27.ひっさつ:しこうていし
「リーザ!君図書館で騒いで1ヶ月出禁になったんだって!?」とどこか嬉しそうに尋ねてくる(面白がっているのだろう)ジェームズを躱しつつ自室で真面目に勉強に励んだからか、無事期末試験の最終日を乗り越える事ができた。廊下では試験から開放された生徒達が集まり歓声を上げていて、その中心では人気者となった悪戯仕掛け人が魔法を使って紙吹雪をばらまくパフォーマンスを行っている。楽しそうで何よりだ。ノエルとケイトと共に少し離れた場所でそれを見守っていると、ふと、ケイトが口を開いた。


「そういえばもうすぐ夏休みだよね?ブラックくん、大丈夫かな…」

「………多分、だいじょばない」

「でしょうね。あれだけ熱烈なラブレターを貰っておいてタダで済むとは思いませんわ。まあ、自分で選んだ道ですから」


自己責任でしょう、とスパッと言い切ったノエルは果たして本当に私と同じ12歳なのだろうか。やけに達観してないか?大丈夫?中身三十路だったりしない?
若干ビクビクしつつ念を込めた視線をノエルに向けると、「うちの母が彼と似たような境遇ですの」と困ったような顔をしてため息を吐いた。


「うちはそこまで地位が高い訳じゃありませんし、公にはなっていませんが。母は代々グリフィンドールの家系なのにスリザリンになったのです。それで潜在的な闇の魔女と虐げられたみたいですわ。まあ実際はマグル学を受講して熱心なマグルオタクとなり、偶然隣の席となった父と結ばれて2人仲良く反純血主義になりましたけどね」

「重っ…」


思ったより訳アリだった。期末試験からの開放感で浮かれてた気持ちが急激に下がっていく。あかん。ノエルのおうち事情が過酷だった件について。


「既に母方の親族とは絶縁状態なので何も問題はありませんが、それでもホグワーツ時代の夏休みは酷かったみたいですわ。だから…って、別に奴の心配はしてませんけど。別に」

「ツンデレ!!」


ツンデレじゃありませんし心配もしてません!腕を組みフンと鼻を鳴らすノエルはどっからどうみてもツンデレだ。可愛い。ケイトが「ノエルちゃんは優しいんだね」と笑った。ノエルは違いますってば!と顔を真っ赤して怒っていたけど私もそう思う。


「よ、3人とも何してんだ?」

「おー、噂をすればなんとやらじゃない?ノエル」

「ぶん殴りますわよリーザ」

「こ、こんにちは…」


パフォーマンスは終わったのか、輪の中から抜け出してきたシリウス始め悪戯仕掛け人が私達の前に集まった。赤と緑、対立してるはずの寮生が仲良くしてる姿を不思議に思った生徒達がチラチラ見てくるが気にしない気にしない。ジェームズも笑顔を浮かべながら私達に「やっほー!試験お疲れ様!」と話しかけてくる。ジェームズ、シリウスとノエル、リーマス、ピーターとケイトがそれぞれ試験について話し始めた。正史を知っている私から見れば異常な光景だ。未だこいつらがスリザリンイジメを行っているのを見た事がない。私がスリザリンだからか?なんて考えた事もあったけどまさかそんな、映画のヒロインじゃあるまいし、私自身に他人を変えられるほど魅力があるとは思えない。『身内』だから優しくしてもらっているだけで、シリウスもジェームズもスリザリン嫌悪は変わらないはずだ。まあ皆にはマグル大好き同盟を作るって言ってあるし、同室の2人が仲間だとも言ってあるから2人には手を出さないのかもしれない。だからといってノエルとケイト以外…というかセブルスが標的になってもおかしくないんだけど。もちろんイジメ、ダメ。絶対!だし人として間違ってる行為だし、もし遭遇したらぶん殴ってもやめさせるけど、全く見た事が無いのだ。一年間、一度も。

一体、これはどういう事だろうか。


(私の介入によって正史とのズレが起き始めている…?)


イジメが無いのは良い事だ。このまま真っ直ぐ純粋にすくすくと育って欲しいが、それだとジェリリフラグが、セブルス闇堕ちフラグが、ハリーがヴォルデモートを倒す未来が、変わってしまうのではないか?正史だとセブルスが一番可哀想だけど、とても重要な役割を担っているのだ。なるべく正史通りに進んで貰わないと困ると思う私は酷い奴だろう。でも、私という異分子のせいでもしもハリーが負けてしまったら?そしたら、魔法界の未来は。次の世代は…


「そんな泣きそうな顔するなよ。大丈夫だって」


頭にポンと手を置かれ顔を上げると、シリウスが私の頭に手を乗せて笑っていた。どうやら自分の事について悩んでると勘違いしたらしい。何この子可愛い。確かにシリウスについても考えていたし、ブラック家問題も何とかしなくちゃいけないけれど。
ギュッと抱きしめられ、「大丈夫大丈夫」といつも私がシリウスにするように頭を撫でられる。やばい、実家のような安心感。頭の中のモヤモヤがパッと消え、ぐううとお腹が鳴った。どうやらシリウスは私の精神安定剤らしい。安心したらお腹空いちゃった。


「シリウス」

「んー?」

「もしもシリウスが家に居づらかったらうちに泊まって良いからね」

「おう、そうさせてもらうぜ。あんな陰気臭い所真っ平御免だ」

「そしたら毎日パーティーしよう。楽しみ〜!」


わーい!と両手を上げて喜び、またシリウスに抱きつく。嫌な考えはポイとゴミ箱に捨て、目の前の事にだけ集中しよう。難しい事を考えるのはもっと先でも良いだろう。逃げだと言われるかもしれないけど知るもんか。だってまだ12歳だもの!

2人で抱き合いキャッキャと笑いながらぐるぐる回っていると、ジェームズやノエルから「まーたやってるよ」「お熱いですわね」と冷たい視線を向けられた。ガラスのハートがちょこっとだけ傷ついたけど気にしない気にしない。
私は弟の姉らしく、シリウスを守るんだ。
へへっと笑うと、シリウスも同じように笑顔を返してくれた。
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