おはようから始めよう
    お邪魔します

    あのあと教室で色々と雲雀さんの事を教えてもらった。並盛という町自体を雲雀さんが纏めているらしくこの町で最強らしい。更には人が共にいる事を群れると認識しそれを許さない。勿論校則にも厳しくそれらを破るとトンファーと呼ばれるあの鉄の棒でボコボコにされるのだと。

    俺はなんて町に来てしまったんだ。そしてなんて学校に転入して来てしまったんだ。いやはや恐ろしい。しかし普通に生活している分には支障はないのだろうし無差別というわけでもなさそうだ。ならば少し気をつけていれば別に問題はないだろう。

    「名前〜!」
    「うわっと。」
    「コラ、ランボ!危ないだろ!」
    「これぐらい大丈夫だよツナ。」

    俺の悶々とした思考なんて御構い無しで、背中にランボが飛びついた衝撃に思考は引っ張り戻される。落ちないように支えてやるとそのまま肩にまでよじ登って来て、顔のそばにモコモコとしたランボの髪が当たっている。ツナがハラハラした目で見ているが小さくて軽いランボを落とすほど非力ではないし、大人しく腕に収まってくれているので大丈夫だろう。

    「ごめんね、家に来てもらっちゃって。」
    「いいよいいよ、むしろお邪魔します。」
    「ランボさんと遊ぶんだもんねー!」
    「ランボダケズルイ!」
    「名前にぃ、僕とも遊んでよ〜。」
    「じゃあ皆んなで遊ぶか!」

    今更だが現在放課後、俺はツナの家に来ていた。何でもランボが大層俺を気に入ったらしく昨日ツナが家に帰りランボが起きた時に俺のことを気にしていたらしく、今日の朝には連れて来いとうるさかったらしい。そして遊びに来ないかと尋ねられ素直に来たわけだ。来てみるとランボ以外にもたどたどしい日本語が特徴な小さな女の子やランボ達よりは少し大きな男の子が居た。イーピンとフゥ太と言うらしいこの子達もランボに負けず劣らず元気であった。人見知りをしない子達で初めましての俺にも既に懐いてくれている。

    「人気者だね名前。」
    「いい子だねみんな。きっとお兄ちゃんがいい人なんだろうね。」

    いくら子供と言っても3人を相手するのはなかなか体力のいる事だった。疲れた俺はツナとリビングでちょっとした休憩中である。

    「お兄ちゃん?」
    「面倒、ずっと見てるんでしょお兄ちゃん。」
    「お、俺!?いや何もしてないしお兄ちゃんって柄でもないって!」

    腕を振って否定するツナにバタバタと騒がしく階段を降りる音が響く。

    「ツナにぃも遊ぼうよ!」
    「仕方ないから遊んでやってもいいもんね!」
    「熱烈歓迎!」
    「うわ、待てって。行くから引っ張るな!」

    グイグイと引っ張る子供達をなんとか抑え先に部屋に戻すと再びツナと俺の二人っきりだった。横で呆れたように溜息を吐く音が聞こえるが顔を見れば本気で嫌がっていないのが一目瞭然だ。

    「お兄ちゃんだよ、ツナは。」

    さっきとは違って照れたように笑うツナを連れて二階に戻る。あまり遅くなるとまたうるさくなりそうだ。案の定扉の前に着くと中は騒がしくツナは開けるのを躊躇っていた。しかし躊躇っている時間もランボたちをうるさくさせるだけなので俺は扉を勢いよく開ける。

    「こらー、うるさい…っ!?」
    「名前っ!!」

    扉を開けた瞬間目の前に迫る何か。咄嗟に避けることも出来ずツナの声はどこか遠くに聞こえる。呆然とした意識は発生源不明の煙に紛れていく。目の前に迫った何かがぶつかる痛みはいつまで経ってもやってこない。そして段々と煙は消えて行くが目の前に広がっていたのはツナの部屋、いや室内ですらなかった。俺に分かるのは外という事だけでここが並盛なのかさえ分からなかった。

    「君…。」

    驚き、焦り、やら色んな感情が入り乱れて周りに人が居ることに気がつかなかった。声の主を探すと俺の横にはスーツを着た身長の高い男が立っていた。

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