※本家より谷原の発言が厳しいです。

その日は偶々機嫌が少しだけ悪かった。偶々今日寝坊して、偶々抜き打ちテストがあって、偶々財布を忘れて何をしても上手くいかない、そう言う日だったから。だから偶々見かけた嫌いな元同級生を見かけてしまっても無視出来ず、腹いせで絡みに行った。ただそれだけ。あの元同級生が横に女を連れてるのが虫の居所が悪い俺には許せなかった。例えそこに理由なんて無くても。



「何?元気だった?」
「あぁ。」
「何だよ〜、背伸びたじゃん。」
「谷原くんたちも元気そ…、」
「お前に名前呼ばれっと胸クソ悪いーんだよな。」

何でお前に呼ばれないといけないんだ。アイツが俺を呼ばないのに。

「高校入って調子ついてるワケ?バカじゃん?」

アイツは何を言ってもお前の味方で。

「おまえ自分より弱い女に荷物とか持たせてんの?」
「やめろよ谷原〜、カノジョかもしんないだろ〜。いいもん手に入れたじゃん。よかったね宮村。」

何でお前が俺にないものを持ってるんだよ。

「苗字ともまだ仲良くやってんの?」
「っ、名前は…!」
「何必死になってんのキモいわ。」
「話終わった?」
「ねぇねぇ、宮村のカノジョ?」
「こいつ知ってる?中学ん時すげー暗かったんだぜ。あー、苗字も知ってる?あいつさぁ、」
「話が終わったかって聞いてんのよ、私が。」

全部、全部宮村のせいだ。



「谷原は…何?何かあの〜格闘技とか始めたの?」

まさか女子に殴られるなんて誰が思うだろうか。進藤と約束していたファミレスに行くと第一声がこれだ。いっそ格闘技を始めた方がいいかもしれない。今のままだとそのうち死ぬ。

「宮村のさぁ…あれ…何だろう、多分彼女だと思うんだけど進藤…知ってる?」
「宮村の?どうせまた宮村にちょっかい出したんだろ〜。もうやめた方がいーって。今の宮村の防御力なめんなよ…。」

進藤は俺が宮村に絡んでも何も言わない。今みたいに興味無さそうに言うぐらいだ。アイツみたいには言わない。

「あのさぁ…。」
「んー?」
「………。」
「何、苗字?苗字の事まで突っかかったん?」
「…別に、そう言う訳じゃ……。」
「仲直りしたんだから放って置いてやれよ〜。やっと最近楽しそうなんだからさ。」

何だ、それ。

「何だよ、最近って…。」
「中学ん時も俺ら以外そんな仲良くなかったじゃん苗字って。他の奴らとも話すけどそれだけ、みたいな。」

確かに、俺や進藤…あと宮村以外と積極的に話していた覚えはない。自分の懐に入れた奴とそれ以外の奴らで扱いの差が顕著だった。色んなやつに好かれて気にされてるのにそれを無視するようなやつだ。今思えば何で俺なんかと仲良くしていたのか。何で俺を。

「まあ友達も増えたみたいで楽しそうよ。」
「ふーん…。」
「……納得いかないなら今からでも仲直りすれば?あん時も今も多少素直になれば友達ぐらいにはなれるんじゃね?」」
「べっ、つに……そう言う訳じゃねえけど……。そもそももう俺の顔なんか見たくねえだろ。」
「それは苗字にしか分かんないよ。」
「……。」
「本当、お前ら2人揃って面倒だな。」

そうやって笑う進藤には俺がただビビってるだけなのはバレているんだろう。

「はぁ…、ポテト来ねえなぁ…。」