06.課題の山を越えろ
知識があれば誰でも車を運転できるように、魔法の知識があれば、魔力が暴走しやすい幼少期でも対応できるという考えが魔法界の上位層で広まっているらしい。
「だからってこの量は無理があるでしょ!」
グレンフェル家も例外では無く、私は山積みになった呪文書に頭を抱えていた。まったく、私の家庭教師は鬼である。
高さ1m程の山を明日までに崩さないといけないそうだ。まだ11だぞ私。つい1ヶ月前になったばかりだぞコラ。然るべき機関に訴えてやる、と心の中で家庭教師を呪いながら、頂上の冊子を手に取った。
*
チラ、と時計を見ると午後1時を過ぎていた。ああ、今日は私がブラック家に行く日だったな、と思い出す。
課題の山はまだまだ終わりそうに無い。
…これはブラック家でも課題だな。
手際よくバッグに課題を半分詰めて家を出る。マグルの家を飛ばしたお隣さんがブラック家だ。
ピンポーンとチャイムを鳴らす。10秒も経たないうちに扉が静かに開いた。そこには、少し皺が目立つ初老の屋敷しもべ妖精のクリーチャーがいた。
「いらっしゃいませ、リーザお嬢様。シリウス坊っちゃまとレギュラス坊っちゃまはいつもの部屋でお待ちでございます」
「こんにちは、クリーチャー!今日もお出迎えありがとう」
「リーザお嬢様がクリーチャーめにお礼を…!」と感動で震えるクリーチャーを通り過ぎ、奥へと進む。そのまま階段を登り、シリウスの部屋をノックもせずに開けた。
「Hi!シリウス、元気?」
そこにはベッドに寝っ転がったシリウスがいた。レギュラスは一緒じゃ無いのか。
「おいリーザ!扉を開ける時にはノックしろよな!」
「いいじゃん、減るもんじゃ無いし」
「俺のメンタルが減るんだよ!」
シリウスの慌てる姿を見るのが面白くてついやっちゃうんだよねぇ、という言葉は心の中に留めておこう。ブーブーとブーイングを飛ばすシリウスを押しのけ、私もベッドの上に座る。
「お前っここで課題やるのか!?」
驚いた顔でシリウスが私が取り出した課題の山を見る。しまった、お坊っちゃんはきちんと机の上で課題をやるんだった。
「まっさか〜!シリウス、テーブル出して」
「ったく、仕方がねえ」
手のかかる姉ちゃんだ、とブツブツ呟きながらも折りたたみ式のテーブルを出してくれるシリウス。心がほっこりして口元が緩む。
「そういえばレギュラスはいないの?クリーチャーはいるって言ってたんだけど」
「ああ、リーザと入れ違いでババアに連れられて出て行った。どうせまた純血主義の根暗共とお茶会だよお茶会」
何処か遠くを見ながら、「俺は純血主義が嫌いだ。だから行かなかった」と吐き捨てるように言った。
…表向き純血主義を掲げているうちの家もそのお茶会のメンバーです、とは言えない。
「グレンフェル家も純血主義なんだけど、私の事どう思ってるの?」と聞いて、もしも「嫌いだ」と言われてしまったら?
純粋な子供のように真っ直ぐにぶつかる事が出来ない私は、「そうなんだ」と当たり障りのない返事をするので精一杯だった。
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