イカレ女記者役の夢主ver.(MHA:敵連合夢) 04




(side女記者)







 トゥワイスこと分倍河原さんが家に加わり、私はついに家政婦をゲットした!

 分倍河原さんは本当に良い人で、このだだっ広い屋敷の掃除に洗濯など何から何までやってくれた。感動のあまり万札渡したからね。

「ありがとう分倍河原さん!!! これでなんでも好きなもの買って!!」
「お、おお…!」

 さながら札束で殴る女である。突然の給付に動転していたものの、分倍河原さんは「じゃあ、カーテンでも買い換えるか…」となんとも素敵な事を言った。高感度駄々上がりである。居間には漫画読んだりゲームしてたりするツンデレニート二人とちゃぶ台で宿題をしている伊口君、万札を渡した私、受け取った分倍河原さんと大集合。

 そう、今日は久々の休日なのだ!

「なあ、ここの問題分かんねえんだけど」
「どれどれー? あー、二次関数の不等式ね。じゃあクエッション。この問題で求めるものは?」
「定数Aの範囲?」
「正解! ブラボー!!! んでもって、こういうのを求める時は、グラフを自分で作っちゃうのが早い」
「なるほど…?」
「なんだよ水臭いな。分かるまで一緒にやろうぜ伊口君!!」
「お前、頭良かったんだな! 頭悪っ!」
「分倍河原さん偶に辛辣だよね!」

 ワイワイガヤガヤ、中卒の分倍河原さんも交えて高校の問題を解いていく。高卒の私が教えられる範囲のことはめいいっぱい教えるつもりである。楽しいからね。

「ツンデレニート共はやんないのー?」
「黙れ」
「勝手にやってろ」

 日に日に二人の態度が横柄になっていくのは何故だろうか。分からないがまあ良いだろう。伊口君の宿題を終え、昼食の時間になる。今日は足の短い巨大なテーブルが届いたので居間に置き、縁側を開け放ってそうめんパーティーだ。伊口君が麺を茹で、分倍河原さんが卵焼きやおにぎりなどを作り、私はきゅうりを叩いたり梅干しを叩いたりした。

 夏の強い日差しを和らげる緑のカーテンとチリリと揺れる風鈴が涼しい。庭も、分倍河原さんが増やしてくれた私と分倍河原さん(本体)と伊口君の四人がかりで手入れしたのでスッキリしている。最初は焼畑農業よろしく荼毘に焼き払ってもらおうとしたのだが、ぼや騒ぎになりかけたのでやめた。マジで危なかった。

「暑ぃ…」

 タンクトップ姿の伊口君が首にかけていたタオルで汗を拭う。

「暑いなー! つめてえ!」

 分倍河原さんが手を合わせて卵焼きを頬張る。私は「いただきます!」と言った後、たっぷりとお汁に漬けて、勢いよくそうめんを啜った。

「そうめんウメぇええええええ!!!」
「うるせえ」

 近くにいた死柄木に足げにされる。荼毘には殺意のこもった目を向けられたが気にするものか。美味いもんは美味いんだ。

「こうも暑いと手続きも億劫になってくるよね」
「手続き?」

 首を傾げた伊口君に笑う。

「伊口君と私の養子縁組手続きだよ。二十歳になったので可能になりました!」
『ええええええええ!?』

 伊口君と分倍河原さんの絶叫が響き渡る。死柄木と荼毘も瞼を持ち上げていた。

「そんなに驚く?」
「え、いや、だって、歳そんな離れてねえし」
「世の中には姉が弟を養うこともあるのだよ。面倒くさかったらやんなくても良いけどね」
「やったら、何か変わるのか?」
「君の場合はなんも」
「じゃあ、やんなくても良いんじゃね?」
「オッケ、そうしよ」

 あっさりと無くなった。伊口はひとまず胸を撫で下ろす。元から保護者枠ではあるし、伊口に居場所を提供してくれる恩人ではあるのだが、家族になるのはどうも想像できない。女の存在は伊口にとって、どちらかというと愉快な珍獣や大家に近かった。

「何考えてんだテメェ」

 呆れ顔で荼毘が言う。女は至って真面目だ。

「こういう選択肢もあるぜって示したかっただけ」
「意外と考えてんだなお前!」
「うーん賞賛として受け取っておくよ分倍河原さん!!」

 そうしてまた、女はそうめんを啜った。










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(side渡我寄り)








 中学一年生の秋。斉藤らヒーロー志望の学生三名に取材の依頼が来たと聞いた渡我被身子は、こっそり取材の現場を覗いていた。渡我とそう変わらない背丈の女性レポーターが、ニコニコと斉藤に質問している。雑誌の取材とあって斉藤は緊張していて、それが愛おしかったり、記者の女性が羨ましかったりした。

「すみませーん、取材良いですか?」

 昼休み、友人たちと廊下を歩いていると、二の腕に「スタッフ」の赤い腕章をつけた女性が声をかけてきた。さっき、斉藤に質問をしていた人だ。キャー、取材だって、どうするう? と騒ぐ友人たちを側に、渡我はいつも通り普通を取り繕って「どうするー?」と便乗する。

「ありがとうございます!!」

 まだOKも出していないが。

「では、斉藤くんたち三名の学校での様子をお聞かせください!」

 グイグイ聞いてくるなこの人。半分調子に乗って答える友人たちの影に隠れてやり過ごそうと思ったのだが、質問が一通り終わり解散となった時、渡我だけ呼び止められた。

「貴方だけ話聞けなかったから、念のため」

 渡されたメモを開くと電話番号と住所が書かれていた。

「もし何か教えてくれるなら、ここに電話するかここの家に来てください! 最っ高にもてなしますんで」

 取材のためとはいえ、普通初対面の人間に住所を教えるだろうか。渡我の中で女への不信感と共に別の感情が湧き上がる。

 なんだろうこの人。他に類を見ないほど、変だ。

「生きづらくないんですか?」

 つい言ってしまった。慌てて口を塞ぐも、女性は既に質問の答えを探している。

「そりゃ色々制限ありますけどね。ま、なんとかなってるかな。何、悩み? そんな時もウチに来な!  っていうかいつでも来な! 来る者拒まず去る者追わず!  ウェルカム トゥ お客さーん!!」

 じゃ、そういうことで! と女性は颯爽と去っていく。彼女が早歩きで行った先には斉藤以外の二人がおり、突撃取材をかましていた。その後ろ姿は楽しそうで、渡我は口を尖らせる。

「…変な人」

 先に行った友人が、「ヒミコー? 行くよー!」と手を振っている。渡我は剥がれた仮面を被り直して「今行くー!」と駆けて行った。




 夜。ベッドの上で渡我は自分の指の腹を噛みちぎった。

「斉藤君…」

 彼の姿を想像しながら恍惚と自分の血を啜る。甘い味に舌が止まらない。夢中になって飲んでいれば、口元はすぐに血だらけになる。それでも血を啜る手は止まらない。彼と同じになりたい。彼の血を飲みたい。恋人同士がキスするように、家族が手を繋ぐように、犬や猫を撫でるように、渡我は人の血を飲みたい。

『普通になってよ』
『アンタなんか人間じゃない』

 ーーうるさい。

 一人で発散するくらい、許してくれても良いのに、渡我の脳みその奥底にこびりついた両親の否定が繰り返し回り始める。年を重ねるたびに段々と吸血衝動に抑えが効かなくなっている気がする。それでも蓋をしなければ皆には到底受け入れられない。だから、隠して、隠して、隠して、隠し続けて。

 ーーいつまで?

 考えるだけで気が狂いそうになる。恋心までしまっておかなければいけないのか。皆と同じように出してはいけないのか。普通の女の子ってなんだろう。受け入れられたい。血を飲んでも「人でなし」だなんて言われない世界に行きたい。でもそんなものはない。

『ウェルカム トゥ お客さーん!!!』

 両親の否定の悲鳴に、女の陽気な声が混ざる。一つだけ異質に輝くその言葉が、酷く魅力的に思えた。

「……いつでも来なって、言ってたな」

 指から血を滴らせたまま、渡我は立ち上がった。









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(side分倍河原寄り)






 簡易的な契約書にサインをし、晴れて屋敷の家政婦となった分倍河原は今日も今日とて大忙しである。屋敷には母屋と離れがあり離れは物置と化していたので、日々少しずつ片付けているのだ。

 作業していると自身を拾ってくれた女やスピナーが直々手伝ってくれたり、通りすがりと荼毘や死柄木から「やってんな」などと労われたりする。その度に嬉しくなった。家は外出が自由であり何処へ行くか言わなくても良いところが助かる。義爛は分倍河原にとっては良い奴だが一応ヴィランなので、あまり一般人には言えないのだ。

 そんな義爛の元へ報告も兼ねてバーへ向かうと、義爛は紫色のサングラスの奥の目をや怪しげに細めて素直に喜んでくれた。

「そりゃあ、良かったじゃねえか。聞く限り、溢れもん同士なんだろう?」
「荼毘と死柄木は兎も角、スピナーとアイツは溢れ者じゃねえよ。…でも、俺のことを必要としてくれるんだ。良い奴らだぜ!」
「良いねえ。信頼だ」
「信頼…」
「溢れた奴らに必要なのは、結局のところ『信頼されること』だからなあ」

 ニヤリと悪どい笑みを浮かべる義爛に分倍河原は「そうだな…」と頷く。

 彼の脳裏に、こちらを向いている死柄木や荼毘、スピナー、あり得ない体幹で不可思議なポーズを取りながら奇声を上げる女が過ぎ去った。…一人化け物いなかったか? まあいい。とにかく、あの家に拾われた事は分倍河原の人生で最大の幸福と言ってもいい。


 だからこそ、分倍河原はこの日常を守りたいのだ。


 帰宅した後すぐに響いたノック音に首を傾げる。荼毘や死柄木なら何も言わずに、スピナーなら「ただいま」、女ならペチャクチャ話しながら上がり込むはずだ。なのにそのどれにも当てはまらない。取り敢えず扉を開けてみるとベージュ色の髪の可愛らしい女の子がいて、すぐに閉めた。

「…」

 もう一度、今度はそうっと開ける。そこにはやはり可愛らしい女の子がいるではないか。大きなリュックを背負う姿に「家出」の二文字が過ぎる。

「あ、え、あ、おーい!!!!」

 冷や汗が噴き出る。分倍河原は慌ててキッチンに向かい、エナドリ代わりに缶ジュースを飲みパソコンに向かう女を玄関先まで引っ張った。分倍河原ではダメなのだ。この目つきでは怖がられてしまう。今までだって散々遠巻きにされてきた。同じ轍は踏まない。

「な、なあ、あの子誰? 知ってるぜ! 誘拐? 家出だよ。お前、もしかして何か怪しいことしてるんじゃ…」
「なんでそっち!? 違うよお客さんだって! 来る者拒まず去る者追わずが家のスタイルなんですー!!」
「酒臭っ…ってお前まさか!!」

 あまりのアルコール臭に女の持っていた缶を見ると「ほろ酔◯」と書かれていた。キッチンで見た感じ開けたのはこの一缶だけだったはずだ。

 ーーコイツ、ほろ酔◯で泥酔してやがる!!

「あのー」

 開け放たれた玄関から女の子が顔を覗かせ、女がパッと顔を明るくする。

「あー! あの時の中学生! いらっしゃい、どした? 話聞く? 取材? 相談かな? まーいいや、ようこそ〜、上がって上がってー!」

 不安げな少女の肩を抱き女は意気揚々とダイニングに向かう。

「分倍河原さん、あったかいお茶出してくれない? 一人分!」
「お、おう! 任せろ!」

 分倍河原が事態を飲み込む前にダイニングで酒臭い女子会が開かれる。つまみや茶菓子を出していた分倍河原も何故か参加させられた。

 女の子は渡我被身子と言うらしい。曰く、「普通」を生きるのが辛くなり、半分は好奇心でここに家出しに来たと。女は快く渡我を受け入れ、話を聴き始めた。最初こそ緊張していた渡我だったが、明け透けな女の態度に肩の力が抜けたようで、両手で湯呑みを抱えながら、ぽつりぽつりと話す。語られる内容は、特に恋心については分倍河原には分からなかったが、必死に普通になろうと努力するその姿には胸を痛めた。

「…はー、そりゃ大変だったね」

 たった一言。へらりと笑った女は自身の腕を捲り、日焼けした肌を晒した。

「じゃ、この家でなら吸っていいよ。私有地だから。でも男共は絵面的に治安だから、まあ、私で我慢してちょ」
「……いいんですか?」
「え、あ、もしかして私のこと嫌いだった!? 嫌な奴炸裂しちゃった? ごめーん!」
「そういうわけじゃないです。ちょっと変だけど、記者さんの事好きですよ」
「マジー? ウェーイ!」

 女がハイタッチしたのは渡我ではなく分倍河原である。お悩み相談をしながらホロ酔◯片手に酔っ払った、恥の塊のような姿に分倍河原は額を抑えた。

「完全に酔っ払ってんな…。ごめんな、渡我ちゃん。こんな奴で…」
「んな事より、吸っちゃいなあ! 大丈夫。日々分倍河原さんと伊口君の料理を食べている私の血に死角はなあい! だっはははは!」
「じゃあ、ちょっとだけ」

 分倍河原がはがいじめにする側で渡我は差し出された腕に齧り付く。

「痛え! って、あんま痛くないジャーン!!」
「お前そろそろ寝ろよ…」

 暴れないよう注意しつつチラと渡我に視線をやると、彼女は嬉しそうに血を啜っていた。涙を流しながら、可愛いい笑顔で。

 ーーずっと、我慢してたんだよなあ、渡我ちゃん。

 そう思ったら自然と口を開いていた。

「……なあ、良かったら渡我ちゃんもこの家に住まねえか?」
「え?」

 顔を上げた渡我の口の血にティッシュを当てがう。

「俺、コイツに拾われた口なんだけどさ、居心地いいんだよこの家。いい奴らばっかだし、渡我ちゃんのことだって受け入れてくれるぜ? 金だってある。渡我ちゃんのやりたいことも、きっとできるよ」
「私の、やりたいこと…」

 暫くの間、渡我は俯いていた。乳白色の髪が彼女の血塗れの顔に影を落としている。次に顔を上げた時には、彼女の中にあった憂いが薄くなっていたらと、分倍河原は思った。きっと渡我は、皆の信頼を得るために無理やり自分に蓋をして生きてきた。そんな彼女が羽を伸ばして安らげる場所がここであったらいい。

 来る者拒まず、去る者追わずが、家の方針なのだから。








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(side女記者)






 土下座をしている。

 なんでかって? 中学校を卒業した後の渡我ちゃんの保護監督責任を掴み取るためだよ!!! 

「やめてください土下座だなんて!」
「あなたみたいな怪しい人に、うちの娘を預けるわけには…」
「しかし、お嬢さんから話を聞く限り、貴方方家族は一度距離と時間を置くべきだと思います!」
「違います!! 被身子はちゃんと普通の子なんです!! 普通に生きて、普通に大学に行って、働いて、そうやって幸せに!」
「僭越ながらそれはお母様の理想だと存じます! しかし被身子さんには…!!」

 め、面倒くせええええええ!!!! 一瞬投げ出してやろうかなと思ったが、隣で怯えたように縮こまる渡我ちゃんを見てはそうも言っていられない。何よりうちの家政婦、分倍河原さんの頼みなのだ。これで頼みを一蹴して分倍河原さんに出て行かれても困るし、家の敷居を跨ぐと決めた渡我ちゃんの覚悟を反子にするのは私のポリシーに反する。

 しかし面倒くせえ。

 確かに吸血衝動は普通じゃないし、自分の子供がそんな悍ましいものを持っていたら矯正するし、抑えるように口を酸っぱくして言う。きっと発散方法も模索して、どうにか緩和できないか模索して、悩んで悩んで、そうして行き着いたのが「押さえ込む事」だったんだろうな。だって理解できないじゃん、「愛情表現で人を傷つけます」なんて。この家族は親と子で人間的な相性が悪い気がする。かといってこっちが良いかと聞かれれば疑問だが、少なくとも許容できるだけの金と器は持っているつもりだ。

 理解できない事は、受け入れないことと同義じゃない。

 だから私は来るも去るも自由にしてんだよ。そっちの方が面白いから。つまりはエゴね。

「もう帰ってください!!!」

 第一ラウンド、敗退。悲しそうな顔で見送ってくれる渡我ちゃんを背後に一時帰宅。

「どうだった!?」

 駆け寄ってきた分倍河原さんに首を横に降り、スマホを取り出す。

「と言うわけで助っ人用意して第二ラウンドやってくるわ」
「お金積まれたんで良いですよ」
「誰!?」

 驚く分倍河原さん。召喚したのは高校時代までお世話になった元保護者代理人の弁護士の人である。彼はメガネを掛け直すとニヒルに笑った。

 結果だけ言おう。

 第二ラウンド、勝利!! winer弁護士!!!

 児相を介して親御さんを説得し、ついでに渡我ちゃんの「この家を出たい」の言質をゲット。あっという間に養子縁組を私と渡我ちゃんに組ませ、弁護士は依頼料を受け取って爽やかに帰っていった。親御さんは終始決まり悪そうな顔をしていたけれど彼らに罪はない。ただウチの弁護士が優秀すぎただけである。

 こちらをスルーして分倍河原さんと両手を繋ぎ、はしゃぎ合う渡我ちゃんたちに一抹の寂しさを覚えつつ屋敷の中へ入る。そうだよね、君たちが一番仲良いもんね。この私を差し置いて。息を吐いた瞬間、どっと疲れが肩に乗った。

「…お疲れ」

 麦茶。涙がぶわりと弾けた。

「い、伊口くうううん!! 心の共よグボアっ!!!」

 勢いよく麦茶を飲んだらめんつゆだった。四肢を地面につけて項垂れる私に死柄木と荼毘が爆笑する。伊口君を見ると目を逸らされた。おのれ、おおかた死柄木に相談されたな! ここにも仲の良いコンビが!! 

「許さんぞ貴様らあああああ!!」

 「赫灼熱拳!! プルスウルトラあ!」と叫びながらたまたま近くにいた死柄木に向かって拳を振り上げる。安心してほしい。拳には私の個性で生み出した透明水餃子生物のギョーザと、フワモコ毛玉のウサ公をくっつけてある。殴ったとしてもふわふわぷるんっで珍妙な気分になるだけだ。死柄木は素早い身のこなしで私の拳を避けたかと思うと、背後に回って逆に肘鉄を落としやがった。この衝撃はまごうことなく肘鉄だ。間違いない。

 再び地面に伏す。「くっ…負けた…この私が……!」と敗れた歴戦の兵士ごっこをしても誰も乗ってくれず、「早く中入れよ」と伊口君に言われる始末で、私はなんだか無性に哀愁を感じた。

 とにかく、これにて渡我ちゃんが我が家に加わるのは確定となった。死柄木と荼毘は相変わらず訳知り顔でいるし、伊口君と分倍河原さん、渡我ちゃんは早速スイパラに行く予定を立てているし、なんだかんだ言って仲良さげである。気になることといえば最近死柄木の外出が増えたことくらいだろうか。長い時には一ヶ月帰ってこない事もあり、謎は深まるばかり。

 ま、詮索はしないけどね。勝手になんでもやってちょ。



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解せぬ花