ハッピーエンドに花束を #23 after
「……ははぁ。なるほど。一回飛び起きたけど捕まえられて、二度寝して、そのまま朔間さんに起こされるまで爆睡してたんだ?」
「………………そう」
「あはは。朝の弱い朔間さんに起こされるとか、めちゃくちゃレアじゃない?まぁそのおかげで誰にも見つからずに部屋に戻れたんだろうけど」
「……脳内瀬名がでかいため息ついてた」
「鹿矢ちゃん、脳内にまで瀬名くん飼ってるの?考えただけでストレスフルになりそう」
「すごいことに、脳が弛んでる時に此処ぞとばかりに出てきてくれる」
「うわぁ。愛のなせる業だね。……で、結局?朔間さんとの進展はあった?」
「進展も何も……。友達で同級生なので。起こされたけどすぐ寝ちゃったし……紅茶を一杯飲んで、朔間さんの二度寝をちょっと眺めて、廊下が静まった頃に戻りました」
「思いの外まったりしてる……。鹿矢ちゃんって変に肝が据わってるっていうか。朔間さんとはいえ男の部屋だよ?少しは警戒したほうがいいと思うよ」
「私を朔間さんに売り渡した羽風には言われたくない」
「売り渡してなんかないよ!?本当にっ!」
「本当かな……。でも、考えてみれば【サマーライブ】じゃ部屋に呼び出されることもあったから、そこまで抵抗も警戒心もなかったのかも」
「ふーん……そうなんだ?」
「うん。あの時も、先方に合わせてホテル泊で……念のためにルームキーも渡してたし私の部屋に遊びにも来てたの。こういうのって業界的には良くないんだろうけどね」
「……うんうん?」
「あー……えっと。そうそう、ルームサービスなんかもしてね。経費で落ちるからって豪勢に……色々頼んで散財して、アフタヌーンティーなんかも、」
「……鹿矢ちゃん」
「……なに」
「話、逸らそうとしてるよね」
「…………」
「やっぱり。平気なフリしてしっかり動揺してるんだ?鹿矢ちゃんかわいい〜♪」
「かわいくない。つつかないで〜………」
「これ。薫くん、あまり鹿矢をいじめてやるでないぞ」
「え〜?いじめたのは朔間さんでしょ。送り届けるとか言って鹿矢ちゃんのこと拉致った張本人じゃん」
「はて、何のことやら……と惚けたいところじゃが。薫くんも薫くんで止めんかったじゃろ。つまり我輩の味方♪」
「羽風……」
「待って鹿矢ちゃん!ほ、ほら、俺も場酔いしちゃってたから!ちょっと面白そうだなとか魔が差したわけじゃないからね!?」
「羽風………………」
「くくく。まぁ薫くんの名誉のために弁明すると。部屋に送り届けるよう進言してくれたところを、我輩の一存でお持ち帰りしたんじゃよ」
「(……『お持ち帰り』)」
「(羽風)」
「(ご、ごめんって)」
「ともあれ。一度は愛しの友人と『お泊まり会』をしてみたくて、つい気持ちが先走ってしまってのう。……先日の『Ra*bits』との合宿は都合が合わんかったじゃろ?その代打のようなものじゃ」
「(……さっきの言葉のチョイスは保留にするとして。フォローを入れてくれたのはありがたいけど、さすがにその言い訳は苦しくない?……素直に他校の子に鹿矢ちゃんを一週間も独占されて悔しかったです、とは言えないんだろうけどさ〜?)」
「…………」
「…………」
「……『お泊まり会』なら、せめて起こしてくれたらよかったのに」
「すまんすまん。気持ちよさそうに寝こけておったから、起こすのも憚られて……我輩も寝落ちてしまったんじゃ。次回は映画でも見ながら夜更かしでもしようぞ」
「(って、信じてる。朔間さんも朔間さんでちゃっかり次回の約束もしてるし。……聡いんだか鈍いんだか)」
「羽風もくる?」
「あはは、遠慮しておこうかな……」