11.そいつの名前は防犯ブザー
一通り買い物を終えた私達は、近くに会ったカフェに立ち寄る事にした。11歳、しかも未就学の子供2人だけでも入れるカフェってあるのかと心配したが、ブラックの名を使えばすぐに景色の良い席に案内された。
さすが店長もビビるブラック家。そこに痺れる憧れるぅ!
シリウスに「家の権力を使うのって嫌じゃなかったの?」と遠回しに尋ねたら「利用できるもんは利用するに決まってるだろ」と返ってきた。やだこの子強い。

無難にオレンジジュースを2つ注文し、即座に運ばれてきたジュースで喉を潤す。果汁100%最高!


「で、これはなんだよ」

「あー、しまった爆弾が1つ残ってた」

「爆弾?」

「いや、こっちの話」


ゴトッとテーブルに置かれた小さな防犯ブザーに頭を抱える。それは防犯ブザーという名の純マグル製品です〜実は私の家族マグルの熱狂的ファンで、地下室にそれはもうたくさんのマグル製品を蓄えてあるんです〜と素直に言うか?言ってしまうか?
シリウスだし良いでしょ!と言う私と、シリウスからオリオンさんやヴァルブルガさんに伝わって私の両親が消されてしまう!危険だ!と言う私が脳内会議で主張し合う。

どうすれば良いんだ、これ。なんで私のお母様は防犯ブザーを渡そうと思ったんだ!!

うおおと唸りながらテーブルに頭を打ち付けて打開策を考えようとしたが、額がじんじんと痛むだけで名案は浮かばなかった。


「このプランプランした紐はなんだ?」

「その紐を引っ張ると大惨事になるからここで引っ」


引っ張っちゃダメだよ、と言い終わる前にシリウスは「えい」と紐を引っ張った。
瞬間ビリリリリリリリリィィィィ!!!と鼓膜を破りそうなくらいの大音量で機械音が鳴り響く。周囲の客がギョッとして音の発生源である私達の席を見た。私は慌ててシリウスから防犯ブザーを奪い、栓を閉めた。


「すみません!何でもないです!ごめんなさい!」


席から立ち上がり、周囲に聞こえるよう声を張り上げて頭を下げる。なんだ、子供の悪戯か、と店内は元の空気に戻っていった。ホッと息を吐き、驚きのあまり防犯ブザーを持った形で固まっているシリウスをキッと睨みつける。


「人の話は最後まで聞きなさい!!これは防犯ブザーって名前のマグル製品で、大音量で流す事で簡単に周囲に危険を知らせる事ができる便利グッズなの!!店内で引っ張ったらダメなんだから!!」

「わ、悪い。まさか音が出ると思わなくて…って、マグル製品?どういう事だよ!リーザ、お前ん家は純血主義だったはずじゃ」


ハッとして口を抑える。しまった、余計な事を言ってしまった。ええい、ままよ。全部言ってしまえ!!


「しっ、声を抑えて。どこの誰に聞かれてるか分からないんだから。そう、私の両親はマグルの熱狂的ファンよ。今まで周りに隠して生きてたの。この事をシリウス、貴方の両親に言ってはダメよ。私の両親が消されてしまう」


私はこれからのシリウスを信じる事にしたのだ。グリフィンドールに入り、家名を捨てて不死鳥の騎士団として正義側で生きるであろう未来の彼を。

恐る恐るシリウスの瞳を覗き込むと、そこには不安げな顔をした私が映っていた。何も言わないシリウスの顔へと視線を移す。シリウスと視線が絡み、しばらく見つめあっていた。


「分かったよ」


ポツリと漏らされた一言に安堵する。


「絶対言わない。約束する」


ほら、約束しようと出された小指に自身の小指を絡め、指切りげんまんと2人で歌う。この歌は何年も前に私がシリウスに歌ってあげたものだ。覚えていてくれたんだな、と胸がジーンと熱くなる。

「これは貰ってくぜ」とテーブルに置かれた防犯ブザーをポケットに入れたシリウスは、私が何かを言う前に伝票を持って会計へ向かってしまった。えっ、と一瞬固まってしまう。シリウスに防犯ブザーを持たせても大丈夫だろうか。


「シリウス!防犯ブザー返して!」

「やだね!こんなに面白い物、すぐ返すなんてもったいないしな!」


シリウスを捕まえようと席を立ったらいつの間にか会計を済ませたシリウスに外へと逃げられてしまった。シリウスー!と名前を呼びながら勢いよくカフェの扉を開く。外では悪戯が成功したような悪い笑顔を浮かべたシリウスが待っていてくれた。そして私は再びシリウスに手を握られ、仲良く火格子へと向かい、家に帰ったのだった。


「あっ防犯ブザー返してもらってない!」
11/12
prev  next