犬猿カップル

あいつは本当に愚図で馬鹿で愚かだ。

「堂園君。」
「何かな……って、なんだお前か。」
「誰だと思ったの?」
「誰かは知らねえけどまあ堂園君なんて呼び方お前がするとは思わなかったからな。気色悪いからやめろ。」
「堂園も猫被るのやめた方がいいよ。」
「余計なお世話だしテメエには関係ねえだろ。」
「まあ私の前じゃ猫被んないよね。」
「お前に猫被っても無駄だからな。」
「そうだね。」



薄っぺらい紙を持ちながら何故俺がこんな事の為に動かねばならないと用事を頼んできた教師に怒りを覚える。

「苗字名前ねぇ…。」

同じクラスのこいつは確か昨日は休んでいて、配布したプリントを教師が渡すのが面倒だからとたまたま通りかかった俺に押し付けてきた。苗字は特に目立つ事もないがだからといって他のやつと同じ馬鹿みたいな人間ではない、そんな雰囲気のやつ。それ以上のことを俺は知らない。つまり関わりが深いわけではないし関わりたくもない。そんな俺の都合なんて知らない教師に与えられたプリントを今すぐ手放したくて仕方がない。それでも教師にいい顔をして損はしないわけだし苗字に恩を売っておくのも悪くないだろう。窓際の席に座り外を眺めている苗字に近寄る。

「苗字さん。これ、先生から預かってたプリント。昨日休んでたでしょ?」

愛想良く、明るく。大抵のやつはこれで騙される。ほら早く受け取れそして俺に少しでも恩を感じろ。なのになかなかこの女はプリントを受け取らない。

「…どうかした?」
「堂園、だよね。」
「もう半年ぐらい一緒のクラスなんだけど名前覚えてないの?傷つくなぁ。」



「気持ち悪いから猫被んないでくれない。」



「………は?」
「だから気持ち悪いんだって。その愛想笑い。やめてくれる?」



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カップルになるまでが長いから没

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