23.お姉さんは皆を可愛がりたい
もはや日課となっているレギュラスからの手紙が遂に3桁を超えた。貰った手紙は全て机の引き出しに保存してあるがそろそろ容量が限界になりそうだ。だからって捨てる事もできないし、どうしたものかと頭を抱えているとノエルが「何の為に魔法があると思ってるですの」と呆れながらも杖を振ってレデュシオと唱え手紙を縮めてくれた。持つべきものはスリザリンの賢い友人である。
「まあ100通もあれば入らなくなるよ…!リーザと弟は仲良しなんだねぇ」
「100はさすがに馬鹿ですわ、馬鹿」
「2回も馬鹿って言った!酷い!」
「でも、それだけ貯まったならもうすぐ会えるよ!良かったね」
「へ?なんで?」
「なんでって…冬季休暇があるから?」
…………………あ。
「あああ!!忘れてた!!」
「ほらケイト、やっぱりリーザは馬鹿ですのよ」
冷めた目で見てくるノエルと苦笑いを浮かべるケイトに挟まれて居た堪れない気持ちになる。毎日が楽しすぎてすっかり忘れていた。ごめんねレギュラス、だから最近の手紙に「早く会いたい」とか「姉さんと会えるのが楽しみです」とか書いてくれてたんだね。うっ、不甲斐なさに涙が出そうだ。泣かないけど!
*
「俺は帰んねーよ」
「…?ごめん今聞こえなかった。もう一回言って」
「だから、帰んねーって」
「…?お姉さん耳が悪くなったのかな、聞こえなか」
「シリウスは僕とクリスマスを過ごしたいんだって!残念だったねリーザ!!」
今は夕食後の自由時間。大広間で悪戯仕掛け人共が座っているグリフィンドールの席に単身乗り込みシリウスにクリスマス一緒に帰ろうね、と伝えた結果がこれである。謎に勝ち誇った笑みを浮かべてジェームズが私とシリウスの会話に割り込んできやがった。………おい待て、なんて言った?
「一心同体の仲と言っても過言では無い幼馴染を捨てて、出会って3ヶ月の何処の馬の骨とも知れない男とクリスマスを過ごすのか?正気か?」
「幼馴染盗られてショックなのは分かるけど、誤解を招くような言い方はやめてくれないかい?僕はエバンズ一筋さ!!!」
「黙ってろ脈無しが!!!」
「ひ、酷い!!」
シリウスを奪い合う私とジェームズという修羅場を見てリーマスが「仲良しだねぇ」とチョコレートケーキをつつきながら笑った。おいそこ、現実逃避するな。リーマスは仲良しだねって言っとけば何とかなると思っているのかもしれない。ピーターはリーマスと私達を交互に見てはあわあわしてる。これもすっかり見慣れた光景となった。
「というかリーザは帰るのかよ」
「へ?帰るよ。レギュラスいるし」
「はぁぁ!?俺とレギュラスどっちが大事なんだよ!!」
急にブチ切れられた。第二次ド修羅場劇場開幕である。どっちが大事って聞かれてもどっちも大事だし優劣なんてつけられない。
「2人とも大好きに決まってるじゃん!!!!」
「は!?え、あ、ありがとな……」
デレた。さっきまでの怒りはどこか飛んでいってしまったのか、嬉しそうにへへっと笑うシリウスに私は顔を両手で覆ってヴッ、可愛いと呻く。可愛さの暴力で私に100のダメージだ。
あまりに可愛いのでシリウスの頭をよしよしと撫でる事にする。
「よしよし」
「シリウスがなんで照れるか僕分からない」
「頑張って慣れようジェームズ…」
「で、でも仲良しなのは羨ましいかも」
3人がまた遠い目をしている。何でだろう。もしかして頭なでなでされるのが羨ましいのだろうか。そうだよね、まだ11歳だもんね、と微笑ましい気持ちになる。
よーし、お姉さんに任せんしゃい!
油断しきっていたリーマスとピーターの頭を優しく撫でてやると、2人共カッと目を見開いた。「いきなり何を!」と慌てふためく様子に胸をキュンキュンさせながら気が済むまで撫でくり回してやる。私のテクに恐れ慄くが良い。
「皆ずるい!!リーザ!!僕も僕も!!」
「そう言うと思った。おいで!!」
「わーい!」
バッと腕を広げるとジェームズが飛び込んできた。ぎゅうと抱きしめて片手で頭を撫で回す。天パだからふわふわして気持ち良いな。が、すぐにジェームズが腕からいなくなってしまった。
「痛っ!!シリウス何するんだよ」
「うるせぇ!!」
どうやらシリウスに床に転がされたらしい。足元で無残な姿になってしまったジェームズの代わりに、シリウスがぼすっと私の腕に収まった。
「ここは俺の特等席だからな。無闇に他の奴入れるんじゃねえ」
あまりの可愛さに心臓がギュッと強く収縮した。
私は将来シリウスの可愛さで殺されてしまう気がする。
肩に頭をぐりぐりと押し付けてくる弟のような幼馴染にバレないよう、私は静かに空を仰いだ。
11/17
prev next