迷子と出会う2




バシッと大きな音がして、どこからともなく摩耶と燈矢が、轟の表札を掲げている立派な日本家屋の門の前に現れた。



「俺ん家だ…。」



摩耶から手を離し、よろけながらも、燈矢は家を見つめる。

少し、顔色が悪い。もしかしたら、酔ったのだろうか?煙突飛行粉(フルーパウダー)や移動キー(ポートキー)程でなくても、慣れないとクラクラするよね。と、摩耶は思いやった。


なんやかんや帰れなかった。



「お前に助けられたことは感謝してる。でも、もう、俺のことは放っておいて」

「…………ふざけんじゃ、ないわよ!!」



がつッ



摩耶は力任せに燈矢の腹にストレートパンチで殴る。

体が幼児化してなければ、横っ面(ヨコッツラ)を殴っていただろう。



「ぐふっッ!?」



吹っ飛んだり倒れたりはしなかったものの、くの字になった燈矢の胸ぐらを掴み、気の収まらないままにグラグラと揺さぶる。



「なぁにが『失敗作の俺は死んでもいいんだ』だ!自分を憐れんでウジウジしてる暇があったら、とっとと個性を取り戻して、正々堂々真っ向から父親にも他の家族にもぶつかって、大喧嘩してでも、見てもらいなさいよ!!」



呆然と目を見張っている燈矢だったが、段々とその目が吊り上がっていく。



「と、言う訳で、とっとと帰りなさい!クソガキ!!…ったたたたた!」



言い募(ツノ)る間に、殴った手を掴まれ、手首に思いっきり噛みつかれる。

胸ぐらを掴んでたもう片方の手は自然とほどけた。

その途端、どんっ!と肩を押されて、やすやすと転がされた。



「誰が『クソガキ』だよ、テメェの方がクソガキだろ!このチビ!!」

「あっ、……アンタにチビって言われたくない!それに私は大人よ!こんな見た目してるけど!!」

「こっちだって、テメェにチビって言われたかァねェよ!見た目まで詐称しやがって、そーゆー趣味かァ!?このロリババア!!魔女なら魔女らしく、しわくちゃのババアの姿のままでいろよ!」

「ひっどい偏見だからね!?ソレ!!」



摩耶の襟首を掴まえんと、燈矢が腕を伸ばす。

摩耶はそれを紙一重(カミヒトエ)で躱(カワ)して素早く立ち上がる。

そして、燈矢にタックルをかけた。

今度は燈矢が転がされた。

摩耶の少女の体では、不健康で瘦せ細ったといえど、青年の体の燈矢との対格差までは補いきれない。

故(ユエ)に、摩耶の攻撃方法は魔法を使わなければ、体当たり程度。

もしくは不意打ちのパンチやキックの攻撃か、噛みつくか目つぶし等の急所攻撃だが、そんなのが2度も通じる程、燈矢は甘くないので、実行は出来ないだろう。



「俺はエンデヴァーに鍛えられて、それ以降も1人でも訓練を毎日毎日欠かさずして来たんだ!見くびってもらっちゃァ困るね!!」

「はぁ!?こっちは命懸けの試練を何度となく潜り抜けて来てんのよ!自惚(ウヌボ)れるのも大概(タイガイ)にしなさい!!」



殴る、蹴る、ぶつかる、倒れる。壮絶なる格闘技。

更には無意味な台詞(セリフ)をギャアギャアと撒き散らしながら、2人は大喧嘩を繰り広げた。

手加減ナシで闘う2人は、お互いに目的をすっかり忘れている。それはもうパーフェクトなまでに。



「〜〜〜〜〜っ!いい加減にしなさいよ!!」




魔法省から退学通知、いや、それよりも怖い…マクゴナガル先生がいたら、怒りの雷が落ちて、大幅にグリフィンドールは減点されていただろう。

しかし、それは今更な話だ。“こちら”に来てからは。

故に…、


燈矢の顔に向かって突きつけた摩耶の杖先から、火花が数個パチパチ!と飛んだ。

燈矢もソレに反応して、両手に炎を出そうとして構えるが、摩耶の方が早かった。



「モビリコーパス、体よ動け!」



人や動物の体を宙に浮かせて移動させるための呪文を唱える。

すると、燈矢の手首、首、膝に、見えない糸が取りつけられたように、体を引っ張り上げられ、床から数センチ上に吊るし上げられた。




「はぁ?!おい、おろせよ!」



まさしく宙吊(チュウヅ)りだ。

その状態のまま、摩耶は歩き始める。

その様は蜘蛛の巣に捕まった獲物か、それとも哀れな操り人形か、はたまた…、子供が連れて歩く風船か。







ライス・プディング:米を使うプディングで、甘いおかゆといったところ。ミルク粥。

日本人の俺からしたら、日本食への冒涜にしか思えない。それか、塩じゃなくて砂糖で握ってしまった、おにぎりレベルの失敗作。

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解せぬ花