神野の悪夢編 11




「ピーピー!」「ピロロロロロロ!」

「わっ!どうしたんですか……仁くん?」

「カナリア・クリームね。」



トガとスピナーのイチャイチャ(?)に慌てたトゥワイスが、説明をしていない(本人にとっては)未知のお菓子を食べてしまったらしい。

そのお菓子…、摩耶曰く、カナリア・クリームを食べ、大きなカナリアに変身した姿で、トゥワイスは、トガとスピナーの2人の間に割って入る。



「ちょっと!これ、ちゃんと元に戻るの!?」



マグネたちがそんな感じでハラハラしながら騒いでる1分以内の間に、全ての羽が抜けて、元のトゥワイスに戻った。



「この羽、誰が掃除すると思ってるんですか?」



安心したのも束の間、今度は、黒霧が床に散乱する大量の羽を見て、嘆きだした。



「摩耶ちゃんは、普通に私に接してくれるんですね。」

「うん?」

「私が血を好きなことを知っても、咎めませんね。いえ、それどころか、私を異常者としても見ていません。もしかして、摩耶ちゃんも血が好きなんですか!?」

「つーか、魔法界はトガのようなイカレた連中が多いのかよ?なんで血関連の菓子がこんなにあるんだ?」

「いや、魔法界うんぬん以前に、血液を食材として利用する文化は、こっちの世界にも存在するじゃない。ほら、ブラックプディングとか食べ物であるでしょ?」

「違う。そうだが、そうじゃない」



ズレた解答をする摩耶に弔がツッコミを入れる。



「まぁ、私はスティッキー・トフィー・プディングの方が好きだけれど。」

「あぁ、あのブタのもとか。」

「あ゛ぁん?」



荼毘のあまりに腹立つ発言を聞き流せなかった摩耶の眉がピクリと動き、露骨に不機嫌な声色が口から飛び出る。



「そう。そんなに荼毘は、“ゴキブリ・ゴソゴソ豆板”が良いのね?」



自由に好き勝手する集団と魔法のお菓子という掛け合わせのこの空間だからこそ、作り出されてしまった非常にカオスな状況の中で、私たちは夢中でぎゃあぎゃあと騒いで、一夜を明かした。



しかし、摩耶が帰る時、ジニー直伝のコウモリ鼻くその呪いを敵連合にかける。

対象相手の鼻糞が大きなコウモリ(の羽もどき?)になって、鼻からコウモリを飛び出させて顔を覆う呪いだ。



「相手の顔に、コウモリの羽が生えた鼻くそが飛びかかる」

「勝己と出久に害を成したことを許したわけじゃないのよ。」

「意図せずとも、誰も貴方達は殺さなかった。自分のその“善良さ”に感謝するのね、それだけで済んだんだから。」

「善良?ハッ!甘さの間違いじゃねェのか?」

「いいえ、“善良”で合ってるわよ。」

「んじゃ、もし俺たちの誰かが、ガキ共や先公やヒーローを殺っていたなら、この場所を通報するか?」

「しないし、出来ないわね。」

「あァ、荼毘が居るもんな。なら、俺たちを捕まえたいか?」

「それも、しないし、出来ないわ。」

「……殺したいか?俺たちを」

「それも、しないし、出来ないわ。」

「俺たちは、危険だぜ?」

「えぇ、殺人者たちらしいわね。…殺すところを見てはいないけれど。」

「そうだ、俺たちは殺人者の集団だ。」

「でも、私は違うわ。私は、貴方達と同じであってはならない。だから、勧誘に応じることは出来ないわ。」

「……不自由だな。」

「ええ。じれったいけれど、それが“私たち”の学んだことなの。」

「俺たちは、これからも殺し続ける。」

「……。」

「そうして、進んでいく。」

「そう。」

「せいぜい、見てろ。それで、後悔するといいさ。」



それは、彼らを阻止しなかったことか、それとも……勧誘を断ったことに対してかは、摩耶には分からない。けれども、言えることは、ただ1つ。



「さようなら。」



もう、振り向きはしなかった。



「ありゃりゃ、フラれちゃったね。」

「残念です。折角、仲良くなれたと思ったのに。」

「残念だったな、ドンマイだぜ!な?荼毘!」「ザマァみろ!」

「なんで俺に振る。」

「「「「……ドンマイ。」」」」

「マージで燃やすぞ」










―――― ★ ――――











爆豪side



また漫画を貸してやってもよかった。

またクソ甘いもんを食わされに外に連れられたってよかった。

くだらねーことで口喧嘩してやったってよかった。

不機嫌な俺の顔に睨みを効かせる女の顔を見てやったってよかった。

俺にとってはくだらないと思っていたはずの時間が、全部、俺にとっての手放したくない日々だった。



「ッソヤローがァ……!」



悔しげに吐き出された言葉の後に、弱々しく小さな声で「帰ってこいや、半々クソブス女」と懇願の言葉を、悪態をつきながら、爆豪は吐き出した。










―――― ★ ――――











夢主side



いつか必ず、帰れることを、ずっと信じている。

魔法界が恋しくて独り泣きながら眠る夜もある。

自分で自分を抱き締めてやりながら、いつもいつも想っている。


吼えメールはなくなってしまったけれど、皆の声は確りと耳に今もちゃんと残っている。

なにより、その証拠に、この手の中には、不死鳥のフォークスがいる。夢でもなんでもない。紛れもない現実だ。



「(だからまた、絶対に再会できる。)」



だからその日まで、自分は生きて、あの子供たちとの“約束”をしっかり守らなくては。


こちらに来てから随分と長い月日が流れた。

向こうでの幼い頃に、近所の老夫婦に教えてもらった子守歌も、魔法界で流行った喜びの歌も忘れた。



「(でも、別に構わない。ホグワーツの校歌は覚えているから。)」



辛い、苦しい、やりきれない。

何度も何度もくじけそうになりながら、それでも、摩耶は毎日想いを馳せる。祈る。願い続けている。



どうか無事で。

どうか無事に。

どうかまた会えますように。

どうか現実で会えますように。

どうか魔法界に帰れますように。

どうか神様、ダンブルドア様……―――――。

- 138 -

*前次#


ページ:








解せぬ花