きのこたけのこ戦争

「あっ!」

トイレからの帰り道、俺は特に何も考えずに廊下を歩いていた。歩いていたら目立つ赤いおかっぱの奴に声をかけられた。ただの岳人だけど。

「お前また亮と喧嘩しただろ!」
「あ?」
「うわ、あいつもボロボロだったけど珍しくお前もボロボロじゃん。」
「デコの一発が一番効いた。」
「あいつ頭硬えからなあ。」

幼馴染との喧嘩を怒られるのかと思えば呆れた顔で傷だらけの顔を見られた。わざわざ宍戸から受けた傷を心配して見に来たのだろうか。俺が宍戸なんかに負けるはずないのに。

俺は3年間宍戸のやつと同じクラスだった。お互い人見知りする性格でもなく壁を作る訳でもなかったから打ち解けるのは早かった。それなりに喋るし連むがどうにも馬が合わないのか、高い頻度で喧嘩が起こる。しかもそれが口喧嘩なんて可愛いもので済まず高確率で殴り合いに発展する。前の喧嘩の傷が癒える前にまた喧嘩。それを繰り返すせいで俺たちには傷が絶えなかった。

話は変わるが俺と宍戸は高確率で二人でいることが多い。寝ているジローを運送することを入れるなら正確には3人。クラスが同じな上に3年間一緒の宍戸とそれの幼馴染のジローで固まるのは割と必然であった。更に他クラスであるが2人と仲の良い岳人と仲良くなるのに時間は掛からず殆どのテニス部の奴らと知り合い以上の関係になっていた。そして奴らは俺と宍戸が喧嘩ばっかりなのも知っていた。

「んで、今回は何が原因なんだよ。」
「俺はたけのこなんだよ。」
「は?」
「あいつきのこって言いやがった…!」
「しょ、しょうもねえなぁ……。」

しょうもないとは何だ。重要だろうが。たけのこときのこ戦争の問題は未だ解決できない世界的問題だぞ。だから俺たちは校内でプチ戦争を起こしたんだからな。

「何でお前らそんなに合わねえし喧嘩する癖に仲良いわけ?3年経っても理解できねえんだけど。」
「あいつ朝怒ってた?」
「いや、ケロッとした顔でたけのこ食ってた。」
「ちなみに俺今日のおやつきのこ。」
「あ、そう。」
「そういう所が好き。」
「はぁ?……お前ら本当に意味わかんねえ。」