24.クリスマスの朝って特別感あるよね
パチリと目を覚ますと、見慣れない天井が視界に飛び込んできた。
一瞬元の世界に戻ったのかと焦ったが、すぐに自室の天井だと気づいてホッと息を吐く。ホグワーツの天井の方が見慣れていたからね、しょうがないね。
暖かい湯たんぽがもぞもぞと動くので、私は寝ぼけながら動かないようにそれをぎゅっと抱え込んだ。
こらこら、湯たんぽが動くな。はぁ…ぬくい。
って、ちょっと待て。湯たんぽがもぞもぞ動いた?
慌てて起き上がりガバリと布団を剥がす。
な、なんとそこには私に寄り添って寝るレギュラスの姿があった…!!
「ああ、そうか」
昨日の夜に帰ってきた私に熱烈なお出迎えをしてくれたレギュラスが離れたくない離れたくないと珍しくわがままを言ってくれたから、そのまま一緒に寝ちゃったんだった。
脳裏に児ポ案件……と走った私は末期である。こんな12歳嫌だ。絶対嫌だ。
うわぁぁと自己嫌悪に陥っていると、ふぁ…と小さな欠伸をしたレギュラスがゆっくりと目を開けた。
「……おはよう、ございます」
「ヴッ」
ふんわりと花のように微笑んだレギュラスの可憐さにやられてうっかり心不全を起こしてしまった。
わお、お姫様だ!お姫様がここにいる!
つやつやな黒髪にうるうるな唇、少し涙で濡れた目が色っぽい。世の中の女の子全てを集結させてもレギュラスには叶わないだろう。何が言いたいかというとレギュラスが可愛すぎる。
のそりと身体を起こしたレギュラスの黒髪にそっと指を通すとすすすっと簡単に通り抜けてしまった。コンディショナー何使ってんだろう。私に教えて欲しい。
「姉さん?」
「……ああ、おはようレギュラス。よく眠れた?」
「良かった、夢じゃない…」
ぎゅっと私のお腹に頭を擦り付けるレギュラス。大丈夫大丈夫、ちゃんといるよ。ここは現実、ノー夢だ。
「寂しかった?」
「当たり前じゃないですか……」
ぷう、と頬を膨らませて私を見上げたレギュラスは、「でも良いんです、帰ってきてくれたから」と言いニコッと笑った。
「冬の間は僕が姉さんを独り占めできて嬉しいです」
「うんうん、お姉ちゃんがたーんと甘やかしちゃる」
「じゃあたくさん甘やかして貰います」
「ドンと来い!さ、起きようか」
そう言って立ち上がろうとすると、ぐいと袖が引っ張られた。
「あの、もう少しこのままでいても良いですか?」
「ん?もちろん」
寒いし布団被ろうか、とレギュラスと団子になりながら首まですっぽり布団に潜る。ぎゅうと強く抱きしめてくるレギュラスを見て、ああ、よっぽど寂しかったんだなと察した。そりゃそうか、いきなり兄姉と引き剥がされるようなものだもんな……
「大丈夫大丈夫、来年はレギュラスも一緒にホグワーツ通えるからね」
「まだまだ先じゃないですかー…」
「ええー!?あっという間だって。ボーッとしてたらいつの間にか夏が来て驚くからね。私がそうだった」
「ふふ、姉さんらしいです」
くすくすと笑うレギュラスの髪の毛が頬に当たって妙にこそばゆい。結局私達は9時を過ぎるまで布団の中でお喋りをした。
*
「メリークリスマス!リーザ、レギュラス!よく眠れたかしら?」
「メリークリスマスお母様!もちろん!」
レギュラスを連れてリビングへ向かうと、天井に先端が届きそうなくらい大きなクリスマスツリーの隣でお母様が朝食の準備をしていた。ツリーの下にはプレゼントがぎっしりと山積みされている。下手したら私の背丈と同じくらいの高さになるかもしれない。
「プレゼントが届いてるわよ!レギュラス、貴方の分もね」
「わぁ、ありがとう!!レギュラス、早速開けてみよう」
「はい!」
にっこりと満面の笑みを浮かべたレギュラスと共にプレゼントの山の解体作業に取り掛かる。ほとんどが話した事のないスリザリン生からの物だったが(友達になってくれるという事だろうか?)、ケイトやノエル、悪戯仕掛け人にセブルスからのプレゼントもあった。まさかセブルスからも届くとは!!思わずニヤニヤ笑ってしまった私を見て、レギュラスは「誰からですかそれ?ねえ、誰ですか?」と食いついてきた。ちょっと迫るものがあって怖かった。なんでもないなんでもない!ただの友人!フレンズだよ!って言って宥めたけど。
「ん?なんだこれ」
開封作業中、シリウスから届いたピンク色の小さな包みを開けてみると、中からは可愛らしい花柄のハンカチと少し厚みのある封筒が出てきた。なんだこの封筒、と宛先を見る。そこにあった名前を見て、ああ、やっぱり彼は優しいなぁと心が暖かくなった。まだ、この時は。まだ、幼い彼は紛れもなく私の自慢の弟であり立派なお兄ちゃんなのだ。
「なんですか?それ」
「はい、シリウスからレギュラスに」
「……僕に?」
鳩が豆鉄砲喰らったような顔をした後、「何かのイタズラですか?それとも嫌がらせ?」と顔を顰めたレギュラスに「そんな事ないよぉ」と封筒を押し付ける。
「ほらほらほら、開けてみなって」
「うう……」
恐る恐る封を開けるレギュラス。すると中から勢いよく何かがバラバラと飛び出してきた。それらは「わっ!」と驚き目を丸くするレギュラスの周りをグルグルと回ると、やがてひとつに纏まって彼の手に収まった。
「これは…写真、ですか?」
「みたいだね。あ、私写ってる!えっ、こっちも!?嘘でしょいつの間に……無断撮影は事務所NGだぞシリウスこの野郎!!!」
「姉さんの写真ばっかですね」
「んん?なんで?」
「さあ?」
50枚近くある写真はほぼ私の写真(しかも隠し撮り)だった。寝惚けて柱に衝突してる写真や授業中教科書に顔面から突っ込んでる写真、朝食の時間にオートミールの海に溺れそうになっている写真など私のマヌケな写真ばかりでろくな物がない。こんな写真をレギュラスへのクリスマスプレゼントに選ぶシリウスの気持ちがお姉ちゃんちょっとよく分からないよ。笑いながら撮影したのか手ブレだらけで、しかもたまにグリフィンドールのローブがちょこっと写っている。多分悪戯仕掛け人の誰かだろう。誰だ、こんな嫌がらせを考えたのは。シリウスじゃないよな、これ。ジェームズか?ジェームズだな。というかジェームズ以外有り得ない。戻ったら絶対シメてやるから覚えてろ。怒りを胸に封筒を開くと、1枚だけ飛び出せなかったらしい写真が残っていた。わざわざ裏返しになっているのをみるとよっぽど酷い写真なのだろうか。
恐る恐る中から取り出すと、下の方に小さく『リーザだけじゃ不公平だもんね!』と綺麗な字で書いてあった。……誰の字だ?
疑問に思いながら裏返すと、そこには肩を抱き笑うシリウスとジェームズの姿があった。カメラを見ていないからこれも隠し撮り…なのだろうか。
「レギュラス、これシリウス写ってる」
「……誰です?この頭悪そうな男は」
「ジェームズだよ」
「へぇ……」
それっきりレギュラスはムスッとして口を開かなくなってしまった。嫉妬か?お兄ちゃんをどこぞの馬の骨に取られて嫉妬か?やだこの子可愛すぎる。大丈夫、馬の骨は私がきちんとシメるからね。
むぅ、と口を膨らませて怒るとてもとても可愛いレギュラスをよーしよしよしと撫でくりまわす。可愛い可愛いと言ってると「可愛いは嬉しくないです」とさらに怒ってしまった。ありゃ〜失敗。慌ててかっこいいかっこいいと言い変えて撫でたらレギュラスは満足したのか機嫌を直してくれた。そんな所が可愛いよレギュラス!!
その後2人でお母様が作ってくれたクリスマスケーキを仲良く食べた。ああ、クリスマス最高!
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