「シリウス、あれ」
とある土曜日の午後。昼食を食べ終わり、ジェームズと2人で悪戯の計画を立てながら中庭を歩いていると、大きな樹の下に座って厨二病女とスニベルスが何やら話し込んでいた。もうすぐ12月だというのに寒くないのかあいつら。
よく見ると仲良く同じ本を一緒に見ている。どうせ闇の魔術に関する本だろう。グリフィンドール生の癖にスニベルスと仲良くするなんて気に入らない。少しお灸を据えてやろうと思い、杖を取り出す。
ジェームズを見ると、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべていた。多分俺も同じ顔してる。
2人に近づいたが、余程熱心に本を読んでるのか全く顔を上げる気配が無い。なんだよ、と内心で毒づく。
取り敢えずこちらに気を引かせようと、わざと大きな声で声をかけた。
「よ、よお!スニベルスに厨二病女、2人仲良く闇の魔術のお勉強か!?1年目からご熱心な事で!」
ブフォッと隣で吹き出す音が聞こえたが無視だ無視。「君好きな子の前だと緊張するタイプなの!?」と笑われたが別に俺は厨二病女好きじゃねえ。厨二病女が顔を上げ、赤い瞳が俺を捉える。思えば目が合うのも話すのも初めてだ。
「なんだ、黒犬に毛玉か。愚かな人間風情が我に何の用だ」
想像の斜め上を行く返答で目を見開いてしまった。は?今なんて言ったこいつ。黒犬に毛玉?愚かな人間風情?
「おい、黒犬って俺の事か!?」
「毛玉って僕の事!?」
ジェームズと見事にハモった。スニベルスの方を見ると顔を伏せて震えてやがる。こいつ、俺の事馬鹿にしやがって。怒りで頭に血が上るのを感じた。
「なんだ、間違えた事を言ったか?おおいぬ座に天パと呼んでやる訳が無かろう。貴様らが我が盟友に迷惑をかけている事を知らぬと思ったのか。甘いわ」
厨二病女は顔を顰めて立ち上がり、杖を取り出した。俺がブラック家のシリウスだから黒犬だとでも言うのか、こいつは。まあ毛玉よりはマシだけど。
俺よりもジェームズの方が怒りで顔を真っ赤にしている。そりゃ誰だって毛玉呼ばわりは怒るよな。
厨二病女がスニベルスを守るように1歩前に出た。俺とジェームズと厨二病女。3人で杖を構えてまさに一触即発状態。1番最初に動いたのは俺だった。
「ウィンガーディアム・レビオーサ!」
呪文は見事命中し、厨二病女は空に浮いた。「ハハ!なんだシリウス、君厨二病ちゃんのパンツ見たかったの?」とジェームズに笑われた。別に俺はそんな気ねえっつーの!
だから、俺達は油断していて気づかなかった。厨二病女は空に浮いているのにも関わらず、全く動じていないという事に。
「恒久の氷結(エターナルフォースブリザード)!」
厨二病女が呪文を唱えると同時に、杖から飛び出た水色の光が俺とジェームズを包み込む。次の瞬間、俺の首から下は大きな氷の塊の中に閉じ込められていた。
「冷たっ!」
ジェームズも俺と同じように、首から下が氷漬けにされている。なんだこれは。まだ習ってない呪文じゃないか、クソ。
スニベルスは俺達の方を見てニヤッと気味の悪い笑みを浮かべた後、ゆっくりと立ち上がって厨二病女にかかった呪文を解いた。厨二病女は地面にふわりと着地すると、俺達を一瞥した後フンッ、と鼻を鳴らして立ち去ってしまった。
「おい待てよ厨二病女!このヘンテコな呪文を解きやがれ!」
「随分と愉快な姿になったなポッターにブラック。その呪文はイヴが編み出したものだ。夜まで解けない。そこで己の行いを悔い改めるんだな」
スニベルスに横槍を入れられて腹が立つ。なんだよ、お前がやった訳じゃ無いのに偉そうに。
「へえ、厨二病ちゃんの後ろに隠れてるだけだったのに偉そうな態度だね!守ってもらわないと何も出来ないのかい?泣きみそスニベルス!」
ジェームズがスニベルスを煽る。が、スニベルスは俺達を鼻で笑った後、厨二病女を追って校舎の中に入ってしまった。
その場に残された氷漬けの俺とジェームズ。身体を一生懸命動かそうとするが、微動だにしない。
これからどうしようか、とジェームズを見ると、フッフッフッと顔を伏せて笑っていた。
「お灸据えるつもりが逆に据えられちゃったね」
「据えられてねーよ。やり返せる口実が出来て嬉しい癖に」
「あ、そう思う?さすがに毛玉呼ばわりは頭に来ちゃったからさ。君には悪いけど、彼女もスニベルスと同じように悪戯の対象になってもらうよ」
「なんで俺に悪いんだよ。相棒、あの厨二病女にはちょっと痛い目見てもらおうぜ」
その後、夕食の時間になっても大広間に現れなかった俺達を心配したリーマスとピーターが探しに来るまで、2人で厨二病女に仕掛ける悪戯を考えて過ごした。
むかつく事に、スニベルスの言った通り、氷は夜まで解けなかった。
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