岸辺露伴と新しい発見 その1


※露伴の生活がワンランク上であり、庶民に当たり前のことを知らない設定です。あまり深く考えずにお読みください。


 ある日、杜王町の某スーパーにて。

「あれ?露伴先生じゃないですか」

 そう声をかけられた露伴はすぐに自分の背後を振り返る。そこにはラフな私服姿で買い物かごを持つ百々子がいた。「なんだ、百々子くんか」と言う露伴は自分よりも身長の低い彼女を見るため必然的に視線が下に降りる。そしてそのかごの中にある大量のあるものに目を奪われるも、百々子の方から話しかけられそのことには触れられないでいた。

「わあ、露伴先生、良いお肉買ってますねぇ」
「良いものを食べないと、良いアイディアも出てこないからな」
「でもそれができる財力が羨ましいです。うちは億兄がとにかく食べ盛りだから、質より量って感じで…」
「まあ高校生男児なんてそんなものだろう」
「露伴先生もそうでした?」
「僕は過度に食べ過ぎるようなことはしなかったね。当時から漫画を描いていたから、体調管理も兼ねていたし」
「すごいですね。億兄にも見習ってほしいなぁ」

 なんとも薄っぺらいと言ったら失礼だが、内容のない会話が一区切りつくと、露伴はずっと気になっていた例の件を尋ねる。

「君のそのかごの中に大量にある、それはなんだ?」
「え?これ…ですか?」
「ああ」

 百々子は思わず自分のかごの中を埋め尽くす大量にあるそれを見つめると、また露伴に視線を戻す。

「食べたことないんですか?」
「だから聞いているんだ」
「えー!露伴先生、カップ麺食べたことないんですか?」

 心の底から驚いたというのは彼女の表情で分かる。露伴は少し周囲からの視線を浴びていることに気づき、声を小さくした。

「まあ、そうだが」
「なんでですか?」
「何故って…食べる機会が無かったというか、うーん食べたいと思わないというか…」

 露伴自身も何故食べたことがないのか、と言われると自分でも分からない。生きてきてこれまで意識したことがなかったのだ。

「分かりました!じゃあこれから露伴先生のカップ麺を食べようの会を開催しようと思います」
「は?カップ麺…なんだって?」
「今日これから仗助くんがうちに来る予定なんです。ので、一緒にお昼にカップ麺食べましょう」
「ハア?何故そうなる。まず意図が分からない。しかもあのクソッタレ仗助がいるんじゃあ、僕としてはより参加したいとは思えないんだが」
「だってカップ麺食べたことないんですよね?」
「そうだが?」
「じゃあ食べましょうよ」
「いやだから…」
「確かに既に成功している露伴先生にとってはカップ麺なんていう即席麺は生活の上で必要ないかもしれません」
「正しくその通りだ」
「しかーし!これはある意味チャンスですよ」
「勿体ぶられるのが一番嫌いなんだが」
「つまりですね、カップ麺を食べるということはより庶民の感覚を味わえるということです」

 自信満々にそう語る百々子に露伴はほんの少し「ほう」と納得しかかっていることに気付いた。

「漫画のちょっとしたワンシーンに庶民らしさがあるだけで、漫画の世界観によりのめり込めると思うんです」
「ほう…なるほどな。それは僕の価値観からは出てこなかった考え方だ」
「というわけで、善は急げ!早速露伴先生の好きそうなカップ麺を選んでみましょう!」

 まんまと百々子の口車に乗せられていると気付いた露伴だったが、何故か自分よりも楽しそうに先導する百々子を見ると、たまにはこういうことも悪くない、と口元を緩ませる露伴だった。

 To be continued ...

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