あー、足めっちゃスースーする。足めっちゃスースーするよスカート。生まれてこの方スカートを履いた事が無かった俺は、短パンとはまた違う感覚に戸惑いながらホグワーツ城へと歩いていた。


「足めっちゃスースーする」

「スカートだもの。当たり前じゃない」


変なの、とくすくす笑うリリーの姿に体温が上昇するような感覚を抱いたが、こちらを睨みつけるセブルスのせいで上昇した体温がスッと下がってしまう。やっぱり女子に向ける視線じゃねえ。


「イッチ年生はこっちだ!」

「行きましょうセブ、マリア!」


リリーに手を引かれて大男の立っている湖の畔の舟に乗り込む。あ、生ハグリッドだ、と手を振ったら振り返してくれた。ちょっと嬉しかった。

淡い光が浮かぶ湖と闇に溶け込むように佇む古城という幻想的な光景に感動して、声を出す事を忘れている間に舟は着き、これから起こる出来事に期待と不安を抱きそわそわする新入生達と共にホグワーツ城の中へと案内された。俺達を先導するのは映画で見た姿よりほんのちょっとだけ若いマクゴナガル先生。絵の中の住民がまるで生きてるように振る舞う絵画や縦横無尽に動き回る階段を半口開けてぽけーっと見ながら大広間への道を進む。セブルスに「そのだらしない顔を今すぐやめろ」と注意されるまで、俺は口を開いたままキョロキョロと忙しなく視線を動かしたのだった。





美しい星空が広がる大広間の中で、上級生達に見守られながら俺達の組み分けは始まった。特級内で会った生意気な少年の眼鏡じゃない、悔しいが俺も認めざるを得ないイケメンな方、シリウス・ブラックがグリフィンドールに選ばれた時どの寮からもざわめく声が聞こえたくらいで、組み分けは概ね順調に進んでいた。


「ハーレイ・マリア!」


マクゴナガル先生に名前を呼ばれ、俺はカチコチに緊張しながら前へ進んだ。やばい、緊張し過ぎてさっき食べた蛙チョコレート吐きそう。椅子に座った後、慌てて手のひらに「人 人 人」と書いて飲み込む真似をした。

頭にゆっくりと帽子を被せられる。組み分け帽子は「うーん」と唸りながら小声でブツブツ何かを呟いた後に「グリフィンドール!」と高らかに叫んだ。
わぁぁ!とグリフィンドール寮の方から歓声が聞こえ、俺は急いでグリフィンドール寮へと向かった。真っ先にリリーの傍へ向かう。


「良かった!マリアと同じ寮になれて嬉しいわ!」

「お、俺、本当にグリフィンドールに選ばれたのか?」

「当たり前じゃない!」


リリーに抱きつかれてやっと、ああ、ハリーと同じグリフィンドールに入れたんだと認識できた。感動して目が潤んだが、ここで泣いたら変な奴だと頑張って涙を引っ込めた。リリーの隣に座り、まだ終わっていない新入生達の組み分けを見守る。セブルスはスリザリンだった。予想通りだったが一応リリーに「残念だったな、寮が離れて」と声をかけた。あの眼鏡はジェームズ・ポッターといい、生意気な事にグリフィンドールに入りやがった。ポッターってハリーと同じ名字じゃないか。あんな非常識な奴がハリーのお父さんなはずが無い。親戚か何かだろう。
ブラックと肩を抱き合って喜ぶポッターをわざと視界に入れないようにするリリーに気づかないフリをしながら、これから俺達に待ち受けているであろう素晴らしい魔法の世界について語り合った。出された料理はどれも美味しかった。





監督生に案内されてたどり着いた我がグリフィンドール寮は、赤と金で彩られた非常に明るい雰囲気で俺達を迎えてくれた。そのまま男子寮に向かおうとしてリリーに引き止められる。


「そっちは男子寮よ!?」

「ごめんごめん、間違えた」


女子寮に入り、宛てがわれた部屋のネームプレートを確認すると、リリーと同じ部屋だった。


「マリアと同じ部屋だったわ!これは運命よ!」

「俺もリリーと同じ部屋になれて嬉しいぜ!」


キャッキャッとはしゃいだのは最初だけで、段々眠くなってきた俺達は早めに寝る事にした。シャワー室でシャワーを浴び、髪をリリーの魔法で乾かしてもらう。おひさまの匂いがするフカフカのシーツに包まれながら、俺はゆっくりと眠りについた。ポッターとリリーが結婚し、何故かウエディングドレスを身に纏ったセブルスが乱入して花嫁を攫うという悪夢を見た。ホグワーツ入学初日に見る内容じゃねえ。
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