18.2人1組の恐怖
2人1組。この言葉を聞いて鳥肌が立った者は私の所に来なさい。熱いハグを交わそうじゃないか。

2人1組とは、2人で1つの組を作る事である。奇数の仲良しグループは一気に戦場と化し、溢れないよう友を奪い合う。まったく恐ろしい儀式である。以上、リーザペディアより。


そんな言葉が瞬時に頭を掠め消えていった。現実逃避だと笑うことなかれ。私はいつだって真剣なんだ。
けれどこの美しき残酷な世界は無情、ついでにスラグホーン先生も無情だった。


「では、2人1組を作って実験を始めなさい」


目の前が真っ白になった。なんてこった。


「えっと…」

「じゃあノエルとケイトで組みなよ!私は大丈夫だからさ!新たな友達GETの旅に出てくるね!」

「ちょ、貴女!」


ケイトとノエルの制止を振り切り席を立って辺りを見渡す。初めての実験で「私は溢れたんじゃなくて自ら離れたんだぜ」作戦を実行してしまうとは情けない。だがしかし、いくら今が素敵なレディだからって染み付いたぼっち根性は無くならないのだよ。切っても切れない縁みたいなもんである。おらこんな縁嫌だ。


ホグワーツの授業は私が前世で受けていた授業と大して変わらない。座学で魔法についての知識を十分に付けてから実技を行う。「貴方のはレビオサー」なんて呪文の言い間違えが可愛いなんて言っていられるのは今のうちで、下手をすると命を失う事もある。そうならないよう、きちんと座学の時間に教科書と睨めっこして頭に魔法のマを叩き込む必要があるのだ。
何が言いたいかというと、ここ1ヶ月座学づくめで魔法のマに初めて触れる日が今日だと言う事。
あれれ、おっかしーぞ?と眼鏡の少年が脳内で異を唱える。小説や映画と違うじゃないかって?ハハハ、それは物語がサクサク進む為だよ。現実は厳しいのさ。

1ヶ月そこらで友達100人作れたら苦労しない。富士山の上でおにぎりを食べれば一発なのだろうがここイギリスにあるのはベン・ネビス山。元日本人だから言わせてもらうがあそこは山じゃない丘だ。っと話が逸れた。
簡単に言うとグレンフェル家という家名のせいでビビられてろくに友達が出来ていない。正直言ってそんなに凄い家だとは思わなかった。
話しかけようにもビビって逃げられてしまうので会話が広がらない。そもそも目と目が合った瞬間逃げられる。
何度お父様に抗議の手紙を送った事か。
つまり私はまだケイトとノエル以外に友達がいないのである。という訳でこの機会を利用して新たな友達を捕まえようと思います。

辺りをキョロキョロと見渡し、さりげなくグリフィンドールの方を見てからニヤリとほくそ笑む。よし、彼女は別の子と組んだみたいだな。そして次に標的をロックオン。実はこういう時の為にぼっち仲間を見つけておいたのだ。


「Hi そこの君!ぼっち仲間同士私と組まない?」

「…はぁ?」


教室の隅っこ、そこだけジメジメとキノコでも育ててんのかとツッコミを入れたくなるような陰湿な雰囲気。その発生源である我らが大好きセブルス・スネイプ先生との初コンタクトを試みた。のっぺりと重そうな髪の隙間から鋭い視線が飛んでくる。が、ここはめげない、しょげない、泣いちゃダメ。で有名なピンクの恐竜精神で持ちこたえた。


「ね、良いでしょ?他の皆はもうペア組み終わっちゃったみたいで。お願い!」


両手を顔の前に合わせて困ったように笑うと「はぁ…仕方がない」と実に面倒くさそうな態度だがお許しを頂けた。やった!ありがとう!といかにも快活そうな少女を装って隣に座る。
ほらほら、リリーちゃんみたいな明るく元気な女の子に弱いんだろう?ンン?
偏見マシマシ野菜マシマシの雑念を鋼の精神で押し留め、「自己紹介がまだだったよね。私リーザ・グレンフェル」と言うと秒で「知ってる」と返ってきた。実際「私リーザ」も言い終わらないうちに知ってるって返ってきたから結構ビビった。中々食い気味で来るね君。


「僕の名前はセブルス・スネイプだ」

「おっけーよろしくねセブルス!」


長いローブに仕舞われていた手を引きずり出して無理矢理ブンブン振る。手を振る事で仲良くなるパワー的な何かが出るんだよ。嘘、今私が考えた。
嫌そうな顔をしているが他のスリザリン生みたいな家柄への恐怖は見られない。ここは何がなんでもお友達になるしかない。


「今握手したから今日からセブルスは私の友達ね!」

「…勝手にしろ」


「はぁ?」か「寝言は寝て言え」なんて返ってくると思ったからびっくりした。ツンデレ。これがリアルツンデレ…!!と高鳴る胸を押さえつけて息を整える。やばい、セブルス・スネイプ(11)恐ろしい子!

無事友人になれた私達は、セブルスが光の速さで魔法薬を作ってくれたお陰で一番に提出する事ができた。スラグホーン先生がべた褒めし、恥ずかしそうに俯いてたセブルスの姿は心のフォルダにそっと保存した。
はぇ〜可愛い。2人1組なんてクソ喰らえなんて思っていたけどセブルスと組めるなら全然問題無いわ。寧ろ毎授業2人1組にして下さいよなんてスラグホーン先生に懇願したらセブルスに鳩尾を殴られた。痛かった。


それをグリフィンドールのシスコンがバッチリ目撃していたなんて、私は全くこれっぽっちも気づいてなかったのでした。ちゃんちゃん。
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