ白になる。しかし、其れは、好きな人に返事のOKを聞けたからではない。
咄嗟に、無意識に口から飛び出た気紛れな冗談に、まさかこんな返答が来るとは思わなかった事による、驚きと動揺と、どうしようと云う戸惑いからである。
真面目なスモーカーの事だから、8割方は真剣にそう言ってるのかと思うが、冗談が通じなさそうに見える彼は、意外と癖者で、ユーモアな所も多少は持ち合わせて居る。
だから、残りの2割位は仕返しの冗談のつもりで言って居るのでは?と云うのが、数秒経った後に働き始めた脳により弾き出された##NAME1##の推測だ。
出された答えの内、##NAME1##は2割方の方であって欲しいと願わずには居られなかった。何故かと言うと、8割の方であっては、都合が悪いと云うか、困るからだ…。
(スモーカー)「言っとくが、俺ぁ、本気だからな。冗談なんかじゃねーぞ」
しかし、スモーカーはそんな彼女の願いを容赦無く打ち砕いた。
「マジですか。」
(スモーカー)「そう言ってんだろうが」
「………。(こ・ま・る・っ・。非っ常ーに困る!!)」
抱き締められてるとはいえ、今の体制的にスモーカーの顔を見上げる事は可能だ。しかし、其れが出来ない。
逆に目を合わせない様に俯く。例え其れがスモーカーの胸に擦り寄る様に額を押し付ける結果となっても…顔を、視線を合わせるよりかはマシだと、##NAME1##は思う。
拒否りたいが、だからと言って、其れを口に出して断る勇気も、ドンッ!と彼の胸板を押し返して突き放し、離れる様な行動をする度胸も##NAME1##にはない。
そう出来ないのは、本当は自分も彼の事が好きだからとか、と云う理由からではない。只、傷付けたくないのだ。苛められっ子だった##NAME1##は、誰かの心が傷付けられるのが、嫌なのだ。
況してや傷付けると云う行為を自分が自覚を持って行うなんて…彼女にとっては顔が青褪め、蒼白になるのを通り越して土色になる程、つまりショック死に陥ってしまう位に酷な事なのだ。
しかし、自分が彼の引き金を引いてしまったかの様に、言い出した言い出しっぺは、彼でも、他の誰でも無い…自分自身なのだ。
何であんな発言をしたのか、タイムマシーンがあったらやり直したいと、自分を責め、現実逃避に走りたいが、そう思っても、現状打開には繋がらないし、解決にはならない。
肯定も拒否も、≪誠実さには誠実さを持って対応する!≫と云う真面目さも祟って、誤魔化す事も、話を逸らす事も出来ずに居た。
そんな、何も出来ない、言い出せないで困り果てて居る所に…複雑な救世主達が現れた。
(トレイン)「漸く、くっ付いたよ、あの2人。しかも今までモジモジしてた分を埋める様に、ぶっ飛んでプロポーズとは…」
(ドトール)「やっぱ反動ってのは、倍になって、大きく跳ね返って来るもんなんだな〜。」
(ギウィン)「お幸せに〜、スモーカーさん、##NAME1##ちゃん」
(スモーカー)「………。」
「(ちょ、ヒラヒラと陽気に手を振ってられても、困るからっ!寧ろ助けてっ!)」
##NAME1##の後をコッソリ付けて来たのか、2人から数メートル離れた建物の角から、皆して頭から首や肩までを突き出して此方を覗く様に隠れて居たおっちゃん達。
(トレイン)「##NAME1##ちゃんの店も、ついに店主が寿退社で閉店かぁ」
(ツターレ)「あ、俺の愛妻が店持ちたいっつってたから、愛妻の喫茶店として継いでもいいかな?」
(ノキニア)「おっ、その方が店も喜ぶだろうよ」
「ちょ、勝手な事言わないで下さいぃいい!!あげませんよ!?あげませんからね!!私の店ですからね!!?」
(ドトール)「そんときゃぁ、店の名前は絶対に代えた方がいいぜ。」
(おっちゃん'S)「「「「あぁ、其れ賛成!ネーミングセンスない店名だもんな。」」」」
「失礼な!つーか、やらんと言ってるでしょーにッ!!」
おっちゃん達の助けは、助けとなって居るのか居ないのか、微妙な上に、お店をブン捕られそうになった。(まぁ、当人達は只単に揶揄いに来ただけなのだろうが…)
やれやれ、と、己が店…【コーヒー道(ウェイ)】と書かれた店の看板を眺め、自分らしくない盛大な溜息を声を立てて口から吐き出した。
『ねぇ、ベンサム君、私…コーヒー好きなままで居て良いかな?』
(ベンサム)『あったり前じゃナーーーイ!!寧(ムシ)ろ、今まで以上に好きになって極めるべきだわん!!』
『極める??』
(ベンサム)『そうよーーんっ。“この道一筋”!コーヒをたてて、“コーヒー道”に生きるのよーーーう!!あちしが“オカマ道”に生きる様に!!!』
『“コーヒ道”…うん。うんうん。私、コーヒー道に生きるよ!』
(ベンサム)『じゃぁ、あちし達、一本道を究める者同士ねーーい!んがーーッはッはッはァ!!心の友で同志なんて、最〜強じゃな〜〜〜い!?』
『うんっ!最強ッ…最強だぁーーー!!』
(ベンサム)『んがーーーーがッはッはッはッはははは!約束よん、##NAME1##ちゃん。その道と、人の道だけは絶対に外れちゃ駄〜目よーん?』
『うん!絶対に外さないし、諦めないよ!ずっとずっと進んでくっ』
あの日から今日まで、ずっと、コーヒー道だけに精を注いで来た。心友の彼との約束の為、誓いの為。そして、其れは此れからも変わらない。
勿論、其れだけじゃない…私がそうしたいから。其れに生きて行きたいから。此の道だけを進んで、極め続けて行きたい。精を注いで往きたい。
他の事になんて、あれこれ構ってる余裕なんて、器用にあれやこれやと立ち回る器量なんて、私には無い。
だって、コーヒー道と云っても、覚える事や、しなければならない事や、考える事は沢山有る。
深く進む程、深く深く掘り進む度に…底を尽きぬ事を知らぬ湧水の如く、其れらは湧き出る。
飲料水としてのコーヒーの種類、淹れ方、バリエーション、コーヒー豆の種類、精製、焙煎、菓子等の食品原料への用途。
そして店としての、接客や清掃や仕入れ先の事や、客の好みや健康の把握などなど、経営に対する事のエトセトラ。
ほら、出せば切りが無い。たった1つの道で此の有り様だ。加えて私は自分ではどうしようもない凝り性で完璧主義者だから、其の道に転がり有るモノなら、何でも完璧にマスターしたい。
「(あぁ、やっぱり私は…この道だけにしか生きれない。)」
(スモーカー)「…##NAME1##」
コーヒーの道の事で手も頭も一杯だ。その上、恋の道まで…なんて両立は、自分には到底無理だ。
だから、結局は断るしかないのだが、でもやっぱり、彼の落胆する声や表情は見たくない…から、断らなきゃいけないのに、やっぱ断れない。言い出せない。
そう悩んで居ると、自分を抱き締めてる彼に、名前を呼ばれた。
「はい?」
思考に夢中になって居たせいで、思わず彼を見上げてしまった。(あぁ、多分、情けない顔してる私。眉が【八】の字に下ってるのが分かるもん。)
スモーカーが、両腕の拘束を解く、そして##NAME1##の左手を恭しく己が口元まで持って行き、其の薬指にキスを落とした。
「ーーッ、ん!」
いや、落とすと云うより吸い付いたと表現するのが正しいかもしれない。
彼が唇を離すと、其処には小さな紅い花が咲いて居た。
其れを見て、心が今までにない位の位置まで、トクンッ、と浮上して、ポワンッ、と温かくなった気がした。
「ななな、何、人の指にキスマーク…ってか、内出血させてるんですかっ!怪我しない様にって、お互い約束したのに、貴方が私に怪我負わせてどーするんですかっ」
(スモーカー)「予約だ。」
突然の出来事に、ほんの小さな、どうって事無い内出血を大袈裟な事の様に言う程パニック状態になる##NAME1##を、先刻同様、気にせずに自分の言いたい事を発言をするスモーカー
「スルーですか、私の発言」
(スモーカー)「ソイツが消える頃、また来る。」
「最早、スルー通り越して無視ですね。シカトですね。シカッティングですかコノヤロー」
(スモーカー)「じゃぁな」
するり、と、あっさりと、触れて居た手が離れて行く。再び背を向けて歩き出すスモーカーに、先程、店を出て行った時の様な荒々しさはない。
「ちょっ、と、待っ…」
(スモーカー)「あぁ、そうだ。##NAME1##、知ってるか?」
「な、なんですか」
(スモーカー)「東の海には、こんな諺があるらしい。【恋はいつでもハリケーン】」
「ブッ!!」
(オッチャン'S)「「「「ブフッーーー!!!」」」」
スモーカーの発言に、おっちゃん達は、彼がそんな事を言う意外性と、驚きと、面白さが、諸(モロ)にツボに入ったらしく、思いっ切り吹き出して笑い転げ始めた。
斯く言う##NAME1##も、吹いた…が、おっちゃん達と同じ衝撃だけでなく、色々な意味も込めて、だ。
それは、何故か図星を指された様な、自分に関係がある様な、無い様な…そんな洒落にならないモノが、其の諺に多少なりとも心の中で、突っ掛かった感じがしたからだ。
まぁ、簡単に言えば、自分の気持ちが分からなくなった…と云うか自信が無くなった。迷いの境地に陥ったのだ。其のスモーカーが発言した諺で。
其れを証明する様に、今、##NAME1##の心臓は、かつて無い程に鼓動を強く、早く、打ち鳴らして居る。そして顔も、頬だけに留まらず、全体的に熱を持ってしまって、かなり熱い。
「(〜〜〜ッ!!ちょ、さっきまでの私カムバック!コーヒーにしか生きれないと言い切って居た自信満々の私カムバック!!!)」
あわあわっと、顔を真っ赤にして挙動不審に狼狽える##NAME1##を見て、スモーカーは勝ち誇った様な表情を浮かべる。
そして、抱き離れる時に取ったのであろう、コーヒークッキーの入った小袋を片手に『じゃぁな、お嬢さん』と、揶揄い口調で別れの言葉を告げ、爽快に去って行く。
そんな彼の背中を、##NAME1##は声が出せない口をパクパクと、魚みたいに開閉させながら見送った。(そうせざるを得なかった)
声が出る事なら、『薄情者!』と叫んでやりたい。こんなに人の心を掻き乱しといて、自分だけ満足して去って行くな、と文句を言ってやりたい心情だ。
仕方無しに、項垂れると、左手の薬指に付けられた紅い印が目に入った。すると忽(タチマ)ち顔の熱は、全身に広がった。
「(…も、もちつけ!私っ)カフェ・オ・レ!アイス・カフェ・オ・レ!エスプレッソ!カフェ・ラッテ!カプチーノ!ダッチ・コーヒー!カフェ・ロワイヤル!モカジェバ!」
平常心を取り戻そうと、コーヒーのバリエーションを大声で復唱し始める。
そんな動揺を露わにする##NAME1##を、おっちゃん達は笑いながら、引っ張ってお店の中へと戻っていった。
(ツターレ)「左手の薬指に、予約って…つまり彼は本気だね。」
「…すいません、人が折角、平常心取り戻したのに、ぶり返そうとしないで下さい。」
おっちゃん達に注文された品物を作りながら、未だにニヤニヤとニヤけた表情を止めないツターレさん(実際には彼だけではないが…)と会話をする。
(ツターレ)「本気も本気だ。なんせ、二重の意味で左手の薬指にキスマークをしてったからな」
「二重??」
(ツターレ)「キスマークの意味は本来、エンゲージリングと同じ意味にあたるんだ。」
キスマークと言えば、良く、マーキングの意味…つまり俺の女、私の男に手を出すな!という意味に使われて居る。
しかし、キスマークをつけた恋人・パートナーのことを『彼(彼女)は私(俺)がもう予約済みなのだ』と周囲に将来の事をアピールしていることにもなるらしいのだ。
だから、其のキスマークを、婚約指輪を嵌める左手の薬指にして来たのだから、二重。と云う事になるらしい。ツターレさん曰く。
其の話しを聞いたら、益々(マスマス)此のどーしようもない強烈な気持ち…強力なハリケーンからは逃げられない…脱出不可能だと感じた。
「…わ、私も、どうやら、スモーカーさんと同じ気持ちに…なったっぽいです。」
でも、そう口に出して、その気持ちを認めて受け入れると、心に整理がついた様にスッキリした。
そんな##NAME1##の表情を見て、おっちゃん達は、そりゃぁ良かったな、と、笑顔で言ってくれた。
祝ってくれるおっちゃん達の顔を見て居たら、尚の事、其のハリケーンが、勢いを増して、大きく舞い上がって行くのが分かった。
「すいません、ちょっくら、ハリケーンに乗ってちゃっても、いいですか?」
筋肉バカと称されたおっちゃん達だが、恋愛に関しては本当に聡いらしく、其の言葉の意味をすぐに察してくれて、行って来い、と言ってくれた。(流石、恋のスペシャルキューピット!)
そんな寛容過ぎるおっちゃん達に、取り敢えず出来た一品のサンドイッチを出して、後で仕事場まで差し入れを持ってく事を、お礼共に伝えて店を飛び出した。
そして、走って走って走って、スモーカーの姿が15メートル位、先に見えた時、丁度、彼は船に乗り込む所だった。
「スモーカーさんっ!」
其の15メートル位の間隔を、距離を空けたまま、立ち止って、名を叫ぶ様に大声で呼んだ。
(スモーカー)「…おいおい、客ほっぽかして店を出てくるなんて、本当に店主失格だぞ」
「失格になってもクビにはならないからいいんです。それに、失格になるのは今日に限っての事なんで、明日からはまた支障ないんで、モーマンタイです」
(スモーカー)「本当にテメーの口は減る事を知らねーな」
「ふふ、多分、ずっと健在ですよ。此の減らず口は。それより、貴方に言い忘れた事がありまして、ね」
走ってる間、色々考えてた。衝動に任せて、抱き付いてやろうだとか、勢いに任せて、キスかましてやろうだとか…でも、やっぱりまだ、気恥ずかしくて、出来そうにない。
だから##NAME1##は、スモーカーも認めるお得意の減らず口を使う事にした。
「新婚旅行は、インペルダウンが良いです!!」
スモーカーの目が、またもや驚きで見開かれた。其れは、新婚旅行と言った部分でか、其れともインペルダウンの部分でか…さぁ、どちらか…。
(スモーカー)「バッ、何処の世界に世界一の大監獄を新婚旅行の場所に選ぶ奴が居るんだ!!」
どうやら後者だったらしい。だが、少し頬に赤みがかった事から、少しは前者の部分の方の効果もあった様だ。
どうやら、前者の言葉の意図を理解してくれたらしい…が、後者の言葉の意図は分かってくれなかった様だ。
「此処に居るじゃないですか」
(スモーカー)「ざけんなッ此の大バカヤロー!!!!!」
「ふざけてませんっ大真面目です!!」
(スモーカー)「尚悪いわ!!!!」
「だって、私とスモーカーさんを引き合わせてくれた、運命の赤い糸とも云える役目を担ってくれた【彼】にも、会って報告をしに行きたいんですよ」
小さい頃、ずっと傍に居てくれて、守ってくれた上に、曲がらない様、真っ直ぐ歩けるように教えを説いてくれた大恩人に留まらず、素敵な人を連れて来てくれた【彼】
其の【彼】に直接お礼を言いに行きたい…と、##NAME1##の其の言い分を聞いて、スモーカーは疲れた様に、そして少し落胆した様に溜息をついた。(結局最後までアイツが出て来るのか…と。)
##NAME1##はそんなスモーカーの落胆の意味は分からないだろう。…##NAME1##が自覚して恋にオチるより早く、スモーカーは疾うに自覚して恋にオチて居た。
だから、其の事に関しての悩みにも多々ぶつかって来て居た。中々会いに来れない上に、命の危険に遭遇する確率が多い海軍としての自分の立場での事。
其れに加えて、好きになった女は、昔のヤローの事ばかりで、自分なんざ眼中にねぇんじゃねーかと、散々悩み過ぎて、んなバカな事を思う時もあった。
だから、柄にも無い事だが、我慢を、遠慮をして居たのだ。そしたらどうだ。其のバカ女は、こっちの葛藤も苦労も我慢も知らずにあっさりと言いやがった。無自覚と言えど、告白(プロポーズ)を。
「スモーカーさん、好きですよ!あ、勿論、恋愛感情の意味でっ」
そして、ほらまた。此方の馬鹿気た悩みや落胆さえも一蹴しやがった。
しかも、≪初恋なんですから、大事にして下さいね!≫と、頬を赤く染めて、至極嬉しそうに満面の笑みで、気持ちが落胆どころか浮上する様な嬉しい事を言ってくれる。
いつも引き締まって居る顔の頬の筋肉が緩み、唇の両端が上へ上がるのを止めずに、其の表情のまま、彼女の方へゆっくりと歩み出す。
(スモーカー)「…ったく、確かに、お前はイイ女だよ。」
15メートルより少し先に離れた場所に立って居る##NAME1##には聞こえない声で、ぽつり、と、スモーカーはそう呟いた。
シュガーポットに躓く。
(彼を躓かせたら、見事に遣り返された。そして2人して仲良く落っこちたんだ。たっぷりと中身の詰まったシュガーポットの中に…。)
This is the end.
(これでおしまい)
××ATOGAKI××
(懺悔と言う名の白状場)
はい、初めての方もそうでない方にも、まず最初に言いたい事は労いに対する御礼の言葉で御座居ます。
各ページに付き、最低6000字以上、最高9000字以上もある長文を6ページも読んで下さり、クソ有難う御座居ましたぁああああーー!!!
そして次に謝罪をば…。いや、本当にスイマセンでした!!
毎度の事なのですが、執筆者である私のグダグダさが今回も盛大に力を発揮してしまいました。
(脳内妄想の想定では1、2ページの予定だったのですが、やはり当てずっぽうで測った手前、無意味な当て込みだったと云う事で…。)
貴女様をこんなに長々とグダグダ作品に付き合わせてしまった事を深くお詫び申し上げます。そして、お疲れ様でした。
(打たれ弱いので受け取りは不可ですが、心の中でなら幾らでもOKですので、クソ長かったぞコノヤローと愚痴りながら、ゆっくり休んで下さいませ!)
にしても…グダグダちまちま長々と書いて行って約1ヶ月…早かったね私!(←ぇ?)ウン、早かった、早かった。遅くなんてなかった、遅くなんてなかった。(←自己暗示)
いつもは月に1、2ページの更新率なのに、其れが週に1、2ページの更新率だったもんね!…だから今回は頑張った方だと思って大目に見てやっ…褒めて下さい(←図々しい)
あぁ、なんかATOGAKI☆までグダグダと長くなって来たんで、此処いらで頑張って(←?)自粛して切り上げたいと思います。
御礼⇒謝罪⇒催促と続きましたが、最後は最初同様に御礼チョイスで。…貴女様の貴重なお時間を費やしてまで、此の作品を読んで下さり、本当に有難う御座居ましたッ!!
80 Main
Novel:一桃腐りて百桃損ず 1話 up
┗((DREAM‐封神演義))
大きくて逞しくて、ジャケットの御蔭でモコモコとして居て気持ち良い彼の肩に担がれながら、状況を漸く飲み込めた##NAME1##は、溜息を吐いた。
スモーカーが乗って来たのであろう軍艦のある港へと続く道を未だに担がれたまま通って行く×××。
「もぅ、どーしてくれるんですか。彼との約束、1つ破っちゃったじゃないですか。いや、正確には馬鹿煙さんに破られたんですけど…」
どちらにしたって、破った事には変わりない。
「止めないって約束したのに…バカー。本当に煙になって空に消えちゃえっ、グスン」
「お前はバカで鈍感で愚図な鈍間だけじゃ済まねぇで、愚鈍で不敏さも更にプラスされてーのか?」
鈍感=感じ方が鈍い事。
愚図=ハキハキせず、動作や決断を素早くしない事。
愚鈍=愚かで、頭の働きが鈍い事。
不敏=頭の働きや気の使い方が鈍い事。
「刺々しくて酷い言葉の類語をオンパレードさせないで」
きつい言葉をずらりと並ばせて総出演を聞かせてくれたスモーカーに対し、更に涙腺が緩む×××。声も少し泣き声になって居る。
「ハァーーー…」
溜息を付きたいのはこっちだ、と、一発、背中を、ドン!と殴って抗議する。
「バカか、お前は。道なんざ、別にあそこじゃなくても、極められるだろうが。」
「…………。」
×××の愛着が強かったのは、約束であり、道を究めると言う事で、あの店にも多少の愛着はあれど、それは所詮、2の次、3の次だ。
「だからテメーの問題なんざ、なんて事はねぇ。今まで俺が抱えた問題と比べればな。」
「スモーカーさんの、苦労?」
「…俺ァ、海軍だ」
「知ってる」
「好きな…惚れた女を態々危険な所に連れて行かせたくねぇ。しかも其の女は昔のヤローの事を引き摺ってばかりで、俺なんざ眼中にねぇ。」
「昔の野郎って…あっ!違うよ!ベンサム君をそーゆー風に見た事なんて一度足りともないんだから!!」
「その上、夢を持ってやがって、其の夢の店までしっかり構えてやがって、立派な形となって実現してる夢の中で、幸せそうにしてやがった。」
「………。」
「んな女を、連れて行って良い筈がねぇ。何時死んでも奇怪しくねぇ俺のモンに、傍に置いておいていい訳がねぇ。」
「………。」
「ずっとそう言い聞かせて、押し留めて来た。お前を連れて行きそうになる気持ちを。…そしたらどうだ。其のバカ女、こっちの葛藤も苦労も我慢も知らずにあっさりと言いやがった」
『私が、御嫁さんに、貰ってあげますよーっ!』
「ざけんじゃねーとも思ったが、御蔭で気が付いた…俺らしくねぇ、何弱気になってやがる、と」
コイツの夢は、俺の傍でだって叶えられる。
コイツを危険に晒したくねーなら、晒さねーよう、俺が対処して守りゃァいいだけだ。
そうだ、強くなって、死ななきゃ良い様にすりゃいい。
現実はそう甘くない?…ハッ、誰がいつ現実に甘えた?甘く見た?俺がいつ現実に負けた?屈した?
…そうだ。我慢する必要なんか、遠慮する必要なんか、何処にも存在しなかった。
「あぁ…俺も、バカだな。」
お前にそう言われるまで、らしくない事に、こんな簡単な事に、散々悩んでたんだからな。
「………スモーカー、さん」
上半身を肩から背中に洗濯物を干すような感覚で、ただ担がれていた×××だが、フン!と力を入れて、スモーカーのもう片方の肩に、上半身を起こして掛ける様にする、
そうして、片手でペチペチと、スモーカーの頬を叩く。こっちを向けと。
…本当は両手でスモーカーの両頬を挟んで振り向かせたいが、担がれた態勢で此の身を乗り出している態勢を維持する為には其れは叶わない。
「あ?」
何だと言わんばかりに振り向いたスモーカー。其のスモーカーの唇に、一瞬だけ、自分のそれを重ねて、キスをする。
「……。」
呆気にとられるスモーカーを真正面から見つめて、×××は言う。
「このキスが、1つ目の、返事。…分かりますよね?」
唐突なキスによって、立ち止まったスモーカー。そして、×××を担いで居る腕からも、力が緩んだ。
それを感じた×××は、器用にスモーカーの肩から降りて、地面に足を付ける。
そしてすぐに、スモーカーの手を取って、其の掌にキスを落とす。
「そしてこれが、2つ目の、返事です」
「…――ッ!!お、前…っ」
手の甲にするキスは、尊敬のキス。
額にするキスは、友情のキス。
頬にするキスは、厚意のキス。
瞼の上にするキスは、憧憬のキス。
腕の首にするキスは、欲望のキス。
そして…
唇にするキスは、愛情のキス。
掌にするキスは、懇願のキス。
「貴方が好きです。だから、連れて行って下さい。貴方と一緒に、何処までも。…私の歩む道を、貴方の進む道の隣に置かせて下さい。」
真っ直ぐに澄んだ瞳でスモーカーを見つめてそう告白をしながら、掌にキスをオトしたスモーカーの指を、自分の手の指に絡めて、恋人繋ぎにする。
「〜ッたく、テメーは何処まで俺の面目潰しゃぁ気が済むんだ。……プロポーズもキスも、女からが最初だなんて、俺はヘタレか、草食系男子か。」
なんて、もう片方の手で顔を覆いながら疲れた様な、少し凹んで落ち込んだ様な、情けなさを含む文句を呟いた。
肩を落胆で落とし下げながらも、絡めあって居る指には逆に力が籠った。それに微笑みながら、×××は言い返す。
「いえいえ、面目を潰すなんて滅相もない。ただ、敬意を払ったまでです」
「なんのだ」
そう問えば、更に×××の笑みが深まり、キラキラと輝いた。
「男としてだけでなく、海賊も敬礼して敬い、見習いたくなる様な、素晴らしい誘拐の強奪っぷりに、素敵な俺様理論の数々の名言台詞達にっ…!」
欲しい物は奪って、手元に置く。自分の所有物宣言。そう考えれば確かに海賊っぽい。
寧ろ、今スモーカーがした事、言った事は、海軍のそれよりも、海賊の信条に近い。
その言われた事実に、海賊嫌いのスモーカーは眉を顰めるが、自分でもそうだと思うので、言い返せないし、表情も複雑だ。
「好き勝手に思い込んでろ」
元気を取り戻して、平常心に戻り、いつも通りの敬語に戻った強かな彼女に、そう拗ねて、突っ撥(パ)ねて、話題を切り上げるので、スモーカーは精一杯だった。
「ふふふふふ、なんかこう恋人繋ぎして、左右に花壇の花が咲き乱れてる道を歩いてると、ヴァージンロードを通って居る気になりますね」
「アホか」
「アホじゃないですぅ。」
そう言って、絡めて居る指をほどいて、放そうとする。が、スモーカーが放さない。
「……。」
「…もぅ。」
「……。」
拗ねてそっぽを向く×××。そんな×××と繋いでいる手を、ぐいっ…と持ち上げ、顔の位置まで持って行く。
「?…何ですか?」
×××が不思議に思う中、口元に其の絡めた手を引き寄せ、×××の薬指に吸いつく様に強いキスをする。
「んっ…!」
チクッとした痛みが、薬指から走る。
スモーカーが唇を離した其処には、赤い痕が付いて居た。
「バージンロードも指輪も、その内しっかりやってやる。」
「…ふ〜ん、それで、此れはエンゲージリングの予約って事ですか?」
「あぁ、そうだ」
「…ふふ、ふふふふふっ。」
機嫌が直ったのか、より一層、寄り添うにスモーカーの腕に寄りかかって歩いて行く×××。
「ねぇ…さっき言った、以外の場所のキスは、狂気の沙汰といいますけど…」
「あぁ、そう言う意味があるらしいな。」
「何故、薬指に、指輪を付けるか、御存知ですか?」
「知らねぇよ」
「薬指には【聖なる誓い】と云う意味があるから、らしいですよ。」
「そうか」
「だから、さっきの項目に、付け足しときましょうよ。薬指へのキスは告白(プロポーズ)のキスって。」
「勝手に付け足しとけ」
「そうしまーす。」
「…もし、旅行するなら何処行きてーんだ?」
「旅行って、新婚旅行の事ですか?」
「他に何がある」
「んー、でもどうせ、なんかの帽子を被った海賊を追う貴方に付いて行くんですから、色々な所に行けますからね〜」
「≪麦わら≫だ。いきなりテイション下ったな」
「そりゃ、此れから沢山の島や国々を回るんですもの、其の旅と新婚旅行なんて、さして変わらない物になっちゃうじゃないですか」
「そりゃァ、そーだろうな」
「でしょう?…うーん、どうにか良い新婚旅行って味わえる場所はないものでしょうか?」
うーん、うーんと唸り出す×××。スモーカーは×××に任せる気なのか、何も考えず、ただ絡めた指を握りながら歩幅を合わせて有る居て行く。
「あーーーっ!!」
暫くして、何か思い付いた様な、閃いた様な…其れで居て大事な事を思い出した様な声を上げた。
「良い所でも思い付いたのか?」
「えぇ!此処しかないですよ、スモーカーさんっ」
力説する×××。
「何処なんだ」
さして興味無さそうに聞くスモーカー。
そんな彼が、彼女のとんでもない場所の名前が出て来て驚くまで、後5秒前
5、
「それはですね!」
4
3
2
1
「インペルダウンです!!」
ズルッ!思いっ切り肩が下がった。
「バッ、何処の世界に世界一の監獄を新婚旅行の場所に選ぶ奴が居るんだ!!」
「此処に居るじゃないですか」
「ざけんな馬鹿野郎!!!!!」
「ふざけてませんっ大真面目です!!」
「尚悪いわ!!!!」
「だって、私達は其処に赴かなきゃ行けない義務があるじゃないですか!!!」
「義務だとっ?」
「どんな形であれ、私と貴方を引き合わせてくれた彼に、報告しに行かなきゃいけないじゃないですかッ」
小さい頃から私を助けて、傍に居てくれて、守ってくれた彼。
真っ直ぐ道を教えてくれて、私が曲がらない様、真っ直ぐ歩けるようにしてくれた彼。
運命の人を赤い糸とも、恋のキューピットとなって引き合わせてくれた彼に会って報告を…。
だって、きっと、彼の事ですもの。一緒に喜んでくれて、祝ってくれる筈だもの。
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解せぬ花