居候

「いーずーみーくーん。」

進藤の声は離れたリビングに居る俺にまで聞こえてきた。全く朝から元気な事だ。

「苗字くん来るの久しぶりねぇ。」
「すみません朝から。」
「いいのよ〜、いっくん休みの日放っておいたら起きないから。」
「あ、手伝いますよ。」

伊織さんから朝ご飯のための食器を受け取り並べる。伊織さん、宮村の母さん。昔初めて会った時に宮村のおばさん呼びしたら笑っていたがめちゃくちゃ怖いオーラ出されたのでその時から伊織さんと呼ばせて頂いてる。味噌汁の良い匂いが食欲を刺激する。というか渡されたから並べたけどこれ俺と進藤の分もあるな。ありがとうございます伊織さん。いつもお世話になってます。


スパーン!!!!


「起きたみたいですね。」
「そうねえ。」

今の音は恐らく宮村が進藤を引っ叩いた音だろう。良い音だ。

「ちょっと洗濯物回してくるわね。」
「はーい。卵焼きは任せて下さい。」

久しぶりとは言え中学の頃からお世話になっていれば卵焼きを焼くのもお手の物だ。というか俺を無理矢理連れてきたくせに進藤は俺を放置か。

「伊澄お風呂入ったみたい。先に食べちゃいましょ。」
「そうですねぇ。あ、卵焼き食べて下さい。」
「あら美味しい。」

和やかな朝食タイムが進む中バタバタと廊下を走る音が聞こえた。すぐ様子を見に行った伊織さんが廊下が濡れてると怒っているのも聞こえる。本当朝から元気だな。というか朝ご飯冷めるけどいいのか。自分の食器を片付けてぼちぼち部屋に向かうとする。

「あっそーう、そんなこと言っていいのかなぁ〜。実はもう一人来てるんだよね〜。」

部屋の前に着くと聞こえるそんな声。入りにくいったらありゃしない。

「堀さぁーん!」

本当に入りにくいな。

「お前いい加減にしろよ!」

腹が立った勢いそのまま部屋に入り揶揄われた宮村と共に進藤を殴る。朝から電話で起こされて連れて来られたのに放置された人間の身にもなれ。朝ご飯は大変美味しかったです。

「名前!?」
「おはよ。」
「え!?いつから来てたの!?」
「進藤と一緒に来て伊織さんと朝飯食ってた。宮村のもう冷めてるぞ。」
「友達と母親が二人でご飯食べてる状況って何!?」
「え、苗字俺のは?」
「何でお前の分があると思うの?」
「何でないの?」
「お前人様の家に朝からお邪魔して手伝いもせずに朝ご飯があると思ってんのか。」
「あつかま進藤何?いつ帰んの?」
「心の傷が治ったら…。」

拗ねて部屋の真ん中に寝転んでぶつぶつ何か呟くのはハッキリ言って気持ち悪いので帰って欲しい。と言うか早く目的を果たせ。俺を巻き込んでおいて一向に話は進んでない。

「宮村くーん!!」
「うわあもううう!!何だよ!!」
「うるさい。」
「しばらく泊めてください…。」
「は?」
「父とケンカした…。」
「は?え?」
「らしいよ。んで俺も朝から突撃された。」
「は?え?マジ…?」