「おはようシリウス!早く供物を取りに行くぞ!」

「おはよ、イヴ。待ってろ、今ピーターが来るから」


カーッカッカッカ!と腰に手を当てて元気良く笑うイヴ。クリスマスにイヴの住む孤児院へ押しかけ「我が盟友」に認定された俺は、急激にイヴとの距離が近づいた。イヴの方から話しかけてくれるようになったし、食事も一緒に取る。空き時間の勉強もリーマスとでは無く俺とだ。一気に信頼を寄せられて悪い気はしない。むしろ嬉しくてニヤけてしまいそうだ。

(そんなリーマスは毎日のようにせっせと図書館に足を運んでいる。本人は「勉強しているだけだよ」と言っているが、まあ、リーマスの春も近いという事だろう)


「おはようエバンズ!!今日も君は美しいよ!!世界が輝いて見えるね!!やっぱり君は天使だったんだ!!」

「うるさいわよポッター!ああ、もう!朝から最悪な気分よ!」

「つれないなぁエバンズは!!」


イヴが俺と朝食を取るという事は、必然的にエバンズもジェームズと共に朝食を取るという事になる。ジェームズも想い人と朝から一緒に居れて嬉しそうだ。まあエバンズとの関係は全く変わっていないが。


「ご、ごめん遅くなっちゃって!」

「気にするなペティグリュー。人間は睡魔に憑かれやすい生き物なのだ」

「へぇっ!?」

「イヴは気にしないで良いよって言ってるんだよ。ねえ、シリウス」

「なんで俺に振るんだよリーマス。おう、気にするな」

「全員揃ったね?じゃあ早く行こう!僕お腹ペコペコだよ…ギュルルルル…あっ」

「ふふ、情けないわよポッター」

「え、エバンズに笑われた…」


親友達にエバンズとイヴの2人が加わり、6人でくだらない話をしながら大広間に向かい、朝食を取る。俺と対面するように座り、フルーツの盛り合わせを一生懸命頬張るイヴの姿がなんだか小動物みたいで可愛らしい。まさか毎日一緒に居られるようになるとは。どれもこれも休暇中に俺とイヴの関係が大きく変わったおかげだろう。


「シリウス、食後は暇か?」

「あ?おう。一応空いてるぜ」

「ならば談話室に行こう。新作の呪文についてと、今度の魔法薬学の実験について聞きたいことがある」

「りょーかい」


こいつの頭の中はどういう仕組みになっているのか、魔法を生み出す才能はあるのに、どうしてもテストではイマイチその力が発揮出来ないらしい。フラフラと中間層の順位を漂っている。今まで創作したオリジナル呪文の数は、両手両足の指でも数え足りないくらいだというのに。
だから俺が教師役を買って出た。4ヶ月後にはOWLが控えている。俺もジェームズも余裕だから特に焦りはしないが、どうせだったらイヴと同じ選択科目を取って、隣同士で授業を受けたい。分からないと嘆くイヴをカッコよく手助けしたら、イヴも俺の事好きになってくれたりして……なんて1人妄想までしてしまう。

イヴへの想いに気づいた俺は、色々と吹っ切れていた。 好感度最悪レベルからスタートし、盟友の称号を得て飛び級、やっと最高レベルに辿り着いたのだ。後はさらにその上、恋人の称号を手に入れたい。
俺はとても浮かれていて、イヴの事をまだまだ知らないという事をすっかり忘れていたのだ。
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