22.本日は晴天、クィディッチ日和なり
白と緑のボーダー模様のマフラーを首に巻き、小さな旗を手に持つ。
「リーザ、ケイト、準備は出来ましたか?」
「OKバッチグー!!」
「私も大丈夫…!」
さあ、行きますわよ!!と妙に目をキラキラ輝かせながら先導するノエルの後ろにひっつきながら、私達は競技場へと向かった。
本日は晴天なり。見事なクィディッチ日和だ。
*
ヒュンヒュンと風を切りながら縦横無尽に動き回る選手達。今、グリフィンドール対スリザリンという因縁の戦いが狭いコートの中で繰り広げられている。
クィディッチ・シーズンの真っ最中、クィディッチが大好きな生徒達は大いに盛り上がっていた。
「それにしても肩身が狭いよね」
「まあ…しょうがないよね…」
「こればかりはどうしようもありませんわ。ヘイトを集める場所が無いと民衆は纏まりませんから」
スリザリン生はスリザリン生で孤高の存在を喜んでいるんだから問題はありませんわ。そう言い切ったノエルは冷えた目を反対側のスタンドへと向けた。グリフィンドールを筆頭にハッフルパフとレイブンクローまでもがグリフィンドールカラーを何かしらの形で身につけていた。スリザリン、完全にアウェイである。なんてこった。
更に実況の生徒も監督のマクゴナガル先生も、態度には出さないがきっとダンブルドア校長もグリフィンドール推しだ。まさに四面楚歌。校内に敵しかいない。
スリザリンはどうしてそんなに嫌われるんだ。もう校内の雰囲気がスリザリンアンチだからね、しょうがないね。ダークヒーローはいつだって孤独なのだ。いや別にダークヒーローじゃなくてヴィランなんだけど。バリバリ死喰い人輩出してるんだけど。
「ほら、気にする事無いんですからちゃんとリーザも応援してください」
「だってルールよく分かんないし…」
ぶっちゃけハリーポッターが好きでもクィディッチのシーンはサラッと流し見した程度だから全くルールが分からない。シーカーしか分からない。ここ笑う所です。
なんとなく周りに合わせてぼんやり旗を振っていると、どうやらスリザリンのシーカーがスニッチを獲得し、大差をつけて勝利したようだ。スリザリンの生徒達…つまり私の周りがドッと歓声をあげ、勝利を祝った。
グリフィンドール側はお通夜だ。皆悔しそうにしている。
…ルールが分からないと面白くない。周りで肩を抱き合って喜んでいるスリザリン生達を見ていてふと思った。
というか君達年相応にはしゃげるんだね。お姉さんびっくりしちゃったよ。もっとクールに生きてるのかと思ってたよ。
まだレイブンクローとの試合が残っているが、勝ちは濃厚なんだそうだ。嬉しそうに今日の試合について語ってくるノエルに適当に相槌を打ちながら、私達は校内へと戻った。
*
「あれ、リーマス?」
「……リーザ」
夕食前に図書館に行こうと軽い気持ちでいたらいつの間にか夕食の時間になっていた。慌てて廊下に飛び出したところ、ばったりリーマスと遭遇したのである。
「どうしたの?もう夕食始まっているよ?」
「ちょっと野暮用で。リーザこそどうしたの?」
「図書館でクィディッチについて勉強していたのよ」
今日の試合でルールが分からなかったから周りと感情を共有できなくて面白くなかった。だから勉強して実況できるくらいクィディッチについて詳しくなろうと思ってさ。
そうリーマスに伝えると、「リーザは努力家で偉いね」と褒められた。そうかな、努力はあんまりした事無いんだけど。でも褒められるのはいくつになっても嬉しいものだ。心がじんわり温かくなった。
「あれ、リーマスはクィディッチ見てないの?」
「あー、うん。具合悪くて…」
確かに見るからに顔色が悪い。もしかして、と窓の外に目をやると月が爛々と輝いていた。
ああ、満月が近いからか。
それで元気が無いんだろう。まったく、フェンリールも酷い事をする。いたいけな美少年に過酷な運命を背負わせるなんて。
「大丈夫、心配しないで」と弱々しく笑うリーマスに胸が締め付けられる。ばかやろう、辛い時は辛いって言わなきゃ駄目だろう。
「リーマス、手出して」
「ん?いいよ」
ローブから杖を出して呪文を唱える。
ぽん、と音を立ててリーマスの手にピンク色の箱に赤いリボンが結ばれた、大変可愛らしい小包みが現れた。
「わっ、びっくりした!これは?」
「開けてみてからのお楽しみ!」
ほら開けて開けて、と急かすとリーマスは慎重にラッピングを解いて蓋を開けた。
「これは…チョコレート?」
「そうそう、トリュフチョコレート。図書館でクィディッチについて調べるついでに面白い魔法無いかなーって探していたら、素敵な魔法があったから使ってみた」
私が使ったのはトリュフチョコレートを生み出す魔法ではなく、部屋にあるあらかじめラッピングされていたチョコレートをアクシオの応用でリーマスの手のひらの上に出現させる魔法だ。初めての挑戦だったけど、上手くいって良かった良かった。
「ありがとうリーザ。大切に頂くよ」
「チョコレートは万能薬だからね!だからリーマス、元気だして!」
「うん、本当にありがとう」
少し離れていた心の距離がチョコレートでぐっと縮まった気がする。餌付け?うるせえ、相手の好きな物をプレゼントして好感度あげるのは常識だぞ。
2人で仲良くおしゃべりしながら大広間に向かったら、シリウスとジェームズが目玉が落ちそうなくらい目を見開いて驚いていたのがとても面白かった。
「意外な組み合わせだねえ、シリウス」
「おいリーマス、その小包みなんだよ!!」
「何って…リーザがくれたんだけど」
「やべ」
「リーザ!!俺の分は!!」
「シ、シリウスの分はまた後で…じゃ、じゃあね!!」
「リーザ!!!!!!」
10/17
prev next