オフ

「宮村ってぶりっ子だよなー。」

そう言う進藤に対して宮村の顔は分かりやすく引いていた。進藤の横に座る俺も同じような顔をしているだろう。

「何で石川くんとか桐校の同級生の前だと猫かぶるの?」
「あ〜、まあ確かに若干大人しいよな。」
「別に猫なんかかぶってないし。」
「うっそだぁ〜。お前中学の時、誰かのこと『君』『さん』なんて言ってなかったしな。」
「それは…アレだよ、大人になったんだよ。俺が。」

放課後、俺と進藤と宮村は揃ってワックに来ていた。宮村の大人になった発言にイラッとした進藤が宮村のてりやきを食べ尽くす横で俺は宮村のポテトを摘んだ。進藤の言わんとする事は分からない事でも無いのだ。確かに俺たちに対しては砕けた口調であったり暴言が口から出るが、学校では暴言が出ない。ふざけていても進藤に対して言うような切れ味のある暴言ではない。でもそれは宮村の処世術だし俺たちがとやかく言う事でもないと思うが。

「ばッ!!進藤それ俺のてりやき名前もポテト俺のやつそれ!!」
「あ〜毒味、毒味。」
「良い塩加減。」
「うまいと分かったら食うのをやめろ!!」

やめられない止まらない。ポテトってそういうもんだろ。

「だって宮村が良い子ぶるんだもん!!」
「全部食った…。」
「残ってるって。」
「カスだけじゃん!」
「ひどくね!?」
「何!?進藤何!?俺はどうすればいいの!?」
「俺にも優しくして下さあい!!」

相変わらず進藤はキショかった。そんなのでも未だに連んでくれる宮村と俺に感謝すべきだと思う。てか別に宮村がお前に優しくする理由ないだろ、なぁ?

「すいませんクーポン使えます?」
「宮村ポテト〜。」
「え、まだ食べるの?」
「まだまだ成長期ですから。」

追加のポテトも来てさっきの話が終わったのかと思えば、今日は進藤のテンションがぶっ壊れているのかグズグズと落ち込み出した。宮村の肩を揺さぶって今はちかちゃんの事で嘆いている。キショい。そもそも今日は最初からキショかったな。そんな進藤は宮村に押し付けて俺はひたすらにポテトを貪り食べていた。

「そんでさあ〜ちかがさあ〜最近ウチ来てもすぐ帰っちゃうんだよお〜。」
「しまいには俺より香取のがおもしろいって!」
「マジで?俺、中居派。」
「キムタク一択。」
「キムタクはおもしろいとかじゃないじゃん!?カッコいいけど!!勝てる訳ないじゃん!!」
「キムタクに勝とうとする事自体が烏滸がましい。」
「酷くね!?」
「そもそも進藤がジャニーズと張り合おうってのが間違ってる。名前ならともかく。」
「宮村も負けてないぞ。」
「俺は!?」
「「は?調子に乗るな。」」
「スイマセンデシタ。」

落ち込んでる進藤は捨て置いて俺と宮村はジャニーズ談義で盛り上がっていく。テレビで見る程度の知識しかないが。同じ男としての憧れは当たり前にある。

俺と宮村の白熱するジャニーズ談義に復活した進藤も混ざり出した頃、通路に見覚えのある色が見えた。

「あれ石川だ。」
「あっ石川くん!!」
「石川くんはV6でいうと誰派!?」
「キンキは!?」
「敢えて言うなら堂本かな。」
「苗字ってそう言うやつだよな。」