13.いざ往かんホグワーツ
9月1日、待ちに待ったホグワーツ入学の日。
そして私の12回目の誕生日。

昨日のやり取りのせいとホグワーツへの期待のせいで全然眠れなかったが、気合いでなんとか乗り切るとしよう。

パシッと頬を叩いて喝を入れる。


「さあ、これから頑張らなきゃな」





「姉さん、行っちゃ嫌ですーー!」

「おいレギュラス。リーザを困らせるんじゃねえ」

「だって兄さんはこれからも毎日姉さんと一緒にいれるじゃないですか!ずるいです!僕も姉さんと一緒にいたい!」

「あは、あはは…」


赤色が特徴的なホグワーツ特急の前で、何故か私はレギュラスにがっちりと身体をホールドされて動けないでいた。
一学年下のレギュラスがホグワーツに入学できるのは来年だ。今日別れれば次会えるのはクリスマス休暇。
会えなくて寂しいと思う気持ちは分かる、分かるけど…

(まさかここまで懐かれているとは…)

私の両親とブラック家の夫婦は微笑ましいものを見るように暖かい目でこちらを見ていて助けてくれない。
おい天下のブラック家、それで良いのか。
次男はシスコンだと(本当の姉では無いが)不名誉な噂が広まっても良いのか。

私の胸に顔を埋めてわんわん泣くレギュラスの頭をぽんぽん叩いてやんわりと離れるよう催促するが効果は無い。さて、どうするべきか。


「レギュラス」

「ぐす、なんですか…」

「毎日手紙書くよ。クリスマス休暇は真っ先に会いに行くって約束する。だから離してくれないかな?」


涙で潤んだ綺麗な灰色の瞳をじっと見つめると、観念したのか渋々といった様子で離れてくれた。


「約束です。嘘ついたら末代まで呪います」

「それは困る」


小指同士を絡めて指切りをする。ちょっと物騒な言葉が聞こえた気がするが気のせいだという事にしておこう。
私の中のレギュラス像に少しだけヒビが入ったが。


「じゃあシリウス、行こうか!」

「やーっとか。じゃあなレギュラス」

「レギュラス、元気でね」

「はい!」


笑顔で返事をしてくれたレギュラスの頭を一撫でし、トランクを抱えて列車に乗り込む。適当に空いてるコンパートメントを見繕って、シリウスと向かい合う形で席に着いた。


「リーザ、お友達たくさん作るのよ」

「…頼んだぞ」

「シリウス、分かってるでしょうね。リーザちゃん、シリウスをよろしくね」

「期待している」


窓に集まった大人組からの言葉をしっかりと胸に刻み、汽笛を鳴らして動き出した列車の窓からぐっと身を乗り出し、笑顔で「行ってきます!」と手を振った。
反応のないシリウスを不思議に思い、顔を向けるとシリウスは彼らに向かってあっかんべーしていた。
そうか、そこまで両親が嫌いか。


「やぁーっと自由になれて清々したぜ」

「まあまあ、なんだかんだ言っても大人は子供を心配しちゃうんだよ。行ってきますくらい言ってあげれば良かったのに」

「うるせえ」

「ごめんごめん」


ガタンゴトンと振動を感じながら、あらかじめトランクから引っ張り出しておいた本を手に取る。


「おい、まさか勉強か?」

「だって、ホグワーツに着いたら魔法が使えるんだよ?使いたい魔法たくさんあるから今のうちに呪文完璧にしておこうと」

「勉強熱心だな。俺には真似できないぜ」

「シリウスは体で覚えるタイプだもんね」


ある呪文が書いてある所まで紙をパラパラ捲る。
あ、見つけた。


「まず使うならこの呪文を使いたいな」

「インセンディオ?決闘でもすんのか?」

「炎がバーって出るのかっこいいじゃん」


はるか昔、人間は火を得る事によって急激な進化を遂げた。私も来たるべき闇の帝王との決戦に向けて、攻撃呪文をたくさん覚えなければならない。
まずは火を征する事、それが彼ら闇の魔法使いと渡り合っていく為の第一歩だと考えたのだ。

…だからインセンディオを一番に覚えたい、なんてずっと先の未来の話をシリウスにしても仕方が無いので誤魔化したが。


「シリウス」

「なんだよ急に」

「頑張ろうね」

「お、おう」
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