一晩寝て起きたらムカムカする気持ちは収まってた。いつも通り制服に袖を通してジェームズ達と大広間に向かう。オートミールを食べようと口を開くと、目の前に座っていたジェームズが「あ」と声を出した。


「おはようエバンズ!!今日も朝から美しい君に出会えるなんて素晴らしいよ!!やっぱり僕達は運命の赤い糸で結ばれてるんだね!!」


ガタッと立ち上がり、丁度俺の後ろを通っていたらしいエバンズに声をかける。ああ、いつものか。と気にせずオートミールを口に入れた。うん、美味い。


「私は朝から最悪な気分よポッター!!私に話しかけないでって言ってるでしょう!?イヴ、行きましょ」

「アスターもおはよう!」

「へっ?あ、ああ、おはようポッター」

「はぁ!?うっ、ゲッホゲッホ!!」


突然の出来事にオートミールが気道に入り噎せてしまう。厨二病女が、あの厨二病女が「おはようポッター」って!!挨拶したジェームズも目を丸く開いて厨二病女を凝視していた。


「ポッター、貴方どうして…」

「リリー!」


照れ隠しなのか、厨二病女はジェームズと同じ顔をして固まるエバンズを引きずって遠くの席に座ってしまった。


「シリウス、聞いた?あの厨…アスターが、僕の事毛玉じゃなくてポッターって」

「ああ」

「ほらね、僕の言った通りだったでしょ?」


俺の隣に座ったリーマスが、フルーツサンドを頬張りながら俺の顔を覗き込む。少しニヤつき顔なのがムカつく。


「シリウスも頑張って」

「何をだよ」

「分かってるくせに」


謎のエールを送ってきたジェームズを睨み付けるがジェームズは痛くも痒くもないらしい。肩を竦めた後「今日も可愛いな」「あ、今笑った」とエバンズ実況を始めた。





「僕とリーマスが名前で呼ばれてるのにシリウスだけ呼ばれてないのは不公平だよね!」とジェームズが言い出した事により、俺達は厨二病女を探す事になった。しかし、厨二病女は授業に姿を見せず、昼食にも来なかった。
(ピーターは厨二病女と関わりが無いから頭数に入れられてないらしい)


「だああ、なんで厨二病女に会えないんだよ!」

「完全に避けられてるね」

「ついに嫌われたんじゃない?ドンマイ!」

「うるせえ!」

「ぼ、僕さっきトイレに行こうとした時にアスターが図書館に行くのを見かけたよ」

「ナイスだピーター!じゃあ図書館に行けば会えるかもね!シリウス、行くよ!」

「あっ、ちょ、ジェームズ!!」


図書館へと走り出すジェームズを慌てて追いかける。が、階段を降りてすぐ立ち止まったジェームズの背中と衝突してしまった。


「いって!急に立ち止まるなよジェームズ」

「ごめんごめん。でも、ほら」


ジェームズがずれ、俺の視界に飛び込んできたのはレギュラスとスニベルスの姿。図書館からの帰りか、2人とも本を抱えている。


「兄さん…」

「邪魔だポッター、そこをどけ」


俺の姿を見て驚き顔をこわばらせるレギュラスと、杖を取り出し臨戦態勢に入るスニベルス。ジェームズはチラッと俺に視線を向けた後、好戦的な笑みを浮かべて2人に杖を向けた。


「こんな言葉知らない?ここで会ったが百年目って!エクスペリアームス!」

「それはこっちのセリフだ!ステューピファイ!」


2つの赤い閃光が中央でぶつかる。競り勝ったのはジェームズの方だった。スニベルスの杖が飛び、クルクルと宙を舞う。


「っ!アクシオ!先輩の杖!」


慌ててレギュラスが呼び寄せ呪文を唱え、スニベルスの杖を掴む。チッとジェームズから舌打ちする音が聞こえた。俺も加勢するか、と杖を取り出す。


「アグアメンティ!」


杖先から噴出した水がレギュラスとスニベルスをびしょ濡れにさせた。図書館の本は防水魔法がかけてあったのか、本の周りだけ乾いている。


「ププッ!水も滴る良い男になったんじゃない?まあびしょびしょになってスリザリン生特有の陰気さも増したみたいだけど」

「五月蝿い、黙れポッター!」

「まだ口答えする元気はあるみたいだね。ファーナンキュラス!」


ジェームズの放った鼻呪いの呪文がスニベルスに当たり、スニベルスの鼻にはいくつもの醜いできものが出来た。


「っ…!」

「よく似合ってるじゃねえかスニベルス!」

「兄さん!なんて事を!」

「黙れ、ディフェンド!」


スニベルスを守るように1歩前に進んだレギュラスに対して引き裂き呪文を放つ。しかし、その呪文はレギュラスの背後から飛び出してきた1つの閃光によって阻まれてしまった。
前へ次へ