あの子

いつき先生いもうとの子▽
いつき先生さなえの間に生まれた子。
兄と妹、密かな愛の成した命はあまりに未熟であわれな姿で産まれてきた。
けれどふたりにとっては愛おしい宝だった。
数年の間、さんにんはひっそりと「家族」の時間を過ごす。
しかし、両親にふたりの関係が知られてしまい、さなえは別の男性と結婚させられ、あの子はいつき先生が育てることとなった。

あの子は心優しく好奇心旺盛。
体が弱く歩くこと喋ることもままならない、いつき先生がいなければできないことの方が多かったが、何にでも興味を示し、みんなを大好きになろうとした。
当時、いつき先生の飼っていた犬やさなえから貰ったおもちゃたちは特別の「大好き」で、あの子のお友達。
いつき先生のことは「とっと」と呼んでいた。
彼がいる時は甘えん坊をめいいっぱいに発揮して、全部が自分に向けられていないとぷりぷり拗ねた。
特別の中の特別の「大好き」ゆえに、彼の中でもそうあることを望んでいたようだ。
日よけと容姿を隠すためにいつも帽子をかぶっており、その帽子は数種類あったが、あの子にとってはそれも毎日のお楽しみだった。
母親であるさなえとは別れてからたった一度だけ会ったことがある。
束の間の幸せ、そして「またいつか」を約束するも、あの子はそれら全てを胸に抱き、小さな生涯を閉じた。
しかしその命は、いつき先生の手によって再び芽吹くこととなる。
あの子の名は、「はなちゃん」()


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